冒頭でも触れたが、本機はストレージにeMMC(embedded Multi Media Card)を利用している。eMMCは一般的なPCに使われているNVMe M.2 SSDと同じようにフラッシュメモリを採用しているが、読み出しや書き込み速度はそれほど速くない。実際にCrystalDiskMarkで測定した結果は以下の通りだ。
スコアを見ると、一般的なSATA接続のSSDの半分くらいの値だ。しかしVF-AD5は背面にNVMe M.2 SSDの取り付け口があり、カバーを外すとNVMe M.2 SSDを取り付けるスロットが見える。
サポート対象外の行為ではあるが、ここに手持ちのCorsair製のM.2 SSD「Force MP510」(512GB/PCIe 3.0 x4/連続読み出し毎秒約3480MB)を取り付けてCrystalDiskMarkを実行したのが以下の結果だ。
SSDの公称スピードからは大きく劣るものの、eMMCに比べればかなり高速な値となっている。サイズの大きいファイルなどをこちらに置いておくようにすれば、外部ストレージとしては十分に活用できるだろう。
そこでOSをM.2 SSDにインストールし、UEFIで起動ドライブを変更すればシステム全体のパフォーマンスを上げられるのではと考え、環境を移行してみた。この状態でPCMark 10を実行した結果が以下の通りだ。
結果を見ると分かるが、スコアは内蔵eMMCを若干上回っているが、SSD単体のスコアほどには伸びておらず、内蔵eMMCと大差がなかった。
なお、底面にあるネジを回してカバーを完全に開けると、もう1基のM.2 SSDのスロットが用意されているのが分かる。いずれのスロットとも動作保証対象外とはなるが、ストレージの増設/拡張という面ではかなりのポテンシャルを備えていると言える。
最後にバッテリーの持ちについて見ていこう。
Battery reportでは設計容量が約71Whと大容量のリチウムイオンバッテリーを内蔵していた。実際にPCMark 10のBattery ProfileではModern Officeで8時間12分(バッテリー残量は6%)、Applicationsで7時間23分(バッテリー残量は6%)という結果になった。公称値(JEITAバッテリ動作時間測定法Ver.2.0)の約13.4時間には届かないが、実利用でも長時間のバッテリー駆動が可能だ。
本機をモバイル用途で使うことは少ないと思うが、室内でのちょっとした移動であったり、近所のカフェに持ち出したり、ポータブルバッテリー代わりにスマホの充電に使ったりと活躍してくれる。
ここまで見てきたように、VF-AD5はバリバリに何でも使いこなせるPCとは行かないまでも、Webサイトを見たり、メールをチェックしたり、YouTubeを見るといった程度であれば十分に活用できる。
ボディーの外観や質感、入力回りといったコストカットの対象となりやすい部分についてもしっかりとこだわって作られているのは好印象だ。これまでの同社の廉価モデルシリーズの3万円台には及ばないが、税込み5万6980円という手頃な価格は維持されている。また、Microsoft Office Personal 2021モデル(7万9800円)やMicrosoft Office Home & Business 2021モデル(8万4480円)も用意される。
メモリの増設こそ行えないが、腕に覚えがあればストレージの増強は対応可能なので(繰り返すが保証対象外となる)、Windows 11 Proの採用と共にお手軽のサブPCとしても楽しめそうだ。そういった意味では、非常にサードウェーブらしいモデルに仕上がった1台と言えるかもしれない。
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