コロナウイルスの流行から世界情勢の不安定化、製品供給網の寸断や物流費の高騰、そして急速に進む円安と業界を取り巻く環境は刻一刻と変化している。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。各社の責任者に話を聞いた。連載第4回はDynabookだ。
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Dynabookがシャープ傘下で事業をスタートしてから、まもなく5年の節目を迎えようとしている。シャープが、東芝のPC事業を担っていた東芝クライアントソリューションの株式の80.1%を取得したのが2018年10月だ。そして、2019年1月にはDynabookに社名を変更。2023年4月から始まる2023年度は、それから5年目ということになる。
Dynabookはこの5年で何が変わり、何が変わらなかったのか。そして、Dynabookは、これからどこに向かおうとしいるのか。Dynabookの覚道清文(かくどう きよふみ)代表取締役社長 兼 CEOに語ってもらった。
前編となる今回は、Dynabookが持つハードウェアの強みなどについて聞いた。
―― Dynabookが、シャープ傘下でビジネスをスタートしてから5年目の節目を迎えることになります。この間、変わったこと、変わらなかったこととは何ですか。
覚道氏 変化した点としては、何をやるにしても、スピードが速くなった点が挙げられます。アクションを先送りにしない、やることは早くやるといった基本動作が備わってきました。また、「One SHARP」という方針のもと、シャープと連携しながら、すぐに動き、さまざまなことに挑戦できるというメリットも生まれています。
一方で、変わらない点では今でも国内の主要ユーザーと強固な関係を維持しつづけていることが挙げられます。例えば、東芝時代から東芝ブランドのPCを指名買いしていただいた大手法人ユーザーが、シャープ傘下になっても、あるいは社名がDynabookになっても、DynabookブランドのPCを使い続けていただいている点は、私たちにとっても心強いことだといえます。長年の信頼関係が今でも続いていることは、変わらなかったものの1つだといえます。
―― 東芝時代の後半には、業績悪化の影響もあり、開発投資も絞り込まれ、とがったPCが生まれにくくなってきたという印象があります。この5年間で、改めてとがったPCが生まれるようになってきたことを感じます。
覚道氏 常に、いいものは出し続けてきたという自負はあるのですが(笑)、Dynabookになってからは、2019年1月に発売した「dynabook G」シリーズが、今でも法人ユーザーから高い評価を受けていますし、2022年3月に発売した「dynabook RJ74」も、需要に勢いがついてきました。発売当初はとがった製品として評価され、それが長年に渡って愛される製品になっていることは、とてもうれしく思っています。
そして、2023年3月に発売した14型プレミアムモバイルPCの「dyanbook R9」は、今のニーズに合致した、DynabookらしいノートPCが投入できたと思っています。2023年度には、さらにとがった新製品を投入していくことも検討していますので、楽しみにしていてください。
―― かつての東芝時代に比べると、PCの出荷台数規模は10分の1程度にまで縮小しています。しかし、インテルや日本マイクロソフトとは、引き続き強固な関係性を維持していますね。
覚道氏 例えば、インテルとは現在でも相互に技術連携したり、情報を共有したり、直接取引を行うダイレクトアカウントのポジションにあります。日本市場におけるプレゼンスを評価してもらっているとともに、Dynabookが長年培ってきた技術力にも期待してもらっていることの証だと思っています。
―― 現在、Dynabookの開発体制はどうなっていますか。
覚道氏 ノートPCの開発は、中国(杭州)の拠点に任せることができるようになっています。RJ74やR9も杭州で開発したものです。その一方で、国内でハードウェア開発を担当する部門には、PC以外のプラットフォームの事業化に時間を使ってもらうようにしています。
東京都江東区豊洲のDynabook本社にあるソフトウェア開発部門、営業部門とともに、お客さまのところに出向き、要望を聞き、それを製品化に反映してもらえるようにしました。現場からは、商談の風景が変わったという声が挙がり、これまでにはない新たな案件での受注が成果として上がっています。
既に、dynaEdgeとウェアラブルデバイスを組み合わせた現場支援ソリューションの事例が生まれていますが、開発者がお客さまのもとに出向くことで、ソリューションをきっかけにした新たなビジネスが、これからも多く生まれることを期待しています。
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