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これは“iPad SE”なのか? 新型iPadを試して分かった「無印は基準機」という位置付けとシリーズの新たな幕開け本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)

» 2022年10月24日 23時00分 公開
[本田雅一ITmedia]
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「コンパクトなモバイルツール」として優秀

 筆者の予想だが、iPad(第10世代)は、iPhoneやApple Watchにおける「SE」モデルと同様の位置付けになっていくと考える。

 SEモデルは発売当初は大きな話題になるものの、いずれも最新機能を搭載しているわけではないこともあり、話題はすぐに沈まってしまう。しかし、その年間売り上げを見ると、Appleを大きく支える屋台骨となっている。それぞれのジャンルで機能面における基本的な価値や体験を一通りそろえている上、価格も手頃なことが人気の秘密だ。

 率直にいうと、iPad(第10世代)の画面には低反射コートが施されていないため、点光源の多い室内や屋外での視認性に劣る。解像度やサイズこそiPad Airと同じなのだが、フルラミネーション構造ではないためコントラストは低く、Apple Pencilを使った際の視差も大きい。コントラスト低下の影響もあってか、色再現域は「sRGB」の範囲にとどまる。

 とはいえ、これらは一般的なモバイルPCと比べて劣っているわけではなく、モバイル環境で活用するコンピュータとしては一般的なものといえるだろう。それでいて、長時間使えるバッテリー容量やディスプレイの高精細/高輝度といった利点はそのまま生かされている。

加工 ディスプレイ回りをよく見ると、iPad(第10世代)(左)とiPad Air(右)には大きな違いがある。天井の映り込み具合を見れば分かると思う

 ベースモデルとしては十分な新しいiPadだが、1つだけどうしても気になるのがApple Pencilの世代問題だ。

 iPad(第10世代)では、先述の通り“第1世代”のApple Pencilに対応する。最新の第2世代ではない。

 第1世代のApple Pencilは、iPadシリーズのLightning端子に直接差し込んでペアリングを行い、バッテリーも充電することが特徴である。しかし、今回のiPadにはLightning端子がない。「どうやってペアリングや充電をするの?」と疑問に思っても仕方ない。

 この点については、オプション品の「USB-C - Apple Pencilアダプタ」(税込み直販価格1380円)で対応することになる。このアダプターは以下のように接続して利用する。

 iPad本体⇔USB Type-Cケーブル⇔アダプター⇔Apple Pencil

 本体に直接差し込めないだけでなく、アダプターを使うにはUSB Type-Cケーブルも必要ときている。USB Type-CケーブルはiPad本体に付属するものを使えばいいのだが、わざわざケーブルとアダプターを持ち歩かなければならないという点でスマートさに欠ける。紛失の危険性も考えても納得しにくいというのが正直なところである。

 新しいiPad miniでも第2世代のApple Pencilに対応できたのだから、本機にもやろうと思えば搭載できたはず。コストの問題なのか、それとも機構設計上の制約なのかは謎だが、Apple Pencilを重視する人にとって悩ましい仕様となってしまっている。

 一応、一度ペンをペアリングしてしまえば、充電をiPhoneで行えるという「裏技」もあるにはあるのだが……。

ペン iPad(第10世代)でApple Pencil(第1世代)を使うには、画像の「USB-C - Apple Pencilアダプタ」を用意する必要がある。税込み直販価格は1380円とペンを買い直すよりも安価ではある

ついに「新世代iPadシリーズ」のラインアップが完成 次はどうする?

 第10世代を迎えた新しいiPadは、2018年から始まったiPadシリーズの革新の“仕上げ”となる一作だ。iPad Proの2018年を皮切りに、シリーズの他のモデルで採用された新機能や改良を基準機にまで落とし込むことで、ようやくiPadシリーズの「第2シーズン」は完結を迎えたともいえる。これから、iPadシリーズの「第3シーズン」が始まるのかもしれない。

 今回は詳しく触れないが、iPad Proの2022年モデルには「第3シーズン」を感じさせる新機能が備わっている。Apple Pencilのペン先が画面から14mm以内に入ると、ペン先の位置と角度の情報を検出する機能がそれだ。

 ただし、これは「Apple M2チップ」によって実現しているもので、ペンの機構や本体設計に大幅な変更を加えたものではないため「プレ・第3シーズン」みたいな位置付けなのかもしれない。

 また、この新しいiPad Proでは、M2チップのパフォーマンスを生かしたアプリとして、動画の編集/色修正を行える「DaVinci Resolve」や3Dグラフィックスのデザイン/レンダリングを行える「Octane X」を利用できるようになる予定だ。Apple自身のプロ向けアプリ(Final Cut ProやLogic Proなど)は移植されていないが、今後登場することが期待される。

 ……と書いていると、そろそろiPad Proに大幅な設計刷新があってもおかしくないと気付かされる。iPadシリーズの第3シーズンが本格的に始まるとしたら、のろしを上げる役はiPad Proになるだろう。

 とはいえ、新しいiPad Proは、従来のタブレットの常識からは考えられないような高いパフォーマンスを発揮する。Apple Pencilのホバー機能も、操作性を大きく引き上げる観点でかなり有効なものである。

 その評価は、対応アプリがそろってから改めて行うことにしたい。

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