2022年6月末、ソニーがゲーミングガジェット市場に参入した。「ソニー」ときて「ゲーム」とくれば、ゲーム事業を担当するソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)がなんか始めたのかな……と想像するわけだが、違った。
開発を担当したのはソニー本体の方のオーディオ&ビジュアル関連製品を担当している部署だそうで、なんだか面白そうな匂いがしている。
何が面白そうって、この「INZONE」シリーズ、SIEのPlayStationとの組み合わせを想定した製品かと思いきや、PCゲーミングユーザーにも訴求していきたいとソニーがアピールして誕生させたブランドだからだ。
ということでSIEとは違って、ソニー本体から出た製品ブランドゆえ「PCゲーミングファンも寄ってらっしゃい、見てらっしゃい」という思いも詰まっているのだ。ただ、PCゲーミングに力を入れ過ぎちゃったらそれはそれで、プレステのファン達から「ソニー印の意味がないじゃん」と怒られそうなので、ちゃんと「プレステ5対応機能もあるよ!」と両対応のアピールも忘れちゃいない。
さて、このINZONEシリーズ、6月時点で、ゲーミングディスプレイが2モデル、ヘッドセット(マイク付きヘッドフォン)が3モデル発表されている。ヘッドセットは3モデル全てが発売済みだが、ゲーミングディスプレイの方は、4K/HDR対応の上位モデルが先行して発売され、フルHD/240Hzモデルは2022年内に遅れて発売となるようだ。
本稿では、この発売済みの4K/HDRゲーミングディスプレイ製品の「INZONE M9」の方をレビューしてみることにしたい。
ちなみに筆者は、INZONEシリーズは、その発表直後に個人的に取材を行ったことがあるが、INZONE M9の実機を借りるのは今回が初めてとなる。
もちろん機能やスペック回りについても紹介するが、そちらは既に多くのメディアで取り上げられていると思うので、本稿では、普段使いをして感じたことを中心にレポートしたい。
INZONE M9は一般ユーザーからゲームファンまで、幅広い人気を誇る画面サイズ27型のモデルになる。27型は、ゲーム画面全体を常に視界内に押さえたい一人称シューティングゲームファンからすると「大きい」といわれることもあるが、4K(3840×2160ピクセル)のドットバイドット表示に重きを置きつつ、一般的なPCディスプレイとしての使い勝手までを配慮すると万能性の高いサイズ感だとは思う。
ちなみに、筆者の普段使いの私物のゲーミングディスプレイ製品も27型(LGエレクトロニクス・ジャパンの「27GP950-B」)で、ちょうどスペック的に今回のINZONE M9と拮抗する。筆者は、競技系のゲームとしては格闘ゲームしかプレイしないが、27型は視距離が1m未満ならば大きすぎもしないし、小さすぎもしないしちょうどいいサイズと考えている。
パッケージを開くと、ディスプレイ部とスタンド部を合体させる必要があるが、それぞれは「軽い」というほどでもないが、重すぎるということもなく組み立てられる。
ディスプレイ部のサイズは約615(幅)×363(奥行き)×73(厚さ)mmで約4.6kg、スタンド部は約2.2kgある。ディスプレイ部とスタンド部を合体させた状態の重さは約6.8kgだ。
本機が採用している印象的な3本脚スタンドがネット上で物議を醸したが、実際はどうなのだろうか。
ディスプレイ部は、中央のメイン脚部に組み付けることとなり、確かにディスプレイ下部からこれが突き出る。メイン脚部に組み付けられたディスプレイ部はこの脚部上をスライドするようになっていて、具体的には、ディスプレイ下辺が机面から上に46mm〜116mmの範囲で調整できる。そう、調整範囲は70mmだ。
ディスプレイ部を、このメイン脚部に沿って下げていくと、ディスプレイ部がスライドしながらユーザー側に近づいてくるギミックが面白い。ディスプレイ部が最も低く押し下がると、例の突き出た中央脚部はディスプレイ部の下辺に隠れ気味となるため、それほど目立たなくなる。
ディスプレイを手前にスライドさせても、ディスプレイ部の下部中央には書類やキーボードの類を忍ばせることはできないので、この中央脚部がどうしても気に入らないならば、別途アームマウントなどを活用するのも手だ。
ちなみにINZONE M9は、最も一般的なVESA規格のディスプレイマウント規格の1つ、VESA100マウント(100mm×100mm)に対応している。
スタンド部には、前述した70mm範囲の高さ調整機能以外に、スタンド部には0度〜20度の範囲の上下チルト調整機能が備わっている。なお、左右回転のスイベル調整はない。
この、斜めに伸びた中央脚部にディスプレイ部を組み付けている関係で、下辺側にクリアランスが足りないことから、本機ではピボット回転(縦画面モード)に対応していない。筆者は、PCの普段使いで縦画面モードをそこそこ使う方なので、この中央脚部については「ディスプレイ部の下にものが置けない」ということよりも、「縦画面モードが使えない」ことの方が気になった次第である。
設置状態の「白と黒のコントラスト感」を強調した外観からは、まさに「プレステ5との一貫性」を感じる。ここも「プレステ5ユーザーへの訴求」の一要素なのだろう。出たばかりで、バリエーション展開はすぐには難しいのかもしれないが、できればオーソドックスな全黒モデルも欲しかった。本機の白パーツが赤や青などの有彩色になっていても、独創的な3本脚デザインと相まって面白かったように思う。
背面側には13色に輝くライン上の発光ギミックが備わっているが、設定した色で静的に輝くのみ。表示中のゲーム映像に連動した色で発光したり、サウンドビートに連動して変色したりするような発光ギミックはない。もちろん、消灯も可能だ。
一部のゲーミングディスプレイ製品に搭載されている、画面表示内容に連動して発光する「環境光モード」のような機能は搭載されていない。
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