本来なら、まず新しいSoCについて解説する所だが、「とにかくパフォーマンスを知りたい!」という人もいると思うので、今回は先にベンチマークテストの結果を紹介しよう。
実際にテストを行ってみると、各種コアの性能強化と基数の増加、さらに最大クロックの上昇分から予想される通りのスコアを記録しており、その値(≒性能)は薄型ノートPCと考えると高めかつ安定している。
まず、3Dグラフィックスのレンダリングを通してCPUコアのパフォーマンスをチェックする「CINEBENCH R23」のマルチコアテストを実施した。スコアは1万4680ポイントで、ノートPC用のCPU(SoC)としてはトップクラスを記録している。
Mac(macOS)版アプリの有無という問題こそあるが、CPUコアのパフォーマンスが重要なアプリを使う場合は良い選択肢となりそうである。
続けて、クロスプラットフォームのベンチマークアプリ「Geekbench 5.4.6」を使ってCPUとベンチマークのパフォーマンスをチェックする。結果は以下の通りだ。
詳しくは後で触れるが、CPUのスコアはApple Siliconを搭載する過去のMacBook Proよりも高い。最大クロックの向上とコア数の増加が奏功しているのだろう。
一方、Metalスコアは、さすがに「M1 Ultraチップ」にはかなわないものの、AMDがMac Pro向けに供給しているワークステーション向けGPU「Radeon Pro W6600X」並みとなっている。GPUの演算パフォーマンスが必要な用途でもバリバリ使えそうである。
GPUの性能をよりしっかりと確かめるために、クロスプラットフォームの3Dグラフィックスベンチマークアプリ「GFXBench 5.0」を使って描画フレーム数の計測を行った。主要なテストの1つ「Aztech Ruins Offscreen」の描画解像度別のフレーム数は以下の通りだ。
描画フレーム数を比べると1世代前のミドルレンジゲーミングGPUと同等のパフォーマンスを発揮できているようだ。ただし、このテストはクロスプラットフォームだが、原則として各プラットフォームでメジャーなAPI(Windowsなら「DirectX 11」、MacやiPhone/iPadなら「Metal」)を使って描画を行うため、APIの実装は考慮されていないので注意したい。
今回のレビュー機は2TBのSSDを搭載している……のだが、読み書きのパフォーマンスは公表されていない。そこで、動画の書き出しシーンを想定したストレージテストアプリ「AJA System Test Lite」を使ってSSDの実力をチェックしてみよう。
設定は「5120×2700ピクセル/RED」「ファイルサイズ64GB」「10bit YUV」として計測した結果、読み出し速度は毎秒5338MB、書き込み速度は毎秒3872MBだった。PCI Express 4.0接続のSSD並みのスピードとなっている。
これだけの速度が出るなら、高解像度動画の書き出しも難なく行えるはずだ。
ノートPCの中には、高負荷な状態が長く続くと、発熱による性能抑制(いわゆる「熱だれ」「サーマルスロットリング」)を起こすものもあるのだが、少なくとも今回のレビュー機ではそのような様子は見受けられない。
高負荷時に「急にファンの回転数が上がる」「触れないほどに熱くなる部位がある」といったこともほとんどなかったので、冷却機構が優秀なのだろう。「GFXbench Metal」において極端な高負荷を掛けるグラフィックステストを実施すると冷却ファンが盛大に動作するのだが、画面表示に同期する描画テストに移行すると速やかに回転数が下がって静かになる。熱設計には余裕を感じさせる。
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