1979年、IDCにおいて8088プロセッサが開発された。「この後もどんどんCPUを開発していくのだろう」と思いきや、次にIDCが開発したPC向けCPUは、間が飛んで1993年の「Pentium Processor with MMX Technology」、いわゆる「MMX Pentium」である。
「MMX」は「Multi Media eXtension(マルチメディア拡張)」の略で、1つの命令で複数のデータを処理する、いわゆる「SIMD(Single Instruction, Multiple Data)技術」の先駆けである。マルチメディアの処理を行うには、大量のデータを高速に処理することが求められる。今日では当たり前となったSIMD命令セットだが、当時はCPUに組み込まれたこと自体が“衝撃的”だった記憶がある。
MMX Pentiumの次に出てくるのが冒頭にも挙げたBanias……なのだが、(一部では有名だが)この間にIDCは「Timna(開発コード名)」というCPUも開発していた。このTimnaは、主にコスト削減を目的として、1つのチップにCPUだけでなくGPUやメモリコントローラまで統合しようとしていた。「そんなの当たり前では?」と思う人もいるかもしれないが、少なくとも2チップ構成(CPU+チップセット)が必須だった当時としてはものすごく“野心的”な考え方だったのだ。しかし、メモリコントローラーにDirect RDRAMを採用したことが“あだ”となり、Intelの政治判断から「お蔵入り」となってしまった。
このTimnaのように、リリース前に消えたCPUも実際には多数あったことだろう。イスラエルチームの説明によれば、Banias以降の以下の製品は全てIDCで開発されたという。IDCは、ここ10年のクライアント向けCPUの大半に関わっていることが分かる。
半導体チップの開発には通常3〜5年程度のリードタイムが必要で、複数のプロジェクトを同時に走らせたとしても、開発リソースは膨大なものとなる。そこで、Intelでは効率化とリスク回避の両立を図るために、CPUの開発を米オレゴン州ヒルズボロとIDC(イスラエル)の大きく2チームに分散させて、毎年交互にリリースしていく流れを作っていた。
しかし、IDCの説明を聞く限り、Skylake以降のクライアント向けCPUの多くはIDC主導で開発されているということなのだろう。
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