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2度あることは3度ある 低価格PCで教育市場奪還を目指すMicrosoftの挑戦Windowsフロントライン(1/2 ページ)

» 2021年11月02日 12時00分 公開

 「2度あることは3度ある」とは言われるが、より正確には“3度目の挑戦”に挫折して、今再び3度目のチャレンジに入ったというのが正しいのかもしれない。

 以前に「Windows 10Xの迷走にChromebookの陰」の記事でも触れたように、Microsoftは教育市場でのシェア拡大に非常に意欲を燃やしているが、一方でこの分野ではもともと一定の支持があるAppleに加え、最近ではデバイス価格と管理のしやすさでGoogleのChromebookが市場シェアを大きく拡大している。

 少なくとも、Microsoftはこの分野においてOEMメーカーらの協力を得てもなお、後手に回っている印象があり、今回の話題はその同社からの新しい挑戦となるだろう。

Windows 11 教育 文部科学省「端末利活用状況等の実態調査(令和3年7月末時点)」(確定値)より抜粋。GIGAスクールで導入された端末では、Chromebookを含むChrome OS搭載機の割合が40%を占める

教育市場をターゲットにした新しいPC

 Windows Centralのザック・ボーデン氏が10月26日(米国時間)に報じたところによれば、現在MicrosoftはChromebook対抗となる、特に教育市場をターゲットとした低価格ノートPCの準備を進めているという。

 同誌の情報源は、この製品の開発コード名が「Tenjin」であるとしており、プラスチック外装で1366×768ピクセル表示の11.6型ディスプレイを採用し、Celeron N4120プロセッサと8GBメモリを搭載する。フルキーボードとトラックパッドに加え、USBのType-AとType-Cの各ポートを1基ずつ、さらにイヤフォンジャックと円形タイプの従来型のACポートを備える。Surfaceファミリーの1つとなる見込みで、同氏自身は「Laptop SE」のような名称と400ドル台の価格を予想している。

 同社はかつて、教育市場をターゲットにした「Surface Laptop」と機能制限を加えた「Windows 10 S」を発表したが、Surface Laptopは価格帯が「999ドルから」ということで市販製品としてミドルレンジに位置しており、実際に作りなどもやや高級製品を志向していたことから、そもそもChromebook対抗以前の「普通のノートPC」という位置付けだった。

Windows 11 教育 2017年に登場した「Surface Laptop」。OSはWindows 10 Sだ

 ライセンス価格を引き下げるために、通常のWindows 10 Pro/Enterpriseに機能制限を施した形で同時リリースされたWindows 10 Sだったが、結局のところMicrosoft Storeを介さないアプリケーションはインストールできない制限だけが目立つ形となり、管理機能についてもあまり評価されなかった。

 Surface Laptopは当初の教育用途からは離れて「Microsoft製の普通のノートPC」となり、Windows 10 Sについては「S mode」という形で「通常のWindows 10を機能制限付きで動かすための専用モード」の位置付けになった。

 リベンジにあたる2回目の挑戦は「Surface Go」となるが、こちらは先方のコンセプトとしては教育用途を特にうたっておらず、「可搬性に優れた小型PC」ということで、最小構成価格が399ドルスタートと非常に安価だったのが特徴だ。

 日本ではOffice製品が標準バンドルされるために、一般向けのスタート価格が6万4800円とやや高く、価格面でのインパクトは薄れてしまったが、もともと小型PCの需要がある日本ではそれなりの評価を得たようで、その意味では成功だったといえるかもしれない。

Windows 11 教育 2018年に発売された2in1 PC「Surface Go」

 後に可搬性と価格面での訴求を重視した「Surface Laptop Go」という新機軸の製品が登場していることを考えれば、Surface Goの方向性は間違っていなかったということだろう。ただ、Chromebook対抗が行えたかというと別の話で、結局のところ教育市場における大勢に影響を与えたとは筆者は考えていない。

 個人的意見だが、筆者はGIGAスクール構想で提供されたWindowsマシンのスペックは長期間の使用に耐えないもので、価格上限付きで決められたスペックと実際の現場の要求がマッチしていないと思っている。

 今回、Tenjinで示されているスペックはこのGIGAスクールPCに非常に酷似しているが、もし教育用途として今後ある程度の利用が進むのであれば、その是非を巡って改めて検証が進んでいくだろう。

 米国における教育市場は、「K-12」(幼稚園から高校卒業)のようなキーワードで表現されている。いわゆる義務教育かそれに近い基本的な教育課程が12年(日本でいう小中高の6+3+3の12年)かけて行われることを指したもので、この課程にコンピュータによる学習を持ち込むことを念頭に置いている。

 12年間を通して使い続けるわけではないものの、相応の年数はここで得たマシンに触れ続けることになり、以後のコンピュータ感やテクノロジーとの向き合い方に大きな影響を与えることになる。ゆえに、各社ともこの市場での食い込みを非常に重視しているわけだ。

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