「プラス」と「マイナス」が入り交じるPC市場 インテルが2023年春に向けた“次の一手”を披露

» 2022年12月06日 20時15分 公開
[井上翔,ITmedia]

 インテルは11月25日、「PC利用法に関する内覧会」を開催した。この内覧会は本来、家電量販店のPC販売担当者を対象とするもので、2023年春商戦に向けて同社の最新製品を紹介すると共に、シーン別の売り場を提案するというものだ。

 この内覧会の実施に合わせて、報道関係者にもその内容が公開されたので、この記事で簡単に紹介する。

ノートPC Intelの第12世代(一部第11世代)Coreプロセッサを搭載するノートPCをまとめた展示。パッと見でも個性豊かであることが伝わってくる(写真提供:インテル)
上野氏 展示内容を説明するマーケティング本部の上野晶子本部長

2023年の個人向けPCの販売台数は“微減”予想

 個人向けに絞って日本のPC市場の様子を見てみると、2019年は「Windows 7」のサポート終了に伴い販売台数が伸長した。2020年は“駆け込み需要”の反動で販売台数は減少……と思いきや、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響でむしろ販売台数は伸長した。

 しかし、2021年以降の販売台数は減少傾向にある。インテルとしても、2023年の販売台数は2022年から“微減”すると予測しているという。販売面でマイナスになると考えられる要素は、以下の通りだ。

  • 「コロナ需要」の反動
    • 在宅勤務をきっかけとするPCの新規購入/買い換え需要の“前借り”で、販売台数が減少してしまう
  • 消費者物価指数が上昇傾向
  • 景気動向指数も悪化傾向
    • PCそのものに対する「割高感」が増しているので、購入意欲が削がれてしまう

 一方で、プラスになると考えられる要素もある。

  • 「Windows 8.1」のサポート終了
    • 2023年1月10日(米国太平洋時間)をもって延長サポートが終わるので、PCの買い換え需要が見込まれる(参考記事)
  • 小中学校や高校における「GIGAスクール構想」
    • 高校課程では学習用端末を「BYOD」「BYAD」「CYOD」のいずれかで用意することになるので、PCの購入/買い換え需要が見込まれる
  • PCの利用頻度の上昇
    • 動画視聴やゲームプレイなど、PCを使う機会が増えているので、PCの購入/買い換え需要が見込まれる

「BYOD」「BYAD」「CYOD」とは?

  • BYOD:「Bring Your Own Device」の略。要件を満たしていれば、どんな端末を持ち込んでもよい。
  • BYAD:「Bring Your Assigned Device」の略。自治体/学校指定の特定端末を購入して持ち込む。
  • CYOD:「Choose Your Own Device」の略。自治体/学校が複数の端末を指定して、その中から1台を選んで購入し、持ち込む。

プラスとマイナス インテルとしては2023年の個人向けPCの販売台数は微減すると踏んでいるようだ

販売促進の鍵は「アップセル」と「クロスセル」

 若年層を中心に、従来は「スマートフォンやタブレットがあれば十分(間に合う)」という声もあった。しかし、コロナ禍を経て、インテルはPCの重要性を再認識してもらえたと認識しているという。

 そこで同社では若者のPC需要を喚起すべく、「アップセル」と「クロスセル」の2軸でプロモーション活動を行っていくという。

アップセル:よりプレミアム(≒高価)なPCへの誘導を図る

 アップセルは「顧客単価を引き上げる」という意味のマーケティング用語で、最近では携帯電話(モバイル)事業者の決算説明会でもよく聞く言葉だ。

 PCにおけるアップセルとは、純粋によりハイスペック、よりプレミアムなモデルへの誘導を意味する。「ゲーミング」と「クリエイター」の2軸を重視するという点は2022年の年末商戦の戦略と同様だが、2023年の春商戦では「もっと長いスパンを見据えた提案」をしていきたいという。

 少し具体的に戦略を見ていくと、まず「Intel Evoプラットフォーム」に準拠するノートPCを入り口の“梅”コースに位置付ける。ゲームやクリエイションにおいて力不足になりそうであれば、“竹”コースとして処理性能のより高いHシリーズのCoreプロセッサを備えるノートPCを提案し、さらなる高みを目指したいユーザーには“松”コースとして第13世代Coreプロセッサを備えるデスクトップPCを勧める――そんな感じである。

アップセル ゲーミングでは、コンソール(専用ゲーム機)でゲームをプレイしている人をPCに誘導すると一方で、クリエイター向けにはWindows PCの利活用を促す施策を実施する。この点は、この2022年の年末商戦と同じ考え方である
アップセルの考え方 2023年の春商戦では、Evoプラットフォームの訴求に加えて、よりハイスペックな選択肢としてHシリーズのCPUを搭載するハイエンドノートPCや、さらに高い性能を有するデスクトップPCを訴求していくという。それぞれのクラスのPCで「できること」を理解してもらった上で、適切なPCを選べるようにすることにも注力するという
展示 ゲーミング用途であれば、エントリークラスを求める人には「Iris Xe Graphicsでもプレイできるゲーム」という形で認証済みゲームタイトルを紹介する取り組みも行う

クロスセル:切り札は「コト展示」

 クロスセルは「ある商品を検討している人に、別の商品も合わせて買ってもらう」という意味のマーケティング用語だ。簡単にいえば合わせ買いで客単価を上げるための戦略である。

 スーパーマーケットを例に説明すると、しゃぶしゃぶ用の「肉」を販売するコーナーがあったとする。クロスセルの考え方では、肉コーナーに「だしのもと(スープ)」「野菜」「ぽん酢」といった、本来は他の売り場で売っている“関連商品”を並べることになる。

 こうすると、「あ、今日はしゃぶしゃぶにしよう」といった具合に、肉と合わせて関連商品を買って行く人が増える。また、一緒に並んでいる商品を見て「あ、これはうちにあるから、これを買えばしゃぶしゃぶができる!」と気が付いて、足りないものを単品で購入することにもつながる。

 インテルは、この考え方をPCの販売に持ち込もうと提案している。家電量販店のPC売り場なら、「PC」に売りたい「周辺機器」や「アプリ(ソフトウェア)」をセットして展示しておくと、PCと一緒に周辺機器やアプリを購入していく人が増える可能性がある。セットでなくても、「あ、このデバイス(アプリ)欲しかったんだよね」「このデバイス(アプリ)が動くなら、このPCを買ってもいいかな」と、単品購入につながる可能性も高まる。

 ……と、これだけなら、従来のPC売り場でも行われている。インテルは“非家電”の売り場やPCとの結びつきの弱い家電の売り場でもクロスセルを展開しようとしている。例えるなら「美容家電売り場でカメラ写りの良い(≒映えた自分を撮れる)ノートPCを展示」「キャンプ用品売り場で屋外でも便利に使えるノートPCを展示」といった具合だ。ある意味で“コト視点”での展示を行おうということである。

 これにより、PCに興味を持っていない人にも「PCのある生活」を想起してもらうことを目指している。この成果がどう出るのか、気になる所である。

クロスセル戦略 クロスセル戦略では、昨今のPCの使われ方に則した展示に加えて、PCとは縁遠いように思える売り場での展示も考えているという
美容売り場 美容家電売り場を想定した展示の例(写真提供:インテル)
キャンプ用品 キャンプ用品売り場を想定した展示の例(写真提供:インテル)
カメラ カメラ売り場を想定した展示の例(写真提供:インテル)

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