AppleがWWDC21で示した情報操作の未来WWDC21レポート(3/4 ページ)

» 2021年06月11日 19時15分 公開
[林信行ITmedia]

ARの融合:ARの活用がより日常的に

 秋以降のiPhoneとiPadでは、現実の風景にコンピューター映像を融合させたAR(拡張現実)を活用する画面も増えそうだ。

 例えば三差路や五差路といった複雑な場所で、どっちの方向に進んだらいいか分からない時、新しいApple Mapでは周囲の建物をカメラでスキャンして正確な方角を割り出し、通りの上に通り名を表示したり、目的地へのルートを表示したりといったことが可能になる。これは2020年に発表されたARkit 4という技術でARオブジェクトを指定した緯度経度で表示する技術を使って実現している。

新しいマップでは、通りの名前などを実際の風景の中にAR表示してくれる(ただし、当面は米英の限られた都市だけでの提供となる)

 残念ながらまだ米国のいくつかの主要都市でしか利用できないが、今回、米国外の都市として初めてロンドンが追加された。来年以降、東京や大阪など日本の都市も追加されることを期待したい。

 自分の街がこの機能に対応してくれると、例えば街中の決まった場所に案内や伝言、バーチャルなパブリックアートを置くことが可能になり、ARを日常生活の中で活用するシーンが一気に増えそうだ。

 AR関連の発表で、もう1つ見逃せないのが「Object Capture」という技術だ。これはネット販売をしたい商品や、バーチャル展示をしたいアート作品を周囲360度からグルリと撮影することで、それをAR表示が可能な3Dオブジェクトに変換してくれる技術である。

 残念ながらユーザーがすぐに使える形では搭載されていないが、開発者がこうした機能を簡単にアプリに組み込めるようになるため、OSリリース後、比較的すぐにたくさんのアプリが出てくるはずだ。

Object Capture対応アプリが増えれば、ECサイトでの商品情報の提供の仕方も変わってくる

 同様の機能を既に独自に実現していた「Qlone 3D」というアプリが、iOS 15のリリース後にこのObject Captureへの対応を表明しているので、このアプリが最初に試せるかもしれない。

 3Dオブジェクト化した商品は、Eコマースサイトやバーチャル展覧会のWebサイトに掲載すれば、WebサイトをiPhoneで訪問した人が自分の部屋に実物大で表示して楽しむことができる。

WWDC21 AR表示したいオブジェクトの写真を、周囲から何枚か撮影してMac上で合成するObject Captureという技術を搭載する。MaxonやUnityなどが早速採用する予定だ

 一般ユーザーでも比較的簡単にARコンテンツをつくれる、このような技術が出てくることで2022年以降はARがこれまで以上に身近になってくるかもしれない。

 今回のWWDCでは、Appleのデザイン部門のメンバーが空間とのインタラクションをどうデザインしたら良いかを教えているセッションもあり、方向感覚の分かるU1チップを搭載したiPhoneでAirDropやAirTagの機能をどのようにデザインしたかを語っている(“Design for spatial interaction”)。

インテリジェンス:認識するカメラ 進化した検索

 Appleのインテリジェンス技術といえば、真っ先に思いつくのがSiriだろう。だが、WWDCの基調講演ではSiriの登場は少なかった。HomePodを使った家電のコントロールや、より自然な英語発声、プライバシー保護のために多くの処理をネット接続がない状況でもiPhone本体内でこなせるようになったこと、通知に邪魔されず作業に集中するための「集中モード」で緊急性を要する通知を見分けて知らせてくれる部分で触れられたくらいだ。

 一方で、画像認識やSpotlightに関しては多くの発表があった。最も衝撃的なのは「Live Text」という技術だろう。会議が終わった後に、ホワイトボードに手書きされたアイデアを撮影すると、手書き文字が自動的に文字として認識され、選択後、文字情報としてメールなどにコピー&ペーストできる。

 撮影したお店の看板に電話番号が書いてあれば、そこをタップして電話をかけることもできる。

WWDC21 英語を含む7カ国語では、写真中に写っている文字を認識してコピー&ペーストをしたり、翻訳をかけたり、検索をしたりできる

 もちろん、撮影済みの写真を、写真内に写っていた単語を使って検索といったことも可能だ。

 残念ながら最初は英語など7カ国語しかないが、対応言語の1つに中国語がある。漢字の認識ができるのであれば、日本語への対応もさほど時間がかからないのではないかと期待をしてしまう。

 ちなみに、例えば犬の写真をタップすると自動的に犬種を認識して説明を表示したり、花を撮影すればその種類が分かったりと、被写体に関しての詳しい情報を表示する機能も搭載される。

 認識できるジャンルは多岐に渡っており、アート、本、自然、ペットや有名観光名所などを含むランドマークなども認識し、キーワードを使って該当写真を検索することもできる。

WWDC21 左からアート作品、書籍、花、動物、そしてランドマークの写真を認識して解説を表示しているところ

 この写真検索の機能は、「写真」アプリを起動しなくてもiOSのホーム画面の検索窓からも直接検索できるようになる。つまりキーワードや地名を打ち込むと、すぐに該当する人物、風景、物の写真が検索結果として表示されるのだ。対応する7言語であれば、写真中の文字情報も検索できるので、撮影したレシピや領収書、手書きメモなどもすぐに見つけられる。

 Spotlightで、もう1つうれしい進化が知人の検索だ。仕事仲間や友達などの名前を入力して検索をすると、連絡先に登録した情報が表示され、即座に電話、メッセージ送信などができるのはもちろん、相手が位置情報を共有していれば地図で位置情報を表示してくれるし、相手に自分の位置情報を(一時的に)共有したければ、その操作もワンタッチで行える。

WWDC21 Spotlightで友達などの名前で検索をすると、相手の位置情報(共有している場合)や共有したリンク、メッセージ、カレンダーに登録された一緒に参加している予定などが表示される

 さらには最近、メッセージアプリなどで最後の会話の内容や、共有した写真、カレンダーに登録された一緒に参加する予定やメモなど、その人に関する情報を全てまとめて表示してくれる。

 ちなみにSpotlightでは、日本語にも対応しているかは現時点では不明だが、有名人やTV番組、映画などの情報も表示されるようになるという。

 ここまでiPhone標準の検索機能が強化されると、今後はインターネット検索の頻度が少し下がりそうだ。

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