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» 2021年03月30日 12時00分 公開

Windows 10Xの迷走にChromebookの陰Windowsフロントライン(1/2 ページ)

2019年の発表当初は「Surface Neoに搭載される2画面デバイスに最適化されたOS」という触れ込みだったWindows 10Xだったが、その役割も変わるようだ。そこには、GoogleのChromebookが大きく影響しているという。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 2021年は前年に比べ、Windowsに関する比較的大きなトピックが多い年になるとみられる。以前にレポートした「姿が見えた『21H1』と2021年以降のWindows」という記事にもあるように、2021後半には「Sun Valley」で呼称されるWindows 10の比較的大きなアップデートがやってくる他、「Windows 10X」と呼ばれる新しい基軸のOSが、Sun ValleyベースのWindows 10とは別に提供される。

 Windows 10Xについては、2019年10月の発表当初の時点では「Surface Neoに搭載される2画面デバイスに最適化されたOS」という触れ込みだった。

Windows 10X Surface Neoで動作するWindows 10Xのイメージ画像

 Surface Neoについては「2020年ホリデーシーズン」とされていた投入時期に遅れが出ていることは早期にうわさされていたが、後にMicrosoftでWindowsやデバイスの開発トップであるパノス・パネイ氏がSurface Neoの投入遅れと、「Windows 10Xを当初の2画面デバイス向けOSからシングルスクリーン向けのOSとして提供する」という戦略変更を正式に認めている。

 つまり、現在のWindows 10Xは「シングルスクリーンのノートPC(あるいはタブレット)をターゲットとした軽量版OS」であり、同時に「Win32アプリケーションの動作しない完全に“モダンな環境”に最適化されたOS」という位置付けになっている。

 この“シングルスクリーン版”Windows 10Xの投入時期について、「2021年前半」「同年後半」の2つの見解が出ていたが、同OSについて早期から最新事情を伝えていたWindows Centralのザック・ボーデン氏は「前半」説を推しており、以前のレポートにもあったように2021年4月前後の春の時期に「新しいWindowsについてのトピックを扱ったオンラインイベント」が開催される中で、このWindows 10X(ならびにSun Valley)に関するプレビューが紹介されるのではないかとみられていた。

 だが、他ならぬボーデン氏自身が3月中旬に「“シングルスクリーン版”Windows 10Xの提供は2021年後半にスリップする」と報じており、計画に遅れがあるという認識を示している。

Windows 10X Surface Neo

Windows LiteからSantoriniへ

 ボーデン氏が自身の複数の情報源による話として説明するところによれば、2021年春の終わりごろの時期にWindows 10Xは出荷向けビルドに到達し、同OSを搭載したデバイスは同年後半に市場に投入されるという。

 言葉を少し補完すれば、4〜5月ごろの時期に出荷向けビルドがOEMメーカー向けに提供され、実際の製品は7〜9月ごろにかけて登場することになるとみられる。「2021年後半」をなぜ「2021年夏時期」に読み替えたかといえば、おそらくターゲットとする商戦は米国で「Back to School」と呼ばれる8〜9月の新学期シーズンなのだと考えられるからだ。

 通常であれば、年末のホリデーシーズン商戦がその中心となりそうだが、この2つの商戦時期のいずれを狙うかで「Windows 10X搭載PC」の性格が大きく変わってくる。この話題に踏み込む前に、まずWindows 10Xに至る歴史を少し振り返ってみたい。

 Windows 10Xの源流は、2018年末頃にうわさになり始めた「Windows Lite」と呼ばれるOSにある。文字通りというか「軽量版Windows」という位置付けであり、一部には「クラウド利用に特化したOS」という話も出ていた。Windowsが軽量動作するようにスクラッチからコアの部分を開発し、Windowsの“シェル”を被せたという製品だ。

 以前のレポートにもあるように、前者の軽量コアが「Windows Core OS(WCOS)」、後者の“シェル”が「C-Shell(Composable Shell)」という名称で呼ばれ、WCOSをベースに“シェル”を変更することで、さまざまなフォームファクターの製品に適した“組み込み向け”の軽量OSを用意できるというのが一連のプロジェクトの源流となっている。

 2画面折りたたみ型デバイスの名称は、かつて「Andromeda」の開発コード名で呼ばれたこともあったが、WCOSのグループのうち、いわゆる「シングルスクリーン型デバイス向けOS」に相当する開発コード名は、2019年前半時点で「Santorini(サントリーニ)」の名称が付けられていたことが知られている。

 ただし、Window 10Xが正式発表された2019年10月時点での周辺情報を総括する限り、Santoriniそのものは「2画面デバイス」「(シングルスクリーンの)クラムシェル型ノートPC」の両方を含む開発コード名なのだと考えられる。

 Santoriniの「(シングルスクリーンの)クラムシェル型ノートPC」の名称が「Windows Lite」だと仮定すれば、先ほど挙げたWindows 10Xの最初期のレポートにもあるように、「Chrome OS対抗」が明確に戦略として打ち出された点に特徴がある。

 戦略としては失敗した「Windows 10 S」でかつてこの市場を攻略しようとしていたMicrosoftだが、その理由は明確で、OSそのものが「機能制限を施したWindows 10」であり、通常のWindows 10と何ら変わりなかったことが挙げられる。

 つまり、Windows 10 Sの動作要件はWindows 10と全く同じであり、そこそこ快適に使おうと思ったら相応のハードウェア性能を要求される。MicrosoftではWindows 10 Sの発表に合わせて「Surface Laptop」を比較的安価に投入し、主に教育用途向けにアピールした。

 これは当時、教育向け市場で存在感を高めていたChromebook対抗を狙ってのものは明らかだが、最低構成価格が999ドルと安価とは言い難く、例えば当時同製品をレビューしたTechCrunchでは「The $999 Surface Laptop is Microsoft's expensive answer to Chromebooks」のようにやや皮肉をもって紹介されている。

 Surface Laptopはそれなりに完成度が高いハードウェアだったが、それには相応のスペックが必要ということも同時に示していた。Windows 10 S対応ハードウェアを投入するOEMメーカーにとっても、本来であれば相応の内容で製品を投入すべき市場で、あえてスペックと値段を落としてまで参入するメリットは薄い。

 結局、Windows 10 SはMicrosoftのライセンス戦略の違いでしかなく、Chrome OS対抗のためにはそれ相応のソフトウェアを用意すべき……というのが、当時のMicrosoftでの結論だったと筆者は予想する。

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