本製品のもう1つの強みが、AIによる学習データを用い、動体検知で記録した被写体が人物なのか動物なのか、それとも車両なのかという、種類の判別を行えることだ。人については、登録済みの顔か、そうでない顔かを判定できるので、認識できない人物が映った場合のみ通知することが可能だ。
さらに本製品は、カメラの視野の中における検知対象エリアを最大4つまで範囲指定できる他、被写体の種類と組み合わせて通知することもできる。例えば部屋の「扉」の部分を「人」が通過した時だけ検知するよう設定しておけば、部屋の入退室管理に使えるというわけだ。これらは過去の履歴データから検索する時も条件指定が行える。
これらは検知されるたびにスマホに通知されるので、逐一チェック可能だ。一定時間以内には再通知しない設定になっているため、スマホが通知で埋め尽くされることもない。
個人的には、SNSのミュート機能のように、30分や1時間といった期限を手動で指定してオフにできる機能が欲しかった。これならば自宅前で長時間にわたって工事が行われているような場合も、通知が繰り返し飛んでくるのを回避できるからだ。
ちなみにこうしたAIによる被写体やエリアの判別および指定機能は、先行事例がないわけではない。例えば以前紹介した「SpotCam Eva 2」は、やはりAIを用いて被写体を判別したり、エリアを多角形で指定できたりする機能があり、それぞれを通知する機能をサブスクリプションで提供している。
ただしこれらが、被写体ごとにサブスクのプランが用意されており、積み上げるとかなりの金額になるのに対して(例えば人体検出で月5.95ドル、画面内のモノの盗難検出で月3.95ドルといった具合だ)、Nest Awareはアクティビティーが見られる日数で料金が決まるというシンプルな課金体系で、かつ月額630円からと安価だ。
今回は両者を並べて比較することはできなかったので、AIによる識別の精度まではチェックしていないが、将来的にはこうした機能はネットワークカメラでは当たり前になり、検出と識別の精度、およびそのコスト(月額料金)が、製品選びのポイントになっていくはずだ。
もう1つ、他のネットワークカメラにあまりない特徴として、配線不要で利用できることが挙げられる。本製品は大容量のバッテリーを内蔵しており、ACアダプターをつながずに公称数カ月にわたって駆動できる。
これならば、配線が不可能な場所でも、定期的に充電を繰り返すことで、継続して利用できる。例えば自宅玄関の外側、金属扉の外側にマグネットで吸着させておき、訪問者や、自宅前を通過する人を知らせるにはもってこいだ。扉にわざわざ穴を開けて電源を供給する必要もない。
扉の外側に設置した場合、きちんと通信が行えるかは気になるところだが、本製品はセットアップ時に屋外利用を選ぶと、障害物に強く、5GHz帯と違って屋外利用が可能な2.4GHz帯を自動選択する仕組みになっている。2.4GHz帯ならば、金属扉1枚を隔てた程度であれば、完全に遮られることはない。
ただし2.4GHz帯は他の機器の干渉を受けやすいだけに、安定したスループットという点では5GHz帯に劣る。筆者宅では、2.4GHz帯に設定し、玄関ドアの外側にカメラを取り付けている時に限って、表示したままにしていたライブ映像のプレビューが、いつの間にか終了していたことがあった。
試しにMVNO回線を用いたモバイルWi-Fiルーターを経由して接続しようとしたところ、帯域不足とみられる症状で、ライブ映像は全く表示できなかった。室内で5GHz帯を利用している際は一切見られなかった症状で、ネットワークの帯域確保は重要と言えそうだ。
以下の画像も参考にしてほしい。
もう1つ気になるのは、バッテリーの持ち時間だ。実際に試したところ、連続して1日使用した場合、バッテリーは100%から60%まで減少した。このまま放置しておけば、3日も経たずにバッテリーが尽きてしまう計算になる。
もっとも、これは毎時間ごとに人が通過する場所に設置した場合の話なので、そうでない場所で不要なアクティビティーをオフにするなどして節約していけば、1週間を超えての駆動は可能だろう。とはいえ、同社がいう最長7カ月というのは、かなりやりくりを工夫しないと難しいのではと感じた。
以上のように、きちんとパフォーマンスを発揮できるかどうかは「環境および設定次第」ということになるが、こうしたバッテリー駆動ができるネットワークカメラはコンシューマー向け製品ではほぼ皆無なだけに、貴重な存在なのは間違いない。
例えば夜間に出没する不審者の証拠映像を残すために、何日間かに限定し、玄関前や駐車場に備え付ける用途にはもってこいだ。本製品を指名買いする理由になりうるだろう。
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