ソニーの新ブランド製品「INZONE M9」を使って分かった! 誰のための1台なのか(4/5 ページ)

» 2022年09月14日 13時30分 公開
[西川善司ITmedia]
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ブラビア譲りの発色は良好 バックライトのエリア駆動設定は柔軟に使い分けよ

 INZONE M9の液晶パネルは27型サイズのIPS方式で、画面解像度は4K(3840×2160ピクセル)だ。表示面はTVの「ブラビア」とは違って、本機ではノングレア加工がなされた、周囲の情景が映り込みにくいタイプを採用している。

INZONE M9 ソニー SIE PlayStation INZONE M9の液晶パネルの光学300倍となる顕微鏡写真

 IPS型液晶パネルは視野角が広い特徴があり、日本では人気の高い液晶配向方式だが、実は、ネイティブコントラスト性能はVA型液晶と比べると数倍は低い。また、ノングレア加工はパネル表面で光を拡散させる効果が組み込まれている関係で、これまたコントラスト性能を低下させる。

 これを補うために、INZONE M9では、バックライトシステムにエリア駆動(ローカルディミング)に対応した直下型を採用している。エリア駆動の分割ブロック数は96と公表されており、ゲーミングディスプレイ製品としては、かなり優秀な部類の方だ。

 バックライトとして実装されるLED総数は非公開となっているが、エリア駆動時の分割数が96ということは、最低でも96個のLEDは実装されているわけで、輝度性能も相応に高いことが期待できる。実際、INZONE M9のピーク輝度は600ニトと公称されており、ダイナミックコントラストは8万:1に達するとのことだ。

INZONE M9 ソニー SIE PlayStation 直下型LEDバックライトとエリア駆動の動作イメージ

 INZONE M9は、ソニー本体のオーディオ/ビジュアル開発部隊が設計/開発したということで、さすがに画質はいい感じだ。

 色彩チューニングは、ソニーの液晶TVであるブラビアシリーズの設計思想を継承しているそうで、確かにブラビアっぽい画が出ていて「なるほど」と納得する。

 画質モードは「標準」モードが万能性が高く、ブラビアっぽいが実を楽しむにはおあつらえ向きだ。「シネマ」モードは、相対的に赤の出力が高くなり、人肌の表現のリアリティーが向上する。映像コンテンツはもちろん、映画っぽいゲーム、例えば「アンチャーテッド」とか「バイオハザード」のような系統のゲームだと「シネマ」モードは相性が良さそうだ。

INZONE M9 ソニー SIE PlayStation 広色域性能のイメージ

 さて、液晶パネルに限ったことではないが、一般的に、映像パネルというものは、"同じ色"を、暗い階調から明るい階調にまで安定して表示することが難しい。数値上では"同じ色"となるはずなのに、実際の発色がそうならないことが普通なのだ。

 そのため、ディスプレイ製品を開発する際、各メーカーは、"数値上の発色"と"実物の映像パネルでの発色"の対応の変換データテーブルを構築する。色をX軸/Y軸の二次元平面で表されると定義し、これに輝度をZ軸として加えた三次元色変換テーブルが「カラーボリューム」と呼ばれる。

 安価なゲーミングディスプレイ製品では、このカラーボリューム設計はかなりいい加減だったり、採用している液晶パネルの品質、バックライトの品質の関係で、カラーボリュームを作り込んだところで大した高画質表現ができない場合がある。

 INZONE M9は、一般的なゲーミングディスプレイ製品と比較して、このカラーボリューム設計において力が入っていると実感できた。

 評価期間中、アニメ系のゲーム映像、フォトリアル系のゲーム映像、YouTubeなどの実写映像といったさまざまなものを見てみたが、純色表現、中間色表現、いずれにおいても、明るいときにも暗いときにも不自然さを感じることがなかった。なるほど、ブラビア画質の遺伝子を継承している――という点には説得力を感じた。

 筆者が特に感銘を受けたのは、「人肌の発色」の"堅牢"さだ。明るいシーンのみならず、暗いシーンにおいても、肌色が灰色などに落ち込んでしまうことなく、常に"血の気"を感じる温かみのある色あいに調整されていた。

評価期間中、筆者のYouTubeチャンネルでは、INZONE M9を使ってさまざまなジャンルのゲームをプレイし、その一部をゲーム実況でお伝えした

 本機はHDR表示にも対応しており、VESA規格のDisplayHDR 600認証を受けていることがアピールされている。

INZONE M9 ソニー SIE PlayStation INZONE M9は、VESAのHDR映像品質規格DisplayHDR 600の認証を受けている。2022年時点でDisplayHDR認証は400〜1400までが存在するが、筆者個人としては、蛍光灯照明下の室内でまともなHDR感が得られるのは「600以上から」と思っている

 この点もチェックしてみたが、中明度のシーンでは良好なコントラスト感を得られていた。

 ただ、全体的に暗い背景のシーンで、所々に局所的に極端な明部表現があると、その暗い背景部に、バックライトの光が迷光として漏れ出てきてしまうヘイロー(HALO)現象が知覚された。

 また、本機のバックライトのエリア駆動は、時間方向に若干遅延させる特性があるようで、場面の転換時に見られるような、画面内の局所的な明暗表現の位置が入れ替わるような映像では、このヘイロー現象が画面内を伝搬するような見た目になることがあった。

 こうした現象に気が付いた場合は、INZONE M9のエリア駆動制御設定に相当する「ローカルディミング」設定を調整するといい。設定範囲は「オフ/低/高」が選べるようになっており、「オフ」設定とすると、エリア駆動を完全に停止させることができるのでヘイロー現象は抑止される。しかし、その引き換えに映像中の漆黒部分でもバックライトがたかれるようになるため、最暗部表現がやや明るくなってしまう。いうなれば、エッジ型バックライト採用機のような映像になるということだ。

INZONE M9 ソニー SIE PlayStation ローカルディミングの設定はOSDメニューから切り替えられる

 ヘイロー現象が目立ちやすいのは、「高」設定なので、どうしても気になる人はまずは「低」設定に切り替えて様子を見てみるといいだろう。

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