2021年のWindowsを象徴するトピックとして「Sun Valley」や「Windows 10X」を紹介したが、今回はアプリケーションの話題に触れたい。
内容は、1月上旬に話題となった「Project Monarch」こと「One Outlook」だ。Sun Valleyのようなユーザーインタフェースのリフレッシュとは異なるものだが、Microsoftがその時どきで「デスクトップ版Outlook」「アプリ版Outlook」「Outlook Web」「Outlook for Mac」「Mail&Calendar」のような個別のクライアントをリリースし続けたために、カオス状態になっていたアプリケーション戦略を見直し、プラットフォームをまたいで単一で軽量動作する新しいクライアント「One Outlook」を開発中というものだ。
Microsoftのメールやタスク管理のアプリケーションの歴史をひもとくと、後に「Outlook Express」の名称を冠される1996年にInternet Explorer 3.0とともにリリースされた「Microsoft Internet Mail&News」にさかのぼる。これは、あくまで簡易メーラ(兼Net Newsフィード)という扱いなので、いわゆる多機能クライアントとしては1997年にリリースされた「Outlook 97」が初出となる。
Lotus Notes対抗としてExchange Serverと連携するクライアントとして設計されたもので、メールや予定表を含むグループ連携機能が盛り込まれたのは、このOutlookが源流といえる。もちろん、Exchange ServerなしでもOutlook単体での利用が可能だ。
一方、Mac版の事情はやや複雑で、いにしえのCarbon以前のプラットフォーム(OS 9)向けのExchangeクライアントは存在していたものの、Outlookライクなクライアントである「Entourage(アントラージュ)」がMac OS X向けに登場するのは2001年を待たなければいけなかった。
Outlook for Macの正式版が発表されてEntourageが置き換えられるのは2011年なので、Windows版とは15年近いラグがある。しかもMac版Office 365クライアントの提供が開始されてWindows版と機能の共通化が図られるようになったのはさらに数年先の話で、同じOfficeファミリーの名称は冠していても「Macは特別」という時代は長かった。
これとは別の流れとして、モバイルプラットフォームの興隆に合わせてMicrosoftも専用のOutlookクライアントをリリースする必要に迫られた。このAndroidとiOS版Outlookアプリは、Acompliという企業が同名の製品を2014年4月にリリースしたものが基になっている。
Acompliは同年12月にMicrosoftによって買収され、翌年には「Outlook Mobile」の名称でブランドが変更された。これとは別に、2015年にSunriseのカレンダー機能を買収してOutlook Mobileに包含した他、同年にはWeb上のOutlookにアプリ上からアクセスできる「Outlook Web Access(OWA)」、そして「Outlook.com」の提供など、矢継ぎ早にクラウド+モバイル環境を整えていく。
また、現在Windows 10に標準アプリとして組み込まれている「Mail&Calendar」は、もともとWindows 8とともに提供されたものが源流で、UIをリフレッシュする形で今日まで続いている。
ただし、機能的には“オマケ”の域を過ぎず、正直なところ筆者はWindows 8から10までを通じて使ったことはほぼない。仮に「Microsoftのメーラ」に言及しただけでも、これだけの派生品とプラットフォーム対応があるのが現状というわけだ。One Outlookとは、この20年以上の時を経て醸成された秘伝の漬け置きソースを、新しい時代に即した形で刷新するのが狙いとなる。
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