一方で、惜しい点も少なからずあります。まず、USB端子が上端にあるため、有線で逆置きするとこちら側に端子が出てしまい、あまり実用的ではありません。自分は右利きで、左手でキーボードを使うので逆置きにしたいのですが、ケーブルが邪魔になってしまいます。
また自動スリープの挙動が、無線と有線で分けられていないのも残念です。有線運用では、別に節電しなくてもいいのにスリープ→電源断をしてしまい、使いたい時に切れているという動作でした。スリープは設定でオフにできますが、そうすると無線接続時にスリープしません。
もう1点惜しいのが、ショートカットキーが複数キーストロークのマクロに対応していないことです。自分はワコムの機材を使う時は「Ctrl+Shift+N→Alt+P→Enter」のような一連のキー操作を、ショートカットキーかオンスクリーンのショートカットに入れて多用しますが、本機では諦めるか、他のキーマクロツールを使う必要があります。
その他、設定画面内で用語が統一されていなかったり、日本語では見かけない字体が散見(いわゆる中華フォント問題)していたり、軽微か無害とはいえもうちょっとどうにか……と思えることも点々とありました。
概ね普通に運用できそうとはいえ、致命的でない問題や弱点が折り重なって、完成度が低く見えてしまうのはもったいないですね。
本機のペン(PW517)は同社の液タブで試用していて、概ね好印象でまとまっています。
描画の遅延はディスプレイで変わります。なので本機の性能とは言えませんが、手元の環境では反応が良い液タブと比べても問題なく、ディスプレイが高リフレッシュレートで接続されて入れば少し恩恵があり、無線接続の遅延は無視できる、という結果でした。
高リフレッシュレートが本当にイラスト製作の恩恵になるかは、120Hzに対応した「Cintiq Pro 27」のレビューで詳しくチェックしようと思います。
そして、性能の問題は1点、
です。海外メーカーのタブレット製品あるあるですが、複写紙に書くぐらいのしっかりめの筆圧でだいたい頭打ちになってしまい、余裕がありません。個人的にはほとんどの場面で軽めに描くのでそれほど問題ないですが、ぎゅーっと押すぐらいの筆圧を使いたいシーンはいくつかあるため、頭打ちになってしまうのはうれしくないです。
HUIONの筆圧検知のダイナミックレンジが狭いのは、以前からの課題だと思うので次の世代のペンでは直っていてほしいですね。
弱点こそあれ全体的には信頼できて、手の込んだ作品を最初から最後までしっかり描き切れるペン性能だと思います。
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