未来を創る「子どもとプログラミング教育」

データで分かった生徒と教職員にとっての“最適な学び”とは? 東京都教育委員会の取り組み「Microsoft Education ICT教育フォーラム」レポート(第2回)(1/4 ページ)

» 2022年07月08日 13時00分 公開
[石井英男ITmedia]

 4月23日、日本マイクロソフトがICT教育に関するオンライン講演会「Microsoft Education ICT教育フォーラム」を開催した。この講演会は大きく3つのセッションに分かれており、1つ目のセッションでは岐阜県における取り組み、2つ目のセッションでは東京都における取り組みの紹介、3つ目のセッションは前2つのセッションの登壇者によるパネルディスカッションという構成となっていた。

 この記事では、東京都におけるICT教育に関する取り組みを紹介したセッションの模様をお伝えする。

東京都教育庁が推進する「TOKYOスマート・スクール・プロジェクト」

 東京都教育庁(東京都教育委員会事務局)のセッションは、同庁総務部情報企画担当課長の小林正人氏による「東京都教育庁の取り組み」からスタートした。

 これからの社会は、複雑で予測困難な時代になるといわれている。このような時代に必要となるのは、知識を暗記して再生する力だけでなく、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えをもとに創造したりする力が必要になる。

 小林氏は、このような力を身につけるために、デジタルを活用して学校の学びを「一律・一斉・一方向型」から「双方向型」に転換するなど、「知識習得型」から「価値創造・課題解決型」の学びへの転換が大切だと語る。

 そのための環境整備も含めて、東京都教育庁では2019年度から「都立学校スマート・スクール構想」、2020年度からは「TOKYOスマート・スクール・プロジェクト」を通して教育のデジタル化を推進しているという。

 TOKYOスマート・スクール・プロジェクトは、子どもの学ぶ意欲に応え、子どもたちの力を最大限に伸ばすことを目的にしているといい、1人1人の理解度や進度に応じて「個別最適な学び」や「対話的な学び」を実現していくことを目的に据えている。

スマート・スクール・プロジェクトへの道 デジタルをてこにした「知識習得型」から「価値創造・課題解決型」の学びへの転換を行うべく、都立学校スマート・スクール構想を経てTOKYOスマート・スクール・プロジェクトを推進している

 このプロジェクトは、子どもの学ぶ意欲に応える「学び方改革」、子どもが持つ力を最大限に伸ばす「教え方改革」、子どもにきめ細かく寄り添う時間を作っていく「働き方改革」の3つのパートに分けて進められているという。それぞれの重点項目を箇条書きすると以下の通りとなる。

  • 学び方改革
    • 主体的・対話的な学び
    • 個別最適化された学び
  • 教え方改革
    • 学習ログを活用した「エビデンスベースの指導」の展開
    • 「ビッグデータ」化した学習データの活用/分析を通した授業改善
  • 働き方改革
    • ICTを活用した校務の効率化を通した児童/生徒と向き合う時間の確保

 これらを支えていくのが「1人1台端末」「大容量クラウド」「高速通信網」である。2021年度は、教員の経験値とテクノロジーのベストミックスによって、子どもたちの能力を引き出すための環境を構築し、何があっても学びを止めないことを重点に据えたとのことだ。

TOKYOスマート・スクール・プロジェクトの概要 TOKYOスマート・スクール・プロジェクトは、ICTを活用して「学び方」「教え方」「働き方」の3つを改革するという取り組みである
トータルツールとして推進 子どもたちの力を最大限に伸ばすためのトータルツールとして、教育のデジタル化を強力に推進する

都立学校は「BYAD方式」で1人1台端末を実現

 文部科学省が2020年度から本格的に推進している「GIGAスクール構想」では、義務教育課程(※1)では1人1台端末の購入補助金が予算措置された。義務教育課程から少し遅れたが、高等学校課程(※2)でも2022年度から1人1台端末の普及に向けた動きが本格化する。

(※1)小学校、中学校、義務教育学校(小学校と中学校を統合した学校)、中等教育学校(中学校と高等学校を統合した学校)の前期課程、特別支援学校の小学部と中学部
(※2)高等学校、中等教育学校の後期課程、高等専門学校の1〜3年次、特別支援学校の高等部

 ただし、義務教育課程とは異なり、学習用端末に対する国からの予算措置は限定的となる。そのため、自治体によって学習用端末の整備方法が異なっている。一番多数派を占めそうなのが、生徒に自分で買った端末を持ってきてもらう「BYOD(Bring Your Own Device)方式」と、自治体または学校が指定する端末を購入させる「BYAD(Bring Your Assigned Device)方式≫」である。

 BYOD/BYAD方式を採用する自治体では、端末の購入時に補助金を出すことで生徒や保護者への負担を抑える施策を用意している。ただし、補助金に保護者の所得による制限を設けている場合もある。

 東京都教育委員会が設置する学校(都立高校、都立中等教育学校後期課程、都立特別支援学校高等部)はBYAD方式を採用した。2022年度以降の新入生は、入学時に学校が指定する学習用端末を購入することになる(※2)。学校ごとに指定端末を変えているのは、学校の特性や興味関心に最適なモデルを選ぶのが良いという考えに基づいている。

(※2)高校と中等教育学校は教育委員会が指定するWebサイトで、特別支援学校は学校で取りまとめて購入する

 購入時には補助金が適用されるため、保護者の負担は一律で3万円となる。この他、状況に応じて以下の支援が用意されている。

  • 多子家庭(23歳未満の子などが3人以上いる世帯)の新入生
    • 補助金を増額し、保護者負担を半額(1万5000円)に
  • 東京都立学校等給付型奨学金」の対象となる新入生
    • 奨学金を活用して、保護者負担を免除するように措置
  • 特別支援学校高等部の生徒
BYAD 都立高校における1人1台端末はBYAD方式で実現することになった。ただし、Webサイトの説明を読む限り、学校の裁量によってBYODも認められそうである

18校を研究校として指定

 学び方改革、教え方改革を進めていくために、東京都教育委員会は2020年度、高校課程の18校を「Society5.0に向けた学習方法研究校」として指定。ICT技術の活用を前提とした学び方や教え方の研究開発を約2年間続けてきた。

 小林氏は、これからの教育はデータをきちんと取って、そのデータに基づいたエビデンスベースの指導をしっかりしていくことが重要だと語る。教職員の経験値にエビデンスをプラスして、より質の高い教育を提供していきたいと考えているという。

 具体的な方法だが、「定期考査採点分析システム」や「統合型校務支援システム」にある教務系のデータを現在開発中の「教育ダッシュボード」へと流し込み、このダッシュボードに学習系データや生徒の「Microsoft 365 Education」の利用状況も加えることで、データ間の関連性や相関関係を図示できるようするとのことだ。

 ただ、小林氏はいずれにしても重要なのはエビデンスベースの指導だと語る。教職員がデータを活用し、継続的な授業改善につなげることが重要だと考えているという。

2021年度の取り組み 2021年度の主な取り組み。研究校における研究は2020年度から約2年間続けられてきた。なお、資料には記載がないが、研究校のうち3校では2022年度も研究を継続している
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