Uプロセッサの比較では、HPの2in1ノートPC「Envy x360 15t」のCore i7-1065G7(1.3G〜3.9GHz、4コア8スレッド)モデル、Core i5-1035G1(1G〜3.6GHz、4コア8スレッド)モデルと、「Envy x360 15z」のRyzen 7 4700U(2G〜4.1GHz)モデルの計3台を用意して比較が行われた。
Hプロセッサのベンチマークと同様に、CPU以外の構成は極力そろえられている。
最初にジワラ氏が示したのは、AC(外部電源)駆動時とバッテリー駆動時のベンチマークスコアの差分だった。
その“あんばい”はメーカーによってさまざまだが、バッテリー駆動時にはCPUのパフォーマンスが制限されることが多い。バッテリー持ちをよくするためだ。いわゆる「ハイパフォーマンス」にしても、AC駆動時よりも最大クロックは抑制される傾向にある。
今回のテスト環境でベンチマークテストを実行した場合、バッテリー駆動に切り替えるとCoreプロセッサはスコアがおおむね10〜20%落ち込んだのに対し、Ryzen 7 4700Uはおおむね30〜50%と大きな落ち込みとなったという。Ryzen 7 4700Uのスコアを「1(標準)」として比較すると、AC駆動時はCore i7-1065G7とほぼ同等かほんのわずかに劣る程度だったのに対し、バッテリー駆動時はCore i5-1035G1にも引き離される状況だったと主張する。
ただ、あくまでベンチマークの結果であって、Intelが主張する「実使用環境」に視点を移すとどうなるか。同社が実施したテスト結果を見る限りは、ベンチマークテストと同様にRyzen 7 4700Uはバッテリー駆動になるとパフォーマンスが大きく落ち込んだという。
Ryzen 7 4700Uは、バッテリー持ちを良くするためにパフォーマンスを犠牲にしているようだ、とジワラ氏は説明する。
バッテリー持ちをよくするためにパフォーマンスを犠牲にする――そうなると、実際のバッテリー駆動時間が気になる所だろう。IntelがMobileMark 2018で計測した結果を見ると、確かにRyzen 7 4700Uが一番“長持ち”となった。しかし、パフォーマンスチェックでは最下位にとどまっている。
他のベンチマークアプリを使ってテスト中のコアのクロックを見てみると、バッテリー駆動時のクロックを抑制している傾向が顕著だったようだ。
これらの傾向はHプロセッサでも同様で、Ryzen 7 4800Hはバッテリー駆動時間こそ一番長いが、Coreプロセッサと比べるとAC駆動時とのパフォーマンス差が大きかったという。
ただ、「AC駆動時のRyzenプロセッサのパフォーマンスは良好」ということは、客観的に見ても事実ではある。そこでジワラ氏が言及したのが「エコシステム」だ。
最新の第10世代Coreプロセッサのうち、「Ice Lake」という開発コード名を持つものは、機械学習に最適化された命令セットに対応している。これを機械学習ベースのAI(人工知能)を活用できるアプリで用いれば、より高いパフォーマンスを発揮できるという。
ただ、8月時点で市場に出回っている第10世代Coreプロセッサの多くは、機械学習向け命令セットを備えない「Comet Lake」という開発コード名を持つものだ。
Ice Lakeプロセッサにゲーミング向け製品がないという事情はあるにせよ、Uプロセッサの比較とHプロセッサの比較で異なるアーキテクチャの製品を“ぶつける”ことには若干の違和感を覚えた。
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