Apple ティム・クックCEOが3年ぶりに師走の日本を訪問する意味(1/2 ページ)

» 2022年12月15日 12時30分 公開
[林信行ITmedia]

 既報の通り、Appleのティム・クックCEOが現在、来日中だ。12日夜には、熊本市の大西一史市長と熊本城前で撮影した写真をTwitterに投稿し、3年ぶりの来日を明かしたクック氏。

 前々回の訪問では京都の伏見稲荷前からのツイートで来日を明かし、前回はiPhoneの本体色を作る埼玉県のセイコーアドバンスや、伝説のゲームクリエイター、坂口博信氏が率いるミストウォーカーなどを訪問した。

 実は、同氏やAppleマーケティング系の重役はCEO就任以前から年末に日本を訪れ、メディアを通して、その年の最新製品ラインアップの魅力を伝えたり、政府に対してAppleの日本経済や雇用への貢献を報告したり、業界団体や経済界に顔を出し環境への取り組みなどでのリーダーシップを示したり、Appleがその年、注目している日本のアプリ開発者などのサードパーティーを訪問して応援したりしている。

 熊本から始まった、今回のクック氏訪問。既に同氏は熊本空港に止めていたプライベートジェットで東京に移動し、都内のApple直営店やグラフィックアーティストのVERDY氏、同社の横浜の拠点などを訪問している。

 円安による製品の価格改定など話題の多かったAppleと日本の関係だが、3年ぶりということもあってか今回は例年よりも長めの滞在となっている模様だ。本稿では、そんなクック氏の今回の訪問先の中でも、ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)の訪問にスポットライトを当てて、もう少し詳しく紹介したい。

Apple CEO ティム・クック Tim Cook ソニーセミコンダクタソリューションズ ソニーセミコンダクタソリューションズの熊本テクノロジーセンターに訪れたAppleのティム・クックCEO(左から3番目)

ソニー/Apple連携で進化を続けた世界をリードするイメージセンサー

 クック氏が訪れたのは、同社の熊本テクノロジーセンターだ。実はスマートフォン用のイメージセンサーは、主に長崎テクノロジーセンターで製造をしているが、今回は移動の関係もあって熊本テクノロジーセンターを視察し、最新のiPhone 14 Proのメインカメラ用に開発された約4800万画素のクアッドピクセルセンサーのデモなどを見た。

Apple CEO ティム・クック Tim Cook ソニーセミコンダクタソリューションズ ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング 長崎テクノロジーセンターの外観
Apple CEO ティム・クック Tim Cook ソニーセミコンダクタソリューションズ こちらは、クックCEOが訪れたソニーセミコンダクタソリューションズ 熊本テクノロジーセンター

 SSSはモバイル用イメージセンサーにおいて、高画質化を重視した技術開発を続けてきたことで世界的にも注目を集めている会社だ。イメージセンサーの進化の方向性では「画素」「信号処理」「アルゴリズム」が重要となるが、同社はこれら3つにおいて先進的な技術を有しスマートフォンカメラの感度、広ダイナミックレンジ、高解像度、高速撮像などの実現に貢献している。

 特に小型化、画質、機能などを大きく左右する裏面照射型技術、積層型技術、Cu-Cu(カッパーカッパー)接続などの要素技術を世界に先駆けて開発し、注目を集めている。

 カメラの画質は、毎年のiPhone新製品発表においても常に目玉となる特徴であり、高画質イメージセンサーへのニーズは常に高まっているが、SSSはこの大判イメージセンサーの領域において特にアルゴリズムや信号処理で強みがあるという。また優れた品質とコストパフォーマンスを実現する量産技術も同社の強みだという。

 当然、同社のセンサーは、iPhone以外にもソニーのスマートフォン「Xperia」や「αシリーズ」のデジタルカメラなどでも採用されており、熊本テクノロジーセンターは、このαシリーズで使われるセンサーなど一眼カメラ用、車載カメラ用、産業カメラを主に製造している。iPhoneに収まるように小型化されたセンサーではなく、ある意味、少し大きめだがiPhone用よりも少し先を行くセンサーと言えるだろう。

 同センターを訪れたクックCEOは、そんな施設を訪れて次のようなコメントを残している。

 「iPhone 14のラインアップには、世の中を今までにないほど鮮明に捉えるカメラシステムを含め、強力な新機能が詰め込まれています。本日、吉田 憲一郎CEO、そして彼のチームと共に熊本にあるソニーの最先端の施設を訪れ、世界最高水準のカメラセンサーと、絶え間ないイノベーションの推進に向けたお互いのチームの協力を目にすることができました」

 ソニーグループは、2022年に45周年を迎えたAppleに常に大きな影響を与え続けてきた会社でもある。初代Macで3.5インチのフロッピーディスクドライブを供給したり、Macのカラー化ではトリニトロンのディスプレイを、そしてApple初のノートPC、PowerBook 100では製造を請け負ったりしてきた歴史があり、同社グループはAppleにとって日本における最大のサプライヤーだ。

 SSSも2011年以降、iPhone用のイメージセンサーを製造/供給しており、10年以上に渡って、両社のエンジニアが密に連携し、iPhone搭載カメラの技術発展に貢献できるイメージセンサーによる新たなテクノロジーを追求し、イノベーションを起こしてきた。

 そんな両者の関係を振り返り、ソニーグループ 会長兼社長CEO 吉田憲一郎氏も、クック氏訪問に対してこんな温かいメッセージを寄せている。

 「ソニーは創業以来、クリエイティビティとテクノロジーにより、社会にイノベーションと新しい体験価値を提供してきました。Appleはソニーのイメージセンサー事業にとって、大変重要な顧客であり、同時にイメージセンサーの技術革新を発展させるための重要なパートナーです。今回ソニーの熊本テクノロジーセンターにAppleの ティム・クックCEOとそのメンバーをお迎えし、我々の最先端のイメージセンサーの製造現場を見ていただくとともに、技術開発や活用の方向性について意見交換できたことは大変有意義でした。イメージング&センシング技術は、ソニーグループが『感動』を創り続けるための中核を担う重要な技術であり、 今後もこの進化を追求してまいります」

Apple CEO ティム・クック Tim Cook ソニーセミコンダクタソリューションズ ソニーグループの会長兼社長CEO吉田憲一郎氏(右)らと談笑するクックCEO(中央)
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