M1搭載MacBook Airは、最低スペックでもIntel版MacBook Proを寄せ付けない性能だった(2/4 ページ)

» 2020年11月17日 23時00分 公開
[林信行ITmedia]

3種類のアプリに対応する

 本体の性能を検証する前に、まずは新しいM1プロセッサを使うということがどういうものなのか、その体験を共有したい。

 基本的な体験は、Intel搭載MacBook Airと(F4〜F6キー以外は)ほとんど一緒なのだが、実は水面下の動作の仕組みは大きく異なっている。OS付属アプリなど新プロセッサに最適化されたUniversal Binary形式のアプリを開くと、アプリの中に埋め込まれたIntel用コードではなく、Apple Silicon用コードを実行して動作している。

 一方、まだM1用に最適化されていない従来型アプリを実行する場合は、Rosetta 2というIntelプロセッサの動作を模倣する仕組みを使って実行する。面白いのは、このRosetta 2がmacOS Big Surに最初から搭載されているわけではないことで、初めてIntel Mac用アプリ(従来のアプリ)を実行しようとしたところ、Rosetta 2の追加インストールを促された(これは評価機だけのことで、もしかしたら製品版では状況が変わっているかもしれない)。

MacBook Air Intelプロセッサ用アプリを初めて実行すると、Rosetta 2のダウンロードとインストールを促される。インストール後は、Universal BinaryかIntel用アプリかの違いを実感することはほぼない

 M1搭載Macでは、Universal Binaryアプリも、Intel用アプリも、全く区別なく普通に動作する。実際にはIntel用アプリは1度、Intel用のコードをM1用に翻訳してから実行しているため、本来の性能が出せていないはずだが、M1プロセッサが翻訳を介した後でも従来のIntel機の性能を上回るほど恐ろしく高速なおかげで、動作にストレスを感じることもない。

 今、利用しているアプリがM1に最適化されているか、Intel用のままかはmacOS付属の「アクティビティモニタ」というユーティリティーで確認できる。「CPU」動作を確認する画面に、新たに「アーキテクチャ」という項目が加わっており、ここを見れば1個1個のアプリ(正確には実行プロセス)がM1などのApple Silicon用か(「Apple」と表示される)、Intel用のままか(「Intel」と表示される)が区別できる。

MacBook Air アプリがApple Siliconに最適化されたUniversal Binaryか、それともRosetta 2を通して利用しているIntel用アプリかを知りたい場合は、アクティビティモニタというOS付属のユーティリティーを起動する。「アーキテクチャ」という欄にどちらのプロセッサ用のアプリかが表示される

 M1搭載Macではこれに加えて、開発者がそれを望んでApp Storeで提供さえしていれば、iPhone/iPad用に作られたアプリも実行できる。既にゲームソフトの「Among Us」や「クロッシーロード」、ヘルスケアアプリの「Lose It!」、レシピアプリの「Kithcen Stories」などいくつかのiPad用アプリの提供がMac用App Storeで始まっており、Mac用App Storeでは紹介コーナーが設けられている。

 これらのアプリは、iPadの画面サイズで動作する。ウィンドウ左上のウィンドウ拡大/縮小ボタンを押してもアプリ画面がMacの画面全体を覆うことはなく、あくまでもiPadの画面サイズで動作する。Kitchen Storiesなど、アプリによってはiPadを横置きした時の横長表示と、縦置きした縦長表示の切り替えができるものがある。

 現在、iPhone/iPad用アプリの開発環境とMac用アプリの開発環境はどんどん近づいており、アプリの開発者もMacの画面表示サイズやトラックパッド操作に合わせた手直しを少し行えば、これらのアプリをMacに最適化されたアプリとしても提供ができるはずだ。

 しかし、開発者としては、Mac対応にそこまで開発費を投じていいかが分からない。iPhone/iPadアプリの実行機能は、Macで利用できるアプリを一気に増やす一方で、開発者にもMac版開発の感触、手応えを与えようという実験的な位置付けになりそうだ。

MacBook Air 開発者が望めば、iPhone/iPad用アプリをMac用App Storeで提供できる
MacBook Air そのようなアプリを実行すると、iPadの画面サイズで実行される。画面サイズいっぱいの最大化はできないが、アプリによっては縦長表示と横長表示を切り替えられる

 なお、M1搭載Macでは、少なくともしばらくの間、利用できなくなるのがWindows用アプリだ。Boot CampでWindowsを起動し直そうにも、そもそもM1プロセッサではWindowsが動かない。macOS上でWindows用アプリの利用を可能にしていたParallelsも利用できなくなる。

 同社では、Apple Silicon搭載MacでWindowsの利用を可能にすることに対して前向きに取り組んでいるようだが、現状で発表できることは何もないようだ(この点に関してApple Silicon搭載Mac発表会の速報では当初、筆者の側で事実誤認があり後に訂正させてもらった)。Parallelsは当面の迂回策として、Windows機に安全にリモートアクセスを可能にするRemote Access Serverという製品の提供に重点をシフトしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年03月29日 更新
  1. ミリ波レーダーで高度な検知を実現する「スマート人感センサーFP2」を試す 室内の転倒検出や睡眠モニターも実現 (2024年03月28日)
  2. Synology「BeeStation」は、“NASに興味があるけど未導入”な人に勧めたい 買い切り型で自分だけの4TBクラウドストレージを簡単に構築できる (2024年03月27日)
  3. ダイソーで330円の「手になじむワイヤレスマウス」を試す 名前通りの持ちやすさは“お値段以上”だが難点も (2024年03月27日)
  4. 「ThinkPad」2024年モデルは何が変わった? 見どころをチェック! (2024年03月26日)
  5. ダイソーで550円で売っている「充電式ワイヤレスマウス」が意外と優秀 平たいボディーは携帯性抜群! (2024年03月25日)
  6. 日本HP、個人/法人向けノート「Envy」「HP EliteBook」「HP ZBook」にCore Ultra搭載の新モデルを一挙投入 (2024年03月28日)
  7. 次期永続ライセンス版の「Microsoft Office 2024」が2024年後半提供開始/macOS Sonoma 14.4のアップグレードでJavaがクラッシュ (2024年03月24日)
  8. サンワ、Windows Helloに対応したUSB Type-C指紋認証センサー (2024年03月27日)
  9. 日本HP、“量子コンピューティングによる攻撃”も見据えたセキュリティ強化の法人向けPCをアピール (2024年03月28日)
  10. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー