では、FZ-A3Aの水滴誤動作防止機能にはどれほどの効果があるのだろうか。いつもの「海で使うIT」と同様に洋上で検証……と行きたかったのだが、自然現象の常として「期待した強さの雨」が一定時間降り続けるということはめったにあることではない。
そこで今回は、屋内で模擬的に強度を変えた水滴を付着、あるいは降雨を模した水流を浴びせた後、タップした場所やフリックした軌跡を正常に検知できるかを検証してみよう。
シチュエーションは、以下の3つを想定した。
それぞれの想定に合わせて、以下の方法で人工的に実環境を再現した。
これらは、防水や防塵(じん)の基準となる「IP等級」に定められたような厳密な試験方法ではない。しかし、実際のフィールドワークにおける降水や濃霧、しけた海を航海する際に受ける波のしぶきや波の打ち込みの影響については、実情にほぼ近い状況を再現できる。
タップやフリック操作の精度を客観的に測定する方法としては、ジグソーパズルを作るアプリを用いることにした。何もしない状態で32ピースのジグソーパズルをバッチリと完成できるまで習熟した後に、それぞれのシチュエーションにおいて完成するまでの時間を比べれば、タッチ精度の差を比べられるという算段だ。精度が高ければ、水滴誤動作防止モードでも素の状態に近い時間で完成させられるはずである。
テストは、想定ごとに設定における水滴量を「多」「少」のそれぞれで実施した上で、比較用にNormal modeでも行った。
基準となる「ディスプレイも操作する指も乾いた状態」で、パズルが完成するまでにかかった時間は46秒だった。これを頭に置いた上で、それぞれのモードにおける結果を見ていこう。
検証結果からも分かることだが、水滴誤動作防止機能について注意しておきたいのが、想定2のようなディスプレイに対して常に水が降り注ぐような状況では、水滴誤動作防止モードにしてもタッチ操作はほぼ不可能ということだ。機能表記に「水滴」とあるように、想定しているのは「ディスプレイに水滴が付いた状態」であって、「ディスプレイ全体に常時水滴が付着している状態」ではない。
ディスプレイ全体に水がしたたる状況は、決して特別ではない。降雨中の屋外で使用するなら十分にあり得るシチュエーションだ。FZ-A3Aに「全天候型タブレット」としての役割を期待している人は、この点に十分留意する必要がある。
一方、想定1と想定3では水滴誤動作防止機能がしっかりと機能した。Normal modeでは、手が濡れただけで46秒から1分40秒となり、操作性の著しい低下が明らかだったのに対し、水滴誤動作防止モードを有効にすると、水滴少設定で59秒、水滴多設定で57秒と大幅に改善している。
想定3のテストでは、水滴少設定で1分53秒と操作性は低かったが、水滴多設定にすれば57秒と操作性が大幅に改善した。Normal modeでは全く操作できなかったことを考えると「効果てきめん」といえるだろう。
なお、手桶から一気に水をかけた直後は、ディスプレイ全面が水没する。この状況では想定2と同様に操作は全くできない。しかし、数秒待つと水が流れ出し、ディスプレイに大きな水滴(というより水玉)が数滴残った状態になる。こうなれば、水滴誤動作防止モードが有効に動作する。
しけた洋上で波しぶきがかかったり波が直接打ち込んだりすると、ぬれたディスプレイが乾くと塩の結晶がディスプレイに残ることも少なくない。その塩の結晶に水滴が保持されて、海水が粘度の高い状態で長時間残ることもある。
こうした状態は、ディスプレイに水滴が付着している状態とほぼ同じなので、水滴誤動作防止モードは有効に機能するだろう。
以前掲載したタフネススマホ「Unihertz Titan」のレビューで、私は次のように述べた。
しかし、問題がなかったわけではない。アウトドア志向のスマートフォンはTitan以外にも数多くあるが、その多くはタッチ操作オンリーなのにディスプレイがずぶぬれになると、指のタップやスライドの動きを正確に把握できなくなる。Titanもその例にもれず、ディスプレイの全面が海水の水滴で覆われた状態では、ピンチ、タップなどなど、タッチ操作を正確に認識しなくなってしまった。カーソルキーだけでもハードウェアで用意してあれば、操作上の問題はかなり改善できるので、アウトドア志向を訴求するスマートフォンはぜひ検討していただきたい。
このことは、タフネスタブレットであるFZ-A3Aにも当てはまる。今回の検証を通して、水滴誤動作防止モードはディスプレイに水滴が付着する状況では有効なことが実証できた。しかし、豪雨など常に水流が注ぎ続けるような状況になると依然としてタッチ操作が困難である。
幸いにして、FZ-A3Aにはプログラマブルな機能ボタンが7個ある。それぞれに「短押し」「長押し「「2つのキーの組み合わせ」で操作を割り当てることができる。ここでよく使う「タップ」「フリック」「ピンチ」といった機能を割り当てておけば、水滴誤動作防止モードが役に立たない豪雨の時でも使い続けられる。
このような「どんなときでも何とかできる」機能を用意しているあたりがTOUGHBOOKの強みといえるだろう。
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