スペックは「ロケット級」? Intelの新CPU「Core i9-11900K」「Core i5-11600K」の実力を速攻で検証(3/3 ページ)

» 2021年03月30日 22時00分 公開
[松野将太ITmedia]
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ベンチマークでRocket Lake-Sの性能をチェック!

 ここからは、実際にCore i9-11900KとCore i5-11600Kのパフォーマンスをベンチマークテストを通して確認していく。

 マザーボードはASUS製の「ROG MAXIMUS XIII HERO」を利用した。UEFIは原稿執筆時点で最新の「バージョン0610」とした。外部GPUは「GeForce RTX 3080、CPUクーラーは240mmラジエーター搭載のオールインワン水冷ユニットを搭載した。今回は、比較用CPUとしてAMDの「Ryzen 9 5900X」(3.7GHz〜4.8GHz、12コア24スレッド)を用意している。

検証環境 検証環境

CINEBENCH R23

 まず、レンダリングを通してCPU性能を計測する定番ベンチマーク「CINEBENCH R23」の結果を見てみよう。

 Core i9-11900Kのスコアは、マルチテストでは15040ポイント、シングルテストでは1646ポイントとなった。12コア24スレッドのRyzen 9 5900Xと比べると、マルチスレッドテストの結果では大幅に引き離されているが(当然といえば当然)、シングルスレッド性能では59ポイントほど上回っている

 6コア12スレッドのCore i5-11600Kは、マルチテストでは1万ポイント程度となってしまうが、シングルスレッドでは1468ポイントと、ブースト機能による「上積み」が望めない中でもそこそこの結果を残している。

 この結果だけを見ても分かるように、CPUの全てのコアとスレッドを活用するような場面では、10コア超の競合CPUには太刀打ちできない。これはいかんともしがたいことであり、単純にコアとスレッドの数だけを追い求めるのであれば、他の選択肢を考えるべきだろう。

CINEBENCH R23 CINEBENCH R23の結果

 Core i9-11900KとCore i5-11600Kについては、CINEBENCH R23を3回連続で実行した場合のCPU温度と平均実効クロックの推移をグラフ化してみた。

 240mmラジエーター搭載のオールインワン水冷を装着した場合、Core i9-11900Kの温度は最大90度をやや下回る程度となる。Core i5-11600Kの温度は、最大で65度くらいまで上昇する。

 どちらも実用上は問題ないものの、負荷を連続してかける場面ではCore i9-11900Kの温度がやや気になる。上位モデルを使う場合は、高性能な水冷CPUクーラーを用意したい。

 実効クロックは、Core i9-11900Kは4.7GHzを若干上回るところで安定したものの、Core i5-11600Kはふらつきがやや激しい。

CPU温度 CPU温度の推移
クロック 実効クロックの推移

3DMark

 続いて、3Dグラフィックスの性能を計測する「3DMark」の結果を見てみよう。今回は、DirectX 12を用いる「Time Spy」シリーズ、DirectX 11を用いる「Fire Strike」シリーズのテストを実行している。

 Time Spyシリーズのテストの結果を見てみると、総合スコアにおいてCore i9-11900KとRyzen 9 5900Xの差は「Time Spy」(フルHD)で1%未満、「Time Spy Extreme」(4K)で5%未満と、劇的な差は生まれなかった。CPUスコアもTime Spyではそれほど劣らない値で、コア数によるパフォーマンスへの影響はほとんど見られない。

 Fire Strike系テストの総合スコアでも、Core i9-11900Kは数%差でRyzen 9 5900Xに食らいついている。さすがに、Core i5-11600Kではやや大きめのパフォーマンス差が見られるものの、両CPUとの価格差を考えれば、決して悪くはない。

 Core i5-11600KとRyzen 9 5900Xではコアとスレッドの数に「2倍」の開きがあるため、もう少し派手にスコア差が出るかと思っていた。これなら、「Core i5-11600Kは健闘している」と言っても差し支えないだろう。

3DMark Time Spy 3DMark(Time Spy)の結果
3DMark Fire Strike 3DMark(Fire Strike)の結果

FF14ベンチマーク/FF15ベンチマーク

 負荷が軽いゲームについて、もう少し検証してみよう。

 実ゲームを元にしたベンチマークソフト「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(FF14ベンチマーク)で、画質「最高品質」、フルスクリーンの設定を適用し、フルHD、WQHD、4Kの3パターンの解像度でスコアを計測した。

 フルHDとWQHDでは、Intel製CPUは「Fire Strike」よりも大きなスコア差を付けられている。第3世代の改良で驚くほどスコアを向上させたRyzenが、依然として強い。

 4KではGPUがボトルネックとなるため、Ryzenとの差はわずかになる。シングルスレッド性能の高さは、比較的軽量なゲームにおいてパフォーマンスに影響しやすいイメージもあるが、結局はCPUやGPUへの最適化具合に大きく左右されてしまうため、タイトルごとに「有利」な環境は変わる。

 なお、FF14ベンチマークではCore i5-11600Kで4Kのテストにおいてアプリがクラッシュしてしまう不具合が出たため、正しいスコアを計測できていない。

FF14ベンチマーク FF14ベンチマークの結果。なお、Core i5-11600Kにおける4Kテストは、アプリのクラッシュで正確な値を計測できなかった

 では、少し負荷の大きい「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK」(FF15ベンチマーク)の結果はどうだろうか。画質は「高品質」、フルスクリーンの設定を適用し、フルHD、WQHD、4Kの3パターンで結果を計測してみよう。

 先ほどのFF14ベンチマークから一転し、どの解像度でもCore i9-11900KとRyzen 9 5900Xのスコアがおおむね拮抗している。最適化の具合次第では、コアやスレッドの数の差をひっくり返すことが可能だということだ。遊ぶタイトル次第では、Core i9-11900Kには一定の強みがあるといえる。

 なお、FF15ベンチマークでも、Core i5-11600Kは不調で、全ての解像度においてテスト中にクラッシュが発生した。時間的な都合で、原因を特定することはできなかった。

FF15ベンチマーク FF15ベンチマークの結果。正常に計測できなかったCore i5-11600Kのスコアは掲載していない

消費電力

 最後に、システム全体の消費電力をチェックしよう。

 起動後10分間何もせずに安定させた場合の値を「アイドル時」、3DMarkのTime Spy Extremeを動作させた際の最高値を「高負荷時」としてワットチェッカーで計測した。

 いずれのCPUもTDPは125Wで、GPUもハイエンドということで、高負荷時の消費電力は450Wを超える。最も消費電力が大きかったのはCore i9-11900Kだ。生い立ちもあって、省電力化は難しかったのだろう。この組み合わせであれば、電源ユニットの容量は750W以上で用意しておきたい。

消費電力 消費電力

在庫が十分なら「有力なCPU」に?

 繰り返しだが、Rocket Lake-Sことデスクトップ向け第11世代Coreプロセッサは、最上位モデルのコアとスレッドの数が削減されている。しかし、ことPCゲームについては競合のRyzen 5000シリーズに大きく見劣りしない性能を確保している

 「コア数こそ正義」になりがちなクリエイティブ用途では、競合に及ばないだろうが、タイトルごとの設計の差異を差し引いても、ゲーム用途では十分に戦えるCPUである。

 何より、現在はRyzen 5000シリーズの在庫が少ない。このタイミングでRocket Lake-Sの在庫が潤沢であれば、Intelプラットフォームに流れるユーザーも必然的に増えるはずだ。

 今こそシェアを奪うチャンス……ではあるのだが、グラフィックスカードの在庫も不足している現状では、ゲーミングPCを新たに組むのはなかなか難しい状況でもある。なんとも上手くいかない世の中である。

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