AppleがWWDC21で示した情報操作の未来WWDC21レポート(4/4 ページ)

» 2021年06月11日 19時15分 公開
[林信行ITmedia]
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美しさ:見ているだけで楽しくなる進化した地図アプリ

 テクノロジー系企業の発表では、「〜で便利になる」「〜ができるようになる」と利便性ばかりを訴える発表が多い。そんな中にあって、Appleは自社が手間をかけて洗練させた機器であったり、ソフトウェアの画面であったりを、堂々と「美しい」といって胸を張れる数少ない企業の1つだろう。

 テクノロジー業界では「要件さえ満たせば美醜は関係ない」という考えを持つ人が少なくない。だが、誰でも何度かは「見た目の美しいデザインコンセプト」などを見て、それだけでワクワクして心が躍った経験を持ったことがあるのではないだろうか。

 美しさは未来への希望を与え、気持ちをポジティブに変えてくれる。これを決して軽視してはいけない要素であることは、自分と向き合う時間の増えたコロナ禍で多くの人が感じたのではないだろうか。

 今回のWWDCでは、特にiOSやmacOSの基本画面で大きく変わった部分はないが、既に述べたようにSafariの画面デザインに対して登場以来、最大規模の見直しが行われた。

WWDC21 SafariはMac版の画面も大幅に刷新した。ツールバーの余計な項目は全てアドレスバー内の「…」のメニューに集約し、スッキリとした表示になった

 Webブラウザは1990年代の登場以来、他社製も含めて全てウインドウの上にアドレスバーがあり、その左右にさまざまな機能を提供するボタンが並ぶツールバーを構成するというのが常識だった。しかし、Appleは今回、この常識を見直し、ブラウザの全ての機能をアドレスバーの中に集約した。Web画面の上は並列に並んだアドレスバーと、タブの一覧だけというスッキリした画面構成に変えてしまった。

 これによってWeb体験がどのように変わるかは実際に使い込んでみないと分からないが、これがWebページとの付き合い方を変える大きな一歩であることは間違いない。

新しいマップは地球全体をふかんしたり、改訂を含む地形を確認したりできる。ナイトモードでは月明かりに照らされた建物が表示される

 秋以降の新OS、美醜という観点で言えばもう1つ無視できないのが、大幅に進化した「マップ」アプリだろう。

 新しい地図アプリは、どんどんズームアウトを繰り返すと、地球全体を見渡せる状態になる。GoogleのGoogle Earthを少し思わせるが、Appleだけあってその地球の描写に独特の美しさがある。さらにサンフランシスコ市内の名所などにズームしていくと、それらがリアルな立体で表現されている。そればかりか、コイトタワーと呼ばれる丘の上に建つ有名な塔があるが、そこにズームしていくと丘の起伏がリアルに再現されるのだ。

 そしてナイトモードに切り替えると、一部の名所や建物の中から光が灯る。

 昔、大きな本屋さんには地図のコーナーがあって正確さを追求した地図もあれば、美しさを追求した地図なども並んでいた。美しい地図は眺めているだけで、本物の旅とはまた違ったワクワク感をもたらしてくれていたものだが、新しい「マップ」にはどこかそんなワクワク感がある。

 シリコンバレーの山間の風景などを見ると、山林には木も描かれている。しかも、広葉樹の林か針葉樹の林かによって表示される木も変わってくる。実はこれらの機能は、Look Around機能のために走らせた車で収集した写真を元に自動で集計し認識して再現しているらしい。1本1本の木の位置まで完璧に正確というわけではないが、可能な範囲で正確さを追求しているようだ。

 新しいマップでは、もう1つ道路交通のマップも大幅にアップデートされ、高速道路の車線や交差点などのディテールが美しいグラフィックで描写される。

 もっとも、残念ながらこれもまずは米英のいくつかの都市だけで、日本の地図に反映されるのは少し先になりそうだ。

 では、新しく美しく進化したマップアプリ、日本で恩恵が受けられる機能はどんなものがあるかというと、一部で地形の起伏などの描写は実装されるようで日本百名山などは正確な描写の対象になっているようだ。

 地下鉄などの出口は1カ所1カ所人力で位置確認をして正確な情報にし、電車を使った経路案内では、目的地にたどり着くのにどの出口を使ったらいいかや、その出口にたどり着くには電車の何両目に乗ったらいいかといった情報が表示されるようになるようだ。またお店などの情報を表示するプレースカードなどのデザインも刷新される。

 こつこつと改善を重ね、いつの間にか他社が追求できない状況を作ってしまうのがAppleだ。秋に登場の新OSでは、多くの人が改めてApple製マップに注目するきっかけになりそうだ。

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