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意外な落とし穴があるかも SMB1廃止のメリットとデメリットを考えるWindowsフロントライン(2/2 ページ)

» 2022年05月12日 12時00分 公開
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SMB1廃止のメリットとデメリット

 SMBの特徴として、相手側の通信環境に合わせてSMBのバージョン(ダイアレクト)が選択されるという仕組みがある。先ほど紹介した記事のマトリクスにもあるが、通信を行う両者が可能な限り最上位のバージョンを選び、そうでなければ少しずつバージョンを落としていく。

 Windows XP以前のクライアントはSMB1しかサポートしないため、仮にもう片方のOSがより新しいバージョンのWindowsであっても、通信そのものはSMB1で行われることになる。つまりSMB1の廃止で何が起こるかといえば、SMB1をサポートしないOSとSMB1しかサポートしないOSの間で、同通信を介したファイル/プリンタ共有が行えなくなる。

 パイル氏の説明によれば、Windows 10(と同バージョンベースのWindows Server)では2017年にリリースされた「Fall Creators Update(RS3)」の時点でSMB1のサービスが標準で外されている。

 この時点ではSMB1の“サーバ機能”がほとんどのWindowsのエディションで廃止となり、SMB1の“クライアント機能”についてはHomeとProの2つのエディションでのみ残された状態になっていた。これは、まだ家庭用や中小企業(SMB)のネットワーク環境でまだSMB1しかサポートしないNAS製品などが存在したことを考慮したためだという。

 その後、「October 2018 Update(1809)」のタイミングで、ProについてはSMB1の通信が15日間行われない場合に自動的に“クライアント機能”を削除する仕様を導入した。そして現在、SMB1の“クライアント機能”が残っているのはHomeのエディションのみの状態になっている。

Windows 11 HomeのSMB設定ダイアログ Windows 11 HomeのSMB設定ダイアログ

 つまり、現状でWindows 10の多くのマシンとWindows XP以前のマシン、あるいはSMB1しかサポートしない古いネットワーク機器の間でファイル/プリンタ共有が行えなくなっているということだ。

 実際にこの環境でファイル/プリンタ共有を行っているユーザーがどれだけいるか分からないが、これがデメリットの1つだ。パイル氏が2019年時点でSMB1しかサポートしないネットワーク機器のリストを紹介しているが、家電に付随しているちょっとしたネットワーク機器など、意外なところでレガシーサポートに引っかかる可能性が現在もなおある。

 一方で、SMB1の機器がネットワークから排除されれば前述のバージョン選択の仕組みに由来するサーバのパフォーマンス低下といった問題も解決し、セキュリティ上の安全性も向上するため、ネットワーク管理の面では大きなメリットになる。

 まとめると、Microsoftが何年にも渡ってWindowsのHomeエディションのみSMB1サポートを残してきたことからも分かるように、多くの場合問題となるのは家庭内ネットワークと、一部のSMBネットワークということになる。

 管理された企業ネットワークの場合、接続される機器のバージョンやソフトウェアも厳密に管理されるため、SMB1のみしかサポートしない機器がそのまま“ぶら下がっている”というケースは少ないだろう。2022年後半、この機能が完全に無効化される前に、いま一度家庭のネットワーク環境をチェックしてみるといいかもしれない。

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