iPhone 12シリーズが発表された際、昨年は「iPhone 11 Pro Max」を選んだ筆者も今度は「iPhone 12 Pro」にしようか、などと考えた。「iPhone 11 Pro」は画面サイズが5.8型で「iPhone 11」の6.1型より小さかったが、iPhone 12 Proは「iPhone 12」と同じ6.1型に拡大されたことで、画面サイズと性能、機能のバランスがよくなったからだ。
また、ボディーサイズの大きさから片手でのハンドリングが難しいと感じていた6.5型のiPhone 11 Pro Maxよりも大画面になった6.7型のiPhone 12 Pro Maxには興味をひかれなかったこともある。
ところが、今年はiPhone 12 Pro Maxの内蔵カメラだけ、他のiPhone 12シリーズと異なるという。iPhone 11 Proと11 Pro Maxの内蔵カメラには違いがなかったので、この変更は見逃せない。Appleにしてみれば、モデル間の商品力にバランスを取ったということなのだろうが、その違いについて考証すると、確かにiPhone 12 Pro Maxをあえて選ぶ理由もありそうに感じる。
スマートフォンを単純な情報ツールとして捉えるなら、「iPhone 12 mini」がiPhone 12シリーズの中ではベストバランスと感じている筆者だが、では違うとされる12 Pro Maxが持つカメラの実力とはどんなものなのか。
既にiPhone 11世代とiPhone 12世代の違いについてはレポートしているため、最大画面サイズとなるiPhone 12 Pro Maxを選ぶだけの魅力が、その内蔵カメラにあるかどうかという視点で記事を進めたい。
iPhone 12 Proと12 Pro Maxでは、広角カメラと望遠カメラが異なっている。言い換えれば超広角カメラは全く同じもので、撮り比べても違いが出ることはない。
両者の違いの中で最も大きく、また読者が気にするだろう点はiPhone 12 Pro Maxの広角カメラが採用するイメージセンサーが大きくなっていることだろう。画素あたりの受光部は47%拡大した。1.7μmという画素面積で表示するところがAppleらしいが、実際に画素センサーが受けるフォトン(光子)の量は47%増えることになる。
センサーサイズという観点で見ると、おおよそ20%の拡大だ。撮影された写真のExif情報を見ると、iPhone 12 Pro Maxの実焦点距離は5.1mmとなっている。それ以外のモデルでは4.2mmだが画角は同じだ。つまり、この焦点距離の差がセンサーの対角サイズの比率ということになる。
デジタル方式のカメラにおいて、センサーサイズの違いは大きいが、さらにiPhone 12 Pro Maxは手ブレ補正の方式も変えている。光軸補正のレンズを動かすレンズシフト式から、センサーを動かすセンサーシフト式へと変えられたのだ。
なお、レンズシフトとセンサーシフトには、それぞれ異なる特徴があり、必ずしもセンサーシフト式が優位というわけではない点は最初に言及しておきたい。
一般的にセンサーシフト式は広角領域では効果的で、手ブレ補正の軸も多く取ることができる(ただしiPhoneのセンサー式手ブレ補正が効く軸数は不明)。望遠領域ではレンズシフト式が優位であるため、両方を併用する一眼カメラなどもあるが、広角カメラへの採用なのでレンズシフト式だけでも十分だろう。
望遠カメラの違いは、iPhone 12 Proでは52mm相当(35mmフィルム換算、以下同)だった焦点距離が12 Pro Maxでは65mm相当(広角カメラの2.5倍)に伸びたことだ。この変更に伴い、明るさ(F値)はF2.0からF2.2へと少しだけ暗くなっているが、単純に暗くなったというわけではない。
F値は焦点距離を有効口径で割った数値であるため、同じレンズ口径ならiPhone 12 Pro Maxの望遠カメラはF2.5になるはずだが、より明るいF2.2というスペックになっている。これはiPhone 12 Pro Maxの望遠カメラを設計するにあたり、より大きな口径のレンズを採用しているということだ。
本体サイズが大きくなっていることで、広角カメラのセンサーサイズや手ブレ補正方式、そして望遠カメラの焦点距離など、さまざまな部分で違いを出そうとしていることが分かる。
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