GeekbenchではM1プロセッサの本領を出しきれていないという印象があったため、もう1つこちらも定番となる、CINEBENCHでも性能テストを行った。CINEBENCHではかなり負荷のかかるグラフィックスの演算を合計6回も繰り返す。高負荷の状態が長時間続いても安定動作するかを試す、耐久テストのような側面がある。
このテストでもマルチコア性能で6816、シングルコアで1491と、MacBook Airとは思えない性能をたたき出した(16インチMacBook Proのスコアは3400台だ)。
ここでとたんに興味が湧き、「熱容量」についての実験を行ってみた。
Apple Siliconでは、MacBook Airとプロ用をうたうMacBook Proが同じプロセッサを搭載することに少し違和感を覚えるかもしれないが、Appleはここで熱容量という、これまであまり重視されていなかった新しい指標を持ち込み、一般モデルとプロモデルの差別化を図っている。
新しいM1プロセッサは、パフォーマンスが必要になるとより多くの電力を消費し、より多くの熱を発する。ただ、それによってあまりプロセッサが高温になると、今度は性能を落として温度が上がらないようにする。
プロモデルのMacBook Proには「アクティブクーリング」という内蔵ファンによる冷却システムが内蔵されているが、新型MacBook Airにはこれがない。MacBook Airはファンの内蔵をやめ、無音動作の心地よさを楽しめるが、その代償として、長時間負荷の大きい処理を行っていると段々性能が下がり始め、MacBook Proにパフォーマンスで負けてしまうのだという。
では、Mac本体の底面から風を当てる冷却台や風量が圧倒的なダイソン製ドライヤーのSupersonicで冷やしたら、CINEBENCHのスコアがさらに伸びるかもしれない。そう思って底面を冷却台で冷やしつつ、キーボードのある面をドライヤーの冷風で冷やしながらもう1度CINEBENCHを行ってみた。
その結果、最初のテストでは6816ポイントだったスコアが6985ポイントまで上昇した。にわかに喜んだが、計算してみるとわずか2%の差で、もしかしたら誤差かもしれない。そこでさらに冷凍庫から冷えた保冷剤を取ってきてMacBook Airがぬれないように注意しながら上下に当て、それをさらに冷却台とドライヤーで冷やすという実験を行った。すると、さらにスコアが伸びて7098ポイントになった。
これでも計算してみると、元のスコアとの差は4%で誤差の範囲と言えば誤差の範囲かもしれないが、それはおそらくCINEBENCHでもまだ十分な負荷がかかっていないからであって、今後、M1プロセッサの性能をもっとフルに生かすアプリが出てきたら、MacBook Airを効率的に冷却するアクセサリーに商機があるのではないかという気がしてきた。
一方、今回は時間切れで検証ができなかったが、夏場などは机がどれだけ熱がこもりやすい素材かで本体のパフォーマンスが大きく変わる可能性もある。そういった心配なく使えるという点では、確かにMacBook Proは安心感が大きいだろう。
最近、友人とプロフェッショナルとは何かの議論になった時、友人は「どんな時でも結果を出すのがプロフェッショナル」と言っていたが、MacBook Proはもしかしたら、まさにそういうマシンなのかもしれない。
それに対してMacBook Airは、ほとんどのことを高いパフォーマンスでこなすが、気温や机の素材によってはパフォーマンスが変わる気まぐれなマシンなのかもしれない(わずかの数日の検証期間では、そこまでの癖を引き出すことができなかったが)。
いずれにせよ、Webブラウジングや文章書き、校正といったプロセッサ負荷の低い仕事がメインで、ごくたまに負荷の高い作業をする人ならMacBook Airで十分、ビデオ編集や3Dレンダリング、AIを使った写真加工などプロセッサ負荷の高い作業を日常的に行う人はMacBook Proというのが、新たな製品購入の線引きになりそうだ。
まだまだ、これがApple Silicon搭載の最初のモデルだというのに、いきなり性能でも、製品コンセプトでも、そしてIntelコードとの互換性などクオリティーの面でも、魅力全開のM1搭載Macだった。
今後、Apple Siliconのハイエンド機がどのような構成になるかは未知だが、MacBook Airは造形や美しさ、重量や価格の手頃さで見ても身近で、まさにApple Silicon初号機と呼ぶのにふさわしい存在といえるだろう。
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