未来を創る「子どもとプログラミング教育」

さいたま市教育委員会が「スマートスクールプロジェクト」を始動 日本マイクロソフトら4社と連携

» 2022年11月01日 00時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 さいたま市教育委員会は10月31日、「さいたま市スマートスクールプロジェクト(SSSP)」の関連協力企業との連携/教育に関する協定調印式を実施した。調印式では、取り組みの分野別にベネッセコーポレーション(ベネッセ)、ライフイズテック(LIT)、日本マイクロソフト、内田洋行の4社と個別に協定書に調印を行った。

 SSSPにおける取り組みの第1弾として、内田洋行が主導する形でマイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」で稼働するさいたま市立学校向けの「スクールダッシュボード」のプロトタイプを構築し、11校で試験運用が実施される。最終的には、全ての同市立学校(※1)においてスクールダッシュボードの運用を目指すという。

(※1)小学校、中学校、高等学校、中等教育学校(中学校と高等学校を統合した学校)、特別支援学校

登壇者 協定調印式に臨んだ代表者。左からベネッセの小林仁社長、LITの讃井康智取締役(最高教育戦略責任者)、さいたま市教育委員会の細田眞由美教育長(さいたま市 GIGAスクール構想推進本部会 本部長)、東京大学/慶應義塾大学の鈴木寛教授(SSSP共同研究会アドバイザー)、日本マイクロソフトの中井陽子執行役員(文教営業統括本部 統括本部長)、内田洋行の大久保昇社長

SSSPの概要

細田教育長 SSSPの狙いを語る細田教育長

 SSSPは、文部科学省が推進してきた「GIGAスクール構想」の先を見据えて、さいたま市教育委員会が独自に推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)施策だ。2021年に同教育委員会が策定した「さいたま市教育アクションプラン(第2期さいたま市教育振興基本計画)」とも連動した取り組みで、さいたま市立学校における「学び方」「教え方」「働き方」についてDXを活用して改革していくという。

ビジョン SSSPでは「一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、新たな価値を創造していく力をはぐくむ教育の実現」を目指すという
改革 DXを活用して「学び方」「教え方」「働き方」を変えていくという
改革 SSSPという略称には「ICTの利活用の“進化”の推進」「データ活用の“真価”の探求」「教育におけるDXの“深化”の促進」という裏の意味もあるという
鈴木寛氏 本プロジェクトのアドバイザーを務める鈴木寛氏

 SSSPでは、大きく「学び方」「教え方」「働き方」の3点におけるDXを進めていくという。そのために、同教育委員会では東京大学/慶應義塾大学の鈴木寛教授をアドバイザーに迎る他、ICTに関わるインフラ、セキュリティやマネジメントに携わる「ITスペシャリスト」を特別職公務員として雇用する。

 先日の通り、同教育委員会は民間企業4社と“個別に”協定を結んでいる。それぞれの企業がSSSPにおいて果たす役割は以下の通りとなる。

  • ベネッセ
    • 学校での学び方に関するデータ連携の検討と検証
    • 家庭での学び方に関するデータ連携の検討と検証
    • タブレット学習アプリ「ミライシード」の学習ログを活用した、効率的な学習内容の研究
  • LIT
    • プログラミング教育の教材提供(「Life is Tech! Lesson」を活用)
    • Life is Tech! Lessonを使ったデータ取得と効果測定
    • 教科横断的な学びのデザイン
  • 日本マイクロソフト
    • スクールダッシュボードの環境整備(Microsoft Azureを活用)
    • 業務の整理/標準化/電子化の推進(「Microsoft 365 Education」を活用)
    • 組織文化変革の推進
  • 内田洋行
    • スクールダッシュボードのプロトタイプの開発、相談/助言、情報提供
    • 学習ポータル「L-Gate」による全システムの連結
    • 校務支援システムを通した教職員の働き方改革の推進

 プロジェクトの“中核”となるスクールダッシュボードは、先述の通りMicrosoft Azureの基盤を利用して内田洋行が開発を行う。ダッシュボードを使って学校、学級、児童/生徒個人の状況を把握しやすくすることで、教職員が児童/生徒と向き合う余力を生み出し、「個別最適な学び」と「探求的な学び」を実現することを目指す。

SSSP SSSPのコンセプト
連携内容 さいたま市教育委員会は、4社と個別に協定を締結するが、プロジェクトは同教育委員会が軸となって各社が連携して進められる
スクールダッシュボード スクールダッシュボードは、Microsoft Azureを基盤として内田洋行が設計/構築を担当する。各社の提供するサービスをつなげるポータルとしての役割も担う
スクールダッシュボード スクールダッシュボードのプロトタイプのイメージ。業務負担を軽減することで、教職員が児童/生徒に向かい合う余力を確保しようという発想のようである
ベネッセ さいたま市立小/中学校ではベネッセの「ミライシード」を既に導入している。今回の取り組みでは、学習ログを活用して児童/生徒に個別最適化された学習の実現と、協働的な取り組みの可視化を目指す
ベネッセ ベネッセは学校や家庭との連携に関するデータ利活用の検討と検証も担当する
LIT LITはプログラミング学習の教材提供と、学習効果の測定を担当する
マイクロソフト 日本マイクロソフトはスクールダッシュボードを提供するための基盤や業務のペーパーレス化を支援することに加えて、教職員の組織文化の改革推進も進める役割を担う
内田洋行 内田洋行はSSSPの要であるスクールダッシュボードの開発などを担う
内田洋行 内田洋行は「統合型校務支援システム」を通した教職員の働き方改革も担当する。児童/生徒の情報を確認しやすくすることで児童/生徒の見守りの質を向上する一方で、事務作業にかかる時間を短縮することで負担軽減につなげるようである

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