「Apple M2」搭載で進化した最新「13インチMacBook Pro」の実力は?(2/2 ページ)

» 2022年06月22日 22時00分 公開
[林信行ITmedia]
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気になるM2の性能 高性能コア「Avalanche」は?

 Appleシリコンは、他社のプロセッサのように「〜GHz版」といった価格帯ごとのバリエーションがなく、同じ名前で呼ばれるプロセッサは全て性能が一緒(一部でGPUなどが異なるが)で全力で性能を発揮するため、プロセッサ製品として非常に構成がシンプルだ。

 だが、シンプルとはいえ、気がつけばM1/M1 Pro/M1 Max/M1 Ultraという4つの第1世代プロセッサに、今回の第2世代プロセッサのM2と、5つも製品が出てきたことでちょっと複雑になった。そこでもっと複雑になる前に、これらの関係性をもう1度整理したい。

13インチMacBook Pro レビュー Appl M1シリーズのバリエーション。ダイサイズが大きく異なるのが分かる

 Mシリーズのプロセッサは、パフォーマンスを発揮する高性能コアと電力効率が高い高効率コアの組み合わせでできている。

 第1世代のM1シリーズのプロセッサはProもMaxもUltraも「Firestorm」という高性能コアと、「Icestorm」と呼ばれる高効率コアで構成されていた。その上でProとMaxは、ノーマルのM1に対して高性能コアの数が2倍、Ultraでは4倍、GPUコアがProは2倍、Maxは4倍、Ultraは8倍だ。

 AI処理用のNeural EngineがUltraだけ2倍、さらにメディアエンジンと呼ばれるメディア処理に使われるエンジンで、ノーマル以外のM1はProRes、ProRes RAWという高品質動画処理のためのエンジンが加わっているという特徴があった。

13インチMacBook Pro レビュー M1 Proのメディアエンジン
13インチMacBook Pro レビュー 2基のエンコードエンジンを搭載したM1 Maxのメディアエンジン

 これに対して、M2は「Avalanche」という新しい高性能コアと「Blizzard」という新しい高効率コアを採用し、動作周波数も向上している。Geekbenchの情報によれば13インチMacBook Proのベース周波数は3.49GHz(対してM1搭載の2020年モデルは3.2GHz)だった。周波数は毎秒何回処理を行うかを示す単位で、これが速いほど処理性能は高いが、最近のプロセッサはこの周波数を常に変化させてオーバーヒートやバッテリーの消耗を抑制している。

 このコアが新しくなり、スペック上は搭載できる2次キャッシュの容量なども少し増えているのが第2世代の特徴で、今後はこの新しいコアをベースにM2 Pro、M2 Maxなどのバリエーションが作られることが予想される。

 13インチMacBook Proが備える標準プロセッサだけに絞って言えば、さらに進化のポイントがある。第1世代では標準プロセッサに搭載されずPro/Max/Ultraだけの特徴となっていた8K映像処理やProRes、ProRes RAW形式の映像処理に特化したメディアエンジンが追加されたのだ。

13インチMacBook Pro レビュー 第2世代ではノーマルのM2にもメディアエンジンが内蔵された

 高解像度な映像をProRes形式に変換するといった作業では、M1標準プロセッサ搭載の前13インチMacBook Proと比べて最大で2.9倍近くも性能が上がっているのは、このためだ。

 さて、ここでいくつかベンチマークテストの結果を見てみよう。定番のGeekbenchでのテスト結果で注目すべきは「Single-Core Score」の結果で、1918というスコアを出している。これはM1/M1 Pro/M1 Maxはもちろん、M1 Ultraのスコアすらも上回っているが、これがFirestormとAvalancheの性能差ということになる。

 しかし、実際にアプリケーションなどで作業をする際には、複数のコアの連携によって性能差が出てくる。(アプリにもよるが)コア数が多ければ多いほど有利だ。Appleシリコンは、この複数コアの連携の性能も良いため、他社プロセッサと比べても高い性能を発揮している。

 では、そうした複数プロセッサの連携時の性能で見ると、今回のM2搭載MacBook Proはどうなのだろう。「Multi-Core Score」の結果を見るとM1 Pro、M1 Maxを備えたMacBook Proの方が性能が高いことが分かる。

13インチMacBook Pro レビュー Geekbench 5のスコア比較
13インチMacBook Pro レビュー Geekbench 5のテスト結果(Single-Core)。M1 MaxやM1 Proを搭載したMacBook Proを上回るスコアを記録した
13インチMacBook Pro レビュー 逆にMulti-Coreでは、M1 MaxやM1 Proを搭載したMacBook Proを下回っているのが分かる

 ベンチマークテストとしては他に定番のアプリとしてCINEBENCHという3Dレンダリング性能などを検証するアプリがあるが、CINEBENCHの実行画面は少し前まで見ているのが辛くなるほど進みが遅かったが、M2 MacBook Proでは小気味よいテンポでレンダリング処理が続いていく。この性能は数年前までは数十万円台の上位モデルだからこそ得られるものだった。

 それが税込み17万8800円という20万円を切る価格帯の製品で得られるのは負荷の大きな処理を業務でこなすユーザーにとっては朗報のはず。

 ちなみに、CINEBENCH R23のスコアはSingle Coreが1592pts、Multi Coreが8727ptsだった。

プロセッサの性能を測る「CINEBENCH R23」

 為替レートによる価格の変動はあるが、Appleはドル建ての価格帯による製品分類を重視する会社で、1〜1.5年に1回のペースで新しい製品が発表されても、大抵は前モデルと同じ価格帯を踏襲している。

 つまり、今後M2 ProやM2 Maxといったプロセッサを搭載したMacBook Proが出ることがあっても、それらは20万円台後半から50万円台の間の製品になる。

 20万円弱で熱に左右されない安定した高い性能を求めるのであれば、新型13インチMacBook Proは、今でも高コストパフォーマンスの良い選択肢であることは今後も変わらないはずだ。

13インチMacBook Pro レビュー
※USBポート数の誤りを修正しました(2022年6月23日午前11時50分)。


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