続いて、PCの総合的な性能を計測するベンチマーク「PCMark 10」の結果を見てみよう。
総合スコアは、順当にRyzen 7 PRO 4750G、Ryzen PRO 5 4650G、Ryzen PRO 3 4350Gという順位となった。
テスト別のスコアをよく見てみると、アプリ起動やWebブラウジングの性能を測る「Essentials」テストや、オフィススイートなどの作業性能を測る「Productivity」テストにおいて、Ryzen PRO 5 4650Gの健闘が目を引く。
一方で、画像や動画の製作などクリエイティブ用途の性能を見る「Digital Content Creation」テストでは、Ryzen 7 PRO 4750Gの成績が圧倒的だ。ここは、ひとえにGPU性能の差だろう。
続いて、3Dグラフィックスの描画性能を計測する「3DMark」を実行した。今回はDirectX 12を用いる「Time Spy」テストと、DirectX 11を用いる「Fire Strike」テストの2つのみを実施している。
こういったゲーム系のテストでは、GPU性能の違いが顕著に現れやすい。とはいえ、いずれも独立した高性能GPUを想定したテストであるため、いうまでもなく結果自体は控えめで、高負荷なゲームプレイには厳しい。
ただし、Ryzen 7 PRO 4750Gでは、Fire Strikeの「Graphics Test 1」において20fps前後のフレームレートが出せている。これなら、負荷の軽いFPSタイトルや、MOBAタイトルであれば、それなりにプレイできそうな感じだ。
次に、画像編集や動画編集向けのクリエイティブアプリにおけるパフォーマンスをチェックしよう。今回は、写真編集アプリ「Lightroom Classic CC」と、オープンソースの動画エンコーダー「Handbrake」を使って実際に作業をした際に掛かった時間を計測する。
Lightroom Classic CCでは、299枚のNEFファイル(7360×4912ピクセル、容量12.5GB)を最高画質のJPEG画像に書き出すまでの時間を計測した。
やや負荷が高めの作業だったが、Ryzen 7 PRO 4750Gは7分4秒、Ryzen PRO 5 4650Gは8分7秒、Ryzen PRO 3 4350Gは9分50秒と、いずれも10分以内に処理が完了した。
この手のクリエイティブな作業をたしなむのであれば、従来のAPUよりもコア構成にアドバンテージがあるRyzen 7 PRO 4750G、もしくはRyzen PRO 5 4650Gをお勧めする。
Handbrakeでは、再生時間7分41秒の4K(3840×2160ピクセル)動画を、「Fast 1080p30」設定で、フルHD(1920×1080ピクセル)のMP4ファイルにエンコードするまでの時間を計測した。
こちらはRyzen 7 PRO 4750Gが7分52秒、Ryzen PRO 5 4650Gが9分36秒、Ryzen PRO 3 4350Gが13分50秒と、Lightroomによるデジタル現像よりも大きな時間差が生じた。
やはり8コア16スレッドのRyzen 7 PRO 4750Gは、APUとして一段高い性能を備えており、刺さる人には強く刺さる製品となりそうだ。
最後に、システム全体の消費電力をチェックする。起動後10分間何もせずに安定させた場合の値を「アイドル時」、CINEBENCH R20を動作させた際の最高値を「高負荷時」としてワットチェッカーで計測した。
アイドル時の消費電力はいずれも25W前後と、まずまず省電力だ。高負荷時については、Ryzen 7 PRO 4750Gのみ実測125Wと100Wを超えた。Ryzen PRO 5 4650Gは99W、Ryzen PRO 3 4350Gは、CPU使用率を高めても65W前後までしか上がらない。
デスクトップ向けRyzen PRO 4000シリーズは、アーキテクチャを刷新することで高いCPUパフォーマンスを獲得し、それに内蔵GPUも付いてくるという“順当進化”といえる魅力的なAPUだ。
単純に外部GPUを積まないローコストPCを組むのにも良いし、内部スペースが限られた小型マシンで高いパフォーマンスを確保するために使用するのも大いに有効だろう。仮定の話だが、Mini-STXフォームファクターの小型PCで対応製品が出れば、グッと人気が高まりそうだ。
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