Appleが今回、もう1つ力を入れたのが人とのつながりを強めるための新機能だろう。先程の健康情報を共有する機能もその1つだが、FaceTimeの進化はかなり大きい。
既にビデオと音の品質では定評があったFaceTimeだが、ビデオ通話用のソフトとして使う上での障害の1つだった、AndroidやWindowsユーザーが参加できないという問題を、Webブラウザからの参加を可能にしたことで解決された。ビデオ会議のソフト同様に、ミーティングの予定を作成し、リンクを共有して参加を促すことが可能になった。
だが、それだけではない。ビデオ会議システムの多くは、画質と音質を最重要視していたが、Appleはそれらは当然で、その上でいかに使っていて楽しくなる魔法のような体験だったり、心地よさまで突き詰めたりする企業である。FaceTimeのビデオ会議で、それを担うのが空間オーディオへの対応だ。
最近のApple製品が次々と採用している、空間に立体的に広がる音の技術を使って、相手が画面上のどこに表示されているかに合わせて、その人の声がちゃんとその方向から聞こえてくるという。環境音をカットして、話している声だけを届けるというコンピュテーショナルな音声も会議の質を高めてくれるはずだ。また背景がボケて美しく見える、ポートレート撮影の映像でビデオコールに参加することもできる。
さらにビデオ通話中に写真やWebページ、Apple Musicの音楽、Podcast、さらにはApple TV+の映像コンテンツなどを一緒に楽しみたければそれもできる(コンテンツは、自分も相手も同じサーバから再生することになり、端末間でストリーミングするわけではない)。
Stay Homeをしながら、家で1人で映画を見るのではなく、Stay Homeで家で映画を見るときでも、FaceTimeで友達のバカ笑いや叫び声も一緒に楽しむ、そんなコミュニケーションを応援してくれる。
iMessageも進化している。新たに「Shared with You」という機能が加わり、iMessageを通して送られてきた写真や動画、お勧めのWebページなどの情報を後でまとめてみられるようにする機能だ。
例えばあなたが仕事で忙しい時に、友達が面白いWebの記事のリンクを送ってきたとする。仕事が忙しくて一旦は既読スルーのまま放置をするが、仕事が一段落して気分転換にSafariでWebブラウジングをしようとすると、ウインドウの下に「あなたと共有(Shared with You)」の項目として友達が送ってきたWebページのリンクが、友達のアイコンと共に表示される。
「そうだ。面白いページを教えてもらっていたんだ」と思い出してリンク先のページを見て、感想を伝えたくなったら、先程のアイコンをタップすればいい。すると友達とのメッセージの中の、そのWebページを教えてくれた部分が表示されるので、「いいね」などのタップバックを返したり、返信をしたりできる。
仲間との文字を使った会話も無理して相手のタイミングに合わせるのではなく、集中モードで表示された相手の状況に配慮して連絡をする側がタイミングをずらしたり、「あなたと共有」を使って受け取る側が遅くなったりしても、しっかりとフォローアップをしたりといったコミュニケーションの設計は、仲間とのつながりの質も高めてくれそうだ。
WWDC 2021では、もちろん、使い勝手を改善する便利な機能もたくさん発表された。特にiPadOSとmacOS Montereyは、実用ツールとしてこうした機能の充実が図られている。
iPadOS 15では、アプリ単位で自動的に切り替わるメモ帳機能、QuickNoteは写真のレタッチや絵の描画などの作業中に思いついたことを書き留めておくのに便利そうだし、開いていたウィンドウを一時的に最小化してドックにしまっておく機能も便利そうで、今後、iPadでのマルチタスク作業がさらに広がりそうだ。
また、macOS Montereyでは、1台のMacのキーボードとトラックパッド/マウスでiPadや他のMacなど合計3台を操作できる「Universal Control」も便利そうだし、何よりもノート型MacとiPad、ノート型Macと新しいiMacとの2台使いが楽しくなりそうだ。
Macの画面上でAirPlay再生をする「AirPlay to Mac」という機能も、新しいiMacの価値を高めてくれるように感じた。iMacのレビュー記事で、iPhone 12 Pro Maxで撮った映像を大画面で見て改めて感動した話を書いたが、この機能を使えばiPhoneで撮った映像をiMacの大画面で楽しむといった行為がより気軽に行えるようになる。
これらの新機能や、大幅刷新されたSafariについては、また改めて書きたいと思う。
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