さて、それではいよいよ実機の検証に入ろう。GPUが7コアのM1プロセッサ搭載MacBook Airは、どれほどのパフォーマンスを発揮するのか。できれば、これからどんどん増えていくUniversal Binaryアプリを使って、M1プロセッサの本当の実力を試したい。
なお、熱がパフォーマンスに影響をおよぼすということもあって、今回は1度テストを行うたびに本体を十分冷却してから次のテストを行うように注意した。
現状では、まだUniversal Binaryアプリは限られているが、Apple純正のビデオ編集アプリ、Final Cut Proがいち早く対応しているので、これを使ってApple ProRes 4444の4Kビデオを最大4トラック合成したFinal Cut Proのプロジェクトに触ってみた。
プリレンダリングを施さなくても普通に合成した4K映像が再生できるし、スクラブ再生(再生ヘッダを前後に動かす)もストレスなく行えてしまう。
もっとも、この辺りはこの春に発売されたIntel版Macでも同様の快適さで作業ができた。最近のMacBook Airの性能には驚かされる。
もう少ししっかりと両者の性能差を見極めたいということで、 Final Cut Proの性能を試すBruceXという有名なテストを試した。M1搭載機で実行すると、わずか21.29秒で処理を終えた。7年前に作られたテスト方法ということで、今では通用しないのかと、試しにIntel CPU搭載の最新MacBook Airでも試したが、こちらでは106.43秒かかり、実はM1搭載機の性能が圧倒的であることに改めて気付かされた。
実際にアクティビティモニタを使って、Final Cutでの作業やBruceXテスト中のCPUの使用率を確認したが、8つのCPUコアの平均使用率が50%を超えることはほぼなかった。Final Cut Proで4K映像に単純な編集を行うくらいでは、M1プロセッサの実力を出し切ることができないようだ。
となると、おそらく今出ているUniversal BinaryのアプリでM1プロセッサの性能を出し切れるアプリはかなり限られそうだ。
そこで定番のベンチマークソフトであるGeekbenchの最新バージョン、Geekbench 5を購入して検証してみた。既にUniversal Binaryに対応しており、M1搭載Macでは、Apple Silicon用コードで性能テストをするか、Intel用コードで実行するかを選択できるようになっていた。
ちなみにこのアプリで、いくつか上辺からはわからない事実が分かった。テストしたMacBook AirのモデルIDはMacBookAir10,1だ。プロセッサのベース周波数は3.2GHzで、そもそものクロック動作がかなり高い。1次キャッシュは命令用が128KB、データ用が64KB、そして2次キャッシュメモリが4MBだ。
Geekbenchを実行してみて、さらに驚かされた。
まずは、M1プロセッサに最適化されたApple Silicon用のテストを実行した。マルチコアテストのスコアは7589という驚きの値だった。
これは最新iMac(Intel Core i9/3.6GHz/8コア)の7989にこそ劣っているが、16インチMacBook Pro(Intel Core i9/2.4GHz/8コア)の6880を大きく上回るスコアだ。あの薄いMacBook Airでありながら、一切冷却ファンが回ることもなく(そもそも冷却ファンを搭載していない)、巨大な16インチMacBook Proの性能を軽々と上回ってしまった。
圧倒的パフォーマンスを支えているのは、1つ1つのコアの性能差で、シングルコアの性能スコアは1711だった。これは16インチMacBook Proの1098という値を大きく引き離しているばかりか、最新iMacの1248というスコアすらも上回っている。
それでは、M1プロセッサに少しハンデをつけてIntel用コードでテストを行った場合はどうだろうか。Geekbench 5では、あえてApple SiliconのMacをIntel用コードで性能テストする機能が用意されている。
何と、ここでも結果はマルチコアで5535、シングルコアは1229とかなり高かった。さすがに16インチMacBook Proを上回ることはできなかったが(シングルコアでは上回っている)、2020年春に登場した13インチMacBook Pro(Intel Core i5/2.0GHz/4コア)モデルの4240というスコアは大きく上回った。
参考までに、見た目が全く同じ今春登場のIntel版MacBook Airはマルチコアが2212、シングルコアは1047という結果で、ほとんど勝負にならない。
繰り返すが、これはGPUが1つ足りないM1プロセッサと、わずか8GBのメモリーという最もスペックが低いMacBook Airで行った動作検証だ。
なお、Geekbenchのテスト結果を以下にまとめた。Rosetta 2を介すIntel用コードの実行でようやくiMacや16インチMacBook Airの面目が立ったが、とにかくM1の性能は圧倒的だ。
モデル名 | マルチコア | シングルコア |
---|---|---|
M1 MacBook Air/Universal Binary | 7589 | 1711 |
M1 MacBook Air/Intelコード | 5535 | 1229 |
iMac(Core i9/3.6GHz/8コア) | 7989 | 1248 |
16インチMacBook Pro(Core i9/2.4GHz/8コア) | 6880 | 1098 |
13インチMacBook Pro(Core i5/2.0GHz/4コア) | 4240 | 1147 |
2020 MacBook Air(Intel) | 2212 | 1047 |
ちなみに後述するが、M1搭載Macではこれまで以上にCPU温度が性能テストの結果を大きく左右する。Geekbench実行後に、MacBook Air本体に触ってみたが、生暖かい感じはするものの、特に熱くなっている印象はなかった。
実際、どれだけプロセッサに負荷がかかっているかを試すべく、アクティビティモニタでCPU使用率を表示した上で再びGeekbenchを実行してみたが、ほとんどの性能テストではコアが2つしか使われておらず、CPU使用率が半分を超えることは滅多になかった。わずかにイメージ圧縮や音声認識パフォーマンスのテスト中だけ、8コアがフル回転する様子が見られた。
なお、ほとんどCPUが性能を出し切らずに処理をこなせてしまうため、バッテリー動作時間も大きく伸びている。公称のバッテリー動作時間はビデオ再生で約20時間とあるが、家にいる間、充電せずにまる1日バッテリーが持つのはかなり快適で、これもまたMacとの付き合い方が変わる大きな1要素になりそうだ。
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