初代HomePodが登場した時の評価は、それほど高くはなかった。筆者もレビューしたが、率直にいえば特に音質面の評価はあまり良くなかったように思う。しかし、ソフトウェアのアップデートを重ねることで、音質の改善や機能の拡張が図られていった。
新しいHomePodは搭載するプロセッサが一新された。これにより、Appleが「コンピュテーショナルオーディオ」と呼ぶ、プロセッサの演算がもたらすオーディオの体験価値がさらに向上している。その上で、「HomePodsの“使える”場面」に関する悩みを1つ取り除いておこうと思う。
先述の通り、初代HomePodはソフトウェアのアップデートによって機能の拡張が図られていった。そのおかげで、現在は音声を出力できるApple製品となら、全ての製品と組み合わせられるようになっている。この点は、新しいHomePodでも同様だ。
「音声を出力できるApple製品」の1つに、TVへのストリーミングデバイス「Apple TV 4K」がある。実は第2世代以降のApple TV 4KのHDMI出力端子は「ARC(Audio Return Channel)」と「eARC(Enhanced ARC)」に対応している。AV回りに詳しい人ならピンと来たかもしれないが、要するにARC/eARC対応のTVからの音声をApple TV 4Kに“出力”できるのだ。
こう説明しても「それがどうした?」という人もいると思うので、さらに突っ込んでいうとTVの音声を第2世代以降のApple TV 4Kを介してHomePodで再生できるということである。
利用する方法はそれほど難しくない。第2世代以降のApple TV 4KのデフォルトスピーカーをHomePodに変更した上で、オーディオ出力設定の「オーディオリターンチャンネル」を「オン(ARC)」または「オン(eARC)」に切り替えるだけでOKだ。
TV側の設定も必要だが、一度設定してしまえば、TV番組だけでなく映像/音声配信サービスを含むTVに入力される音声を全てHomePodで再生できる。
他のApple製品(Mac/iPhone/iPad)からも、HomePodsは「外部スピーカー」として認識される。ワイヤレス接続ではあるが、映像と音声の同期もバッチリである。Apple製品なら近づけるだけでペアリング(ひも付け)ができる上、第2世代以降のApple TV 4Kを用意すれば、ARC/eARC対応のTVからの音声も出力できる――使い勝手の面ではおおむね問題ないだろう。
これで残されるデバイスが、Windows PCとAndroid端末である。HomePodはBluetooth 5.0による通信に対応しているが、Bluetoothオーディオには対応していない。つまり、Windows PCやAndroid端末にBluetoothスピーカーとして認識させることは不可能だ。
「これらのデバイスでHomePodを使うのは諦めなければならないのか?」と聞かれたら、それは“ノー”である。Windows PCであれば、Apple純正の「iTunesアプリ」を使うことで“公式に”HomePodを利用できる。ただし、iTunesが対応するファイル形式に限られるという点には注意したい。
筆者個人としてはあまりお勧めしないが、AirPlay 2と互換性のあるデータ伝送アプリを使ってHomePodに音声を伝送する方法もある。
HomePodは「空間オーディオ」にも対応している。Apple Musicの空間オーディオで収録された音楽はもちろん、Apple TV 4KやMac、iPhone、iPadで再生しているDolby Atmos規格の空間オーディオデータも扱える。
初代HomePodの発売当初の状況を踏まえて考えると、「ここまで遠くに来たものだ」というレベルで対応する音声ソースは非常に多くなった。とはいえ、最も原始的と思われるアナログ音声の直接入力には対応していないのだが……。
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