3月30日22時、IntelのデスクトップPC向け第11世代Coreプロセッサ(開発コード名:Rocket Lake-S)の販売が解禁された。
第11世代というと、先行して投入されたモバイル向け製品(開発コード名:Tiger Lake)が10nmプロセスであるのに対して、今回投入されるRocket Lake-Sは、第10世代(開発コード名:Comet Lake-S)と同じく14nmプロセスに据え置かれている。その上、Comet Lake-Sでは最大10コア20スレッド構成だったのに対し、Rocket Lake-Sでは最大8コア16スレッド構成とコアとスレッドが削減されている。
プロセスの微細化が進まなかったことはさておき、世代の進化に伴いコアとスレッドの数が“削減”されることはあまり例がない。単純な数値だけを見比べれば“退化”と言われてもおかしくない。ラインアップを見て「肩透かしだ」と思った人も少なくないだろう。
ただ、一番重要なのはCPUのパフォーマンスである。コアやスレッドが削減されても、総合性能が向上するのなら問題はない。Rocket Lake-Sのパフォーマンスが気になっている人は多いはずだ。
この記事では、Rocket Lake-Sの最上位モデル「Core i9-11900K」(3.5GHz〜5.2GHz、8コア16スレッド)と、ゲーミング用途におけるメインストリームモデル「Core i5-11600K」(3.9GHz〜4.9GHz、6コア12スレッド)を使って、Rocket Lake-Sの特徴と実力を見ていく。CPU選びの参考になれば幸いだ。
先述の通り、Rocket Lake-SはComet Lake-Sと同じ14nmプロセスで製造されているが、CPUコアのアーキテクチャが「Cypress Cove」に変更された。
Cypress Coveについてざっくりと解説すると、モバイル向け第10世代Coreプロセッサ(開発コード:Ice Lake)で使われた10nmプロセスのCPUコア「Sunny Cove」を14nmプロセス用に再設計したものである。Sunny CoveはIPC(クロック当たりの命令処理数)を従来のCPUコアよりも引き上げたことが特徴で、Cypress Coveもその特徴を引き継いでいる。
Intelによると、Comet Lake-S比でRocket Lake-SはIPCが最大約19%向上しているという。プロセスこそ「据え置き」になっているが、それでも着実に性能が上がっていることは1つの魅力といえる。
本来なら、デスクトップ向けにも10nmプロセスのコアを備えるCPUを投入するのがベストではある。しかし、Intelの10nmプロセスコアは、特にハイエンドデスクトップPCで求められる高クロック動作に対応しきれていない。ある意味で、Cypress Coveはデスクトップ向けCPUにおける製品投入の遅れを回避するための「苦肉の策」ともいえる。
上位モデルにおけるCPUコアの削減は、ダイサイズを始めとする物理的な制約を回避するものと思われる。
そんなRocket Lake-Sだが、Comet Lake-Sで導入された「Intel Turbo Boost Max Technology 3.0(TBT 3.0)」、「Intel Thermal Velocity Boost Technology(TVB)」など、高クロック駆動を実現するための機能は引き継いでいる。
CPU直結のPCI Expressバスは、最大レーン数が16から20に拡大された上、より高速なPCI Express 4.0をサポートした。競合のAMDと比べると「遅ればせ」ではあるが、PCI Express 4.0規格のグラフィックスカードやM.2 SSDのポテンシャルを思う存分生かせるようになった。
メインメモリは、全てのモデルでDDR4-3200(PC4-25600)規格とDDR4-2933(PC4-23400)規格をサポートする。ただし、DDR4-3200規格のメモリを用いる場合、Core i9-11900KとCore i9-11900KF(Core i9-11900Kの内蔵GPUレスモデル)ではメモリとメモリコントローラが同じクロックで動く「Gear 1」モードをサポートするが、それ以外のモデルではメモリコントローラがメモリの半分のクロックで動作する「Gear 2」モードのみサポートする。
なお、DDR-2933規格のメモリを使う場合は全てのモデルがGear 1モードで動作する。
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