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2023年度の黒字転換に向けて取り組んだこと Dynabook 覚道社長 兼 CEOの悩みと覚悟IT産業のトレンドリーダーに聞く!(Dynabook 後編)(2/2 ページ)

» 2023年03月28日 12時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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上場は延期したがDynabookを通じて見る景色を変えたい

―― ソリューション事業は、どのぐらいの構成比にまで高めたいと考えていますか。

覚道氏 ハードウェア以外のビジネスを、早期に25%ぐらいにまで高めたいと思っています。できれば2024年度までには達成したいですね。ただ、2023年度後半からは、Windows 7のサポート終了時に買い替えとなったPCがリプレース時期に入ってきますし、Windows 10のサポート終了時期も迫ってきます。さらに2024年度以降はGIGAスクール構想によって整備されたPCのリプレースも始まってきます。ハードウェアビジネスが拡大する時期に入る中で、ハードウェア以外のビジネスを拡大するという計画は、自らハードルを高くしているようなものですが(笑)。

 とはいえ、これらのPC需要は一時的なものであり、それに左右されずにハードウェア以外のビジネスを、どう成長させるかが当社の今後の成長に向けて重要な鍵になると思っています。ですから、短期的な比率はあまり意識せずに、ハードウェア以外のビジネスを成長させることに取り組みたいですね。

―― Dynabookは、ハードウェアだけを作るPCメーカーからは脱却できているのでしょうか。

覚道氏 まだ脱却しようとしている段階であり、脱却し始めているとはいい難いですね。数年前からソリューション事業の拡大に取り組んできましたが、まだまだこれからです。ただ、更地という状況ではありません。実は東芝時代、国内法人向け市場ではハードウェア以外の売上高が3割ぐらいありました。こういった実績がありますし、ハードウェア以外を売る部門が独立して、収益が生まれるようになっています。当社が変わりつつあるのは確かです。

―― 2023年度は、どんな点に力を注ぎますか。

覚道氏 当社では「コンピューティングとサービスで世界を変える」を企業ビジョンに掲げており、2023年度もこのビジョンを基に、事業拡大に取り組んでいきます。同様に、新製品のdynabook R9およびR8では、「この1台で景色が変わる」というメッセージを打ち出していますが、この製品に限らず、当社は新たなことに挑戦して、景色を変えていくことに積極的に取り組みたいと思っています。

 2022年度は非常に厳しい1年でしたが、解決に向けた手を打つことができました。再び成長に向けてがんばっていくということを社内に向けて話していますし、お客さまにもDynabookは元気であるということを伝えたいですね。Dynabookが見る景色が変わり、お客さまにとっても、Dynabookを通じて見る景色が変わるといった提案をしていきたいと思っています。

 2023年度後半からは、国内法人向けPC需要が高まると予測しています。既存のお客さまに対しては継続的な提案を行い、ソリューションと連携させることで新たなお客さまへの提案も加速していきたいと考えています。PC関連サービスや、特定用途向けソリューションの拡販にも力を注いでいくことになります。

 その一方で、海外事業は2022年度が非常に厳しい状況でしたが、欧州での組織再編などの取り組みを進めた他、米国においては政府向け案件を始めとして、新たな顧客開拓などを進めています。もう一度、成長に向けた手を打っていきたいと考えています。まずは、海外事業比率を20%にまで高めたいですね。

―― Dynabookスタート時の事業方針説明では、2022年度までに海外事業の売上比率を42%に高めるという目標を掲げていたことに比べると、かなり遅れていますね。

覚道氏 これまでにも、海外事業の成長を目指した取り組みを進めてきましたが、海外事業拡大の動きが遅れている点にはさまざまな要因が影響しています。もともとdynabookブランドは海外では展開していませんでしたから、このブランドを定着させることにも時間がかかっています。

 以前から東芝ブランドのPCを利用していただいているユーザーの間では、dynabookがその流れをくむPCであることは理解されているのですが、訴求方法としてそれを前面に出すことは、サスティナブルなメッセージにはなりません。そのため、できるだけ東芝ブランドには言及せずに、dynabookブランドを打ち出しています。dynabookの認知度を高めるのに時間がかかっている理由もそこにあります。

 コロナ禍においては教育分野における導入が進み、ある程度は認知度が高まりましたが、まだまだこれからです。ただ、若い人たちがdynabookブランドのPCを利用してもらうことで、将来に向けた種まきを進めることができると考えています。

―― Dynabookでは上場計画を打ち出していましたが、これはどうなっていますか。

覚道氏 2022年度中に上場することを目指し、かなり準備を進めてきましたが、業績悪化の影響もあり、上場は見合わせることに決めました。これはやめたということではなく、延期するということです。

 まずは業績の回復に専念し、ハードウェアにソリューションを組み合わせたITエコシステムカンパニーとしての地盤を作ることに力を注ぎます。将来的には、シャープとのコンセンサスを得た上で、上場を目指していくことになります。現時点では、上場時期については明確にはできません。

―― 2022年度からシャープの社長 兼 CEOに就任した呉柏勲(ロバート・ウー)氏は、Dynabookの事業に対して、どんなことを言っていますか。

覚道氏 以前に1度、Dynabookの本社にも来てもらい、いろいろと話をしました。dynabookを始めとするICT事業に対する期待を感じますし、シャープのヘルスケア事業においても当社が貢献できる部分はあると考えています。シャープの製品や技術と、当社が持つウェアラブル機器、ソリューションなどを組み合わせた可能性なども追求していきたいですね。“One SHARP”としての展開も加速させていきたいと思っています。

2023年3月31日まで開催される「dynabook Days 2023 Online」。無料で参加可能だ
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