新しい「HomePod」は世界で一番使いやすいスマートスピーカー! 従来の評価軸では測れない実力も本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/4 ページ)

» 2023年02月01日 06時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 Appleが2月3日に発売する「HomePods(第2世代)」を一足先に試す機会を得た。数日間ではあるが、自宅のさまざまな環境で使っている。

 発表から少し時間がたったこともあるので、先に結論から言おう。新しいHomePodは世界で一番使いこなしやすいスマートスピーカーである。常識の範囲内で適切な場所に設置すれば、1台でも2台のステレオペアでも、そのサイズや価格に見合う以上の音質を楽しめる。しかも、最適ではないリスニングポジションでも、音楽の雰囲気をおおむね損うこともない。

 どういうことなのか、詳しく解説していこう。

HomePod 筆者の元に届いたHomePod(第2世代)はミッドナイト(ブラック)だった。直販価格は4万4800円(税込み、以下同)である

どこに置いても最適な音質にしてくれる

 新しいHome Podにはさまざまな特徴があるが、最も注目すべきなのはどんな場所に置いても、よほどのことがない限り最適な状態で鳴ってくれることである。

 オーディオに詳しい人なら常識かもしれないが、どんなスピーカーでも設置する場所によって音質は大きく変わる。中でも設置場所の周囲の音響特性は、音質に与える影響が大きい。

 もう少し具体的な例を挙げよう。スピーカーを壁の近くに置くと、壁が音を反射する。もちろん、設置面(床や棚板)も音を反射する。設置場所やボリュームによっては、天井も音を反射する。反射する壁、設置面や天井に使われている素材や厚みも、音に“反映”されるのだ。

 その点、新しいHomePodは反射音を自らのマイクで自動的に解析して、どのような設置環境でも同じように音を再生できるように調整してくれる。Appleによると、1000種類の設置環境を想定し、それぞれで1万曲を使って音質評価を行っているという。1000種類も想定しているとなれば、スピーカースタンドのように「設置面からの反射が全くない環境」はもちろん、TV台やサイドボード、本棚の中といった「音を反射する要素が超近接している環境」もあるだろう。

 この自動調整では、主に聞き手の耳に「直接届く音」と「間接的に届く音」のエンベロープ(音量の差)が最適になるように調整される。新しいHomePodは、基部に指向性(音が聞こえる方向感)のあるツイーター(中/高音域スピーカー)を5つ搭載している。これらのツイーターが複数方向に向けて音を放出し、上部にある4基のマイクが自分で音を拾うことで音量や位相を調整していく。

位相調整 5基のツイーターから出る音を4基のマイクで聞き取ることで、音のエンベロープを調整して「どこでも最適な音」を楽しめるように自動調整してくれる

 また、新しいHomePodでは、再生される音の特徴を認識して「イコライジング(音質補正)」や「ダイナミックレンジ圧縮」を自動的に行う。これは「HomePods mini」にも導入されている技術で、スピーカー自身の再生能力を超えて無理な音を出さないようにするための措置だ。

 もちろん、音質を考えればイコライジングやダイナミックレンジ圧縮は“しない”方が良い。一方で、スピーカーのスペックを超える音を再生すると「音割れ」を始めとする音質劣化が生じる。「音が劣化するくらいなら……」という考え方に基づいた判断なのだろう。

 「低音の量感はどう?」と気になる人もいるかもしれないので触れておこう。新しいHomePodでは、約20mm幅で動く高偏位ウーファーを1基搭載している。このウーファーにはイコライザマイク(イコライジングを行うための専用マイク)が装着されているため、壁の近くに置いた場合(=低音域が強調されやすい環境)でも適切なレベルに自動調整してくれる。

 ツイーターもウーファーも音質を自動を調整してくれるため、基本的にはどこに置いても実力に見合った最適な音が楽しめる。ある意味で、スピーカーの設置において一番手間のかかることを省けることが、新しいHomePodの最大の価値といえるかもしれない。

中身 ウーファーの偏位幅は約20mmもある。かなりパワフルだが、専用のイコライザマイクによってレベルを自動調整してくれるので安心だ

 ただし、音質の自己補正機能があるからといって、最悪の環境に置いても問題ないというわけでなない

 筆者は自宅にリスニングルームを設けている。当たり前かもしれないが、メインスピーカーの上にHomePodsを置くと最も音質が良い。一方で、オーディオボードの前端(スクリーンの左右かつメインスピーカーの斜め後ろ)に置くと、音場がやや乱れる。部屋の角に押し込むように置くと、さらに低域がブーミーになった。要するに、自己補正には限界もあるということである。

 あくまでも「置く場所には比較的寛容である」と理解しておくと良いだろう。

ベストポジション リスニングルームのメインスピーカーの上に2台のHomePodを置く。位相をよく考えた位置ということもあって、ここに置くと「ベストオブベスト」な音質で音楽を楽しめた
スクリーン下 オーディオボードの前端に置くと、音場が少し乱れてしまった
       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月25日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  3. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  4. 「IBMはテクノロジーカンパニーだ」 日本IBMが5つの「価値共創領域」にこだわるワケ (2024年04月23日)
  5. わずか237gとスマホ並みに軽いモバイルディスプレイ! ユニークの10.5型「UQ-PM10FHDNT-GL」を試す (2024年04月25日)
  6. Googleが「Google for Education GIGA スクールパッケージ」を発表 GIGAスクール用Chromebookの「新規採用」と「継続」を両にらみ (2024年04月23日)
  7. バッファロー開発陣に聞く「Wi-Fi 7」にいち早く対応したメリット 決め手は異なる周波数を束ねる「MLO」【前編】 (2024年04月22日)
  8. 「Surface Go」が“タフブック”みたいになる耐衝撃ケース サンワサプライから登場 (2024年04月24日)
  9. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
  10. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー