インテルは11月25日、「PC利用法に関する内覧会」を開催した。この内覧会は本来、家電量販店のPC販売担当者を対象とするもので、2023年春商戦に向けて同社の最新製品を紹介すると共に、シーン別の売り場を提案するというものだ。
この内覧会の実施に合わせて、報道関係者にもその内容が公開されたので、この記事で簡単に紹介する。
個人向けに絞って日本のPC市場の様子を見てみると、2019年は「Windows 7」のサポート終了に伴い販売台数が伸長した。2020年は“駆け込み需要”の反動で販売台数は減少……と思いきや、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響でむしろ販売台数は伸長した。
しかし、2021年以降の販売台数は減少傾向にある。インテルとしても、2023年の販売台数は2022年から“微減”すると予測しているという。販売面でマイナスになると考えられる要素は、以下の通りだ。
一方で、プラスになると考えられる要素もある。
若年層を中心に、従来は「スマートフォンやタブレットがあれば十分(間に合う)」という声もあった。しかし、コロナ禍を経て、インテルはPCの重要性を再認識してもらえたと認識しているという。
そこで同社では若者のPC需要を喚起すべく、「アップセル」と「クロスセル」の2軸でプロモーション活動を行っていくという。
アップセルは「顧客単価を引き上げる」という意味のマーケティング用語で、最近では携帯電話(モバイル)事業者の決算説明会でもよく聞く言葉だ。
PCにおけるアップセルとは、純粋によりハイスペック、よりプレミアムなモデルへの誘導を意味する。「ゲーミング」と「クリエイター」の2軸を重視するという点は2022年の年末商戦の戦略と同様だが、2023年の春商戦では「もっと長いスパンを見据えた提案」をしていきたいという。
少し具体的に戦略を見ていくと、まず「Intel Evoプラットフォーム」に準拠するノートPCを入り口の“梅”コースに位置付ける。ゲームやクリエイションにおいて力不足になりそうであれば、“竹”コースとして処理性能のより高いHシリーズのCoreプロセッサを備えるノートPCを提案し、さらなる高みを目指したいユーザーには“松”コースとして第13世代Coreプロセッサを備えるデスクトップPCを勧める――そんな感じである。
クロスセルは「ある商品を検討している人に、別の商品も合わせて買ってもらう」という意味のマーケティング用語だ。簡単にいえば合わせ買いで客単価を上げるための戦略である。
スーパーマーケットを例に説明すると、しゃぶしゃぶ用の「肉」を販売するコーナーがあったとする。クロスセルの考え方では、肉コーナーに「だしのもと(スープ)」「野菜」「ぽん酢」といった、本来は他の売り場で売っている“関連商品”を並べることになる。
こうすると、「あ、今日はしゃぶしゃぶにしよう」といった具合に、肉と合わせて関連商品を買って行く人が増える。また、一緒に並んでいる商品を見て「あ、これはうちにあるから、これを買えばしゃぶしゃぶができる!」と気が付いて、足りないものを単品で購入することにもつながる。
インテルは、この考え方をPCの販売に持ち込もうと提案している。家電量販店のPC売り場なら、「PC」に売りたい「周辺機器」や「アプリ(ソフトウェア)」をセットして展示しておくと、PCと一緒に周辺機器やアプリを購入していく人が増える可能性がある。セットでなくても、「あ、このデバイス(アプリ)欲しかったんだよね」「このデバイス(アプリ)が動くなら、このPCを買ってもいいかな」と、単品購入につながる可能性も高まる。
……と、これだけなら、従来のPC売り場でも行われている。インテルは“非家電”の売り場やPCとの結びつきの弱い家電の売り場でもクロスセルを展開しようとしている。例えるなら「美容家電売り場でカメラ写りの良い(≒映えた自分を撮れる)ノートPCを展示」「キャンプ用品売り場で屋外でも便利に使えるノートPCを展示」といった具合だ。ある意味で“コト視点”での展示を行おうということである。
これにより、PCに興味を持っていない人にも「PCのある生活」を想起してもらうことを目指している。この成果がどう出るのか、気になる所である。
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