従来、カフェやコワーキングスペースなどでさっと取り出して使っていたこの環境を、自宅に応用するとどのようなことが起きるのだろうか。
思いつくままにメリットを挙げてみよう。
日本の都市部の住宅事情では、ほとんどの家庭で自由に使えるスペースというのは限られてしまう。そのため、家族全員がずっと家にいれば、作業用スペースも必然的に奪い合いになる。固定の作業場を作ろうものなら、家族から非難を浴びてしまうかもしれない。一人暮らしの場合なら、そもそも使える場所が限られてしまう。
しかし、モバイルディスプレイであれば、持ち運びが容易なので、あちらこちらと自由に移動させられる。23型や27型のような大型の液晶ディスプレイとは異なり、設置場所にしばられることもない。「あなたはそこでどうぞ。身軽な私は好きな場所で仕事します」と相手に譲ることができ、場所を取り合う必要がなくなるのだ。
前述の理由と重複するが、モバイルディスプレイは持ち出して使うことを前提に作られているため、AC電源を必要としない。多くはノートPCから供給される電力だけで表示できるようになっている。
また、最近のノートPCもACではなく、USB Power Delivey対応のUSB Type-Cを使ったモバイルバッテリーを電源として使えるものが増えている。
つまり、空いている壁のコンセントを探さずに済むし、コンセントの近くで作業する必要もなくなる。ベランダがあれば、アウトドア用のテーブルとチェアを置いてそこで作業することさえできるのだ。
据え置き型のディスプレイは21型や23型、または27型など大きいこともあり、何かと重たい。それを支えるスタンドもがっしりとしており、広めの設置スペースが必要になる。そもそも、利用のたびに持ち運ぶ前提ではないからだ。
それに比べ、売れ筋のモバイルディスプレイの大きさは15.6型で、付属のカバーを使って日本マイクロソフトの2in1 PC「Surface」シリーズと同じようなキックスタンド型で設置できるためコンパクトで済む。ほぼ1人分の食事スペースがあれば、そこを仕事場に変えることができるのだ。
最近のモバイルディスプレイは、USB Type-C端子を備えており、USB Type-C to USB Type-Cケーブル(ただし、映像データをやり取りできるDisplayPort Alternate Modeに対応したものに限る)1本で、ノートPCのディスプレイを拡張可能だ。
一般的な液晶ディスプレイだと、PCに接続する際はHDMIなどの映像出力用ケーブルと電源ケーブル、さらには音声出力用のケーブルを接続したり、これらのケーブルがゴチャゴチャしたりと何かと手間だったが、モバイルディスプレイの場合はケーブル1本でOKだ。
ノートPCを開いてをUSB Type-Cケーブルに接続するだけで仕事の準備は完了するし、仕事を終えるときもノートPCを閉じてケーブルを抜くだけでいい。
例えダイニングテーブルで仕事をしていたとしても、片付けが1分もかからない。テイクアウトの弁当でも、デリバリーのピザでも、出前のソバでも、食事の用意ができたらすぐにしまえるのだ。逆に、時間ギリギリまで仕事ができるというのは考えものではあるのだが……。
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