PFUの高級キーボード「HHKB(Happy Hacking Keyboard)」は、25年前に誕生したロングセラーだ。現行の最新モデル「HHKB Professional HYBRID Type-S」の静音タイプは直販価格3万6850円(税込み)とキーボードとしては高価だが、根強いファンに支えられて販売が続けられてきた。
かくいう筆者も、HHKBの愛用者の一人である。充電/接続端子がUSB Type-Cになった「HHKB Professional HYBRID Type-S」を約2年間、メイン機のキーボードとして使い続けている。そんな筆者が今回、“憧れの”同キーボードの無刻印モデル(日本語配列)に挑戦する。
HHKBはまるでミニマリストが作ったキーボードのようだ。一般的な日本語配列のキーボードが106キーまたは109キーあるのに対して、日本語配列のHHKBのキーは69個と少ない。テンキーを省略し、Page Up/Page Downキーなどの操作キーの多くをFnキーとのコンビネーションとすることで、フットプリントを大幅に削減している。
この配列で特徴的なのは、Ctrlキーが左Shiftキーの上、A列の左端にあることだ。使い始めの頃、筆者はこの配置に若干面食らった。しかし、すぐにその合理性に気付いた。Ctrlキーを含むキーボードショートカットを打つとき、左手小指の移動距離を大幅に縮めることができるのだ。
通常はCtrlキーがあるキーボード左下の位置には、Fnキーが置かれている。このFnキーはHHKBにとって重要な存在で、かな変換を行う「Fn+7」など、Fnキーともう1つのキーの組み合わせで、Page Up/Page DownやHome/End、ミュージック(Macで使う場合)など、各種操作キーを代用できる。
さらに、Bluetooth対応のHHKBでは「Fn+Ctrl+数字キー」のキー操作で、4台までのBluetoothデバイスと1台のUSB接続デバイスを切り替える操作も可能だ。
キー入力の快適さもHHKBの魅力だ。キーを軽くなぞっても、グッと押し込んでもきちんとキーが入力される。タイプ音はカタカタと軽快で、指にしっかりとした感触が帰ってくる。
また、メンテナンス性が良く、耐久力が高いという特徴も見逃せない。HHKBは静電容量無接点方式という、機械的な接点が無い構造を採用しており、持ち歩いたりして多少荒っぽく使ってもなかなか壊れない。キーボードを長期間使うとたまるホコリについても、キーキャップを全て外して手入れできるため、長く使い続けることができる。人によっては同じキーボードを10年使い続けている人もいるという。
HHKBをPFUと共同開発した東京大学の和田英一名誉教授は、キーボードを「馬の鞍」に例えている。鞍は馬と人をつなぐインタフェースであり、身体になじむ鞍は、馬を乗り換えたとしても使い続けるものだという。この例えは、HHKBのコンセプトを的確に表している。使っていくうちに身体に自然となじみ、コンピュータでの入力作業をより軽やかに行えるようになる、そんなキーボードがHHKBだ。
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