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第13世代Core/Intel Arc/大規模投資でリーダーシップへの復権を目指すインテルの取り組みを鈴木国正社長に聞くIT産業のトレンドリーダーに聞く!(インテル 前編)(1/2 ページ)

» 2023年01月10日 11時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

 コロナウイルスの流行から世界情勢の不安定化、製品供給網の寸断や物流費の高騰、そして急速に進む円安と業界を取り巻く環境は刻一刻と変化している。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。各社の責任者に話を聞いた。連載第3回はインテルだ。

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 インテルの動きが、IT産業内外から注目を集めている。2022年9月に発表した第13世代Coreプロセッサは、世界最高峰のゲーミング体験とクリエイティブ性能の飛躍的進歩を実現するCPUとして、多くのPCユーザーから関心を集めた他、ディスクリートGPUの第1弾となるIntel Arcシリーズを投入するなど、ゲーミングPC分野での存在感を一気に高めた。

 その一方で、米オハイオの新工場に200億ドル(約2兆8000億円)の投資を発表するなど、将来に渡る安定した供給体制の確立と、地政学リスクへの対応を図ることを明らかにした。

 インテルの鈴木国正社長へのインタビューの前編は、2022年の同社の新製品や投資戦略、Superpowersを通じた同社の進化などについて聞いた。

インテル 代表取締役社長 鈴木国正氏にお話を伺った インテルが居を構える東京都千代田区の国際ビルヂングで、鈴木国正 代表取締役社長にお話を伺った

ゲルシンガーCEOのメッセージが一層クリアになった2022年

―― 2022年は、インテルにとってどんな1年でしたか。

鈴木氏 2021年2月に、パット(パット・ゲルシンガー氏)が、CEO(最高経営責任者)としてIntelに復帰してから、まもなく2年が経過します。テクノロジーを語り、経営戦略を描き、それを実行するエネルギーを持った経営者であり、この2年間で、Intelからのメッセージがクリアになったことは、多くの人が感じているのではないでしょうか。

12年ぶりに古巣のIntelに戻ってきたパット・ゲルシンガーCEO

 2022年は、そうした姿勢がより明確になった1年だったといえます。その1つが、パットがCEOに就任してから打ち出しているSuperpowersです。これは、世界の仕組みを大きく変えていく基盤技術と位置づけているもので、2022年はこれまでの「コンピューティング」「常時接続できるコネクティビティ」「クラウドからエッジまでつなぐインフラストラクチャー」「人工知能(AI)」に、新たに「センシング」を追加し5つの項目としました。

 これまでの4つのSuperpowersでは、データの増加やデータをどう処理するかといったことにフォーカスが当たっていましたが、ここにセンシングが加わったことで、データを生成する部分にもフォーカスする姿勢を明確にしました。世界中のデータ量は爆発的に増大し、データが飛び交う世界が訪れています。そして、この世界はWeb3.0につながり、ますます進展して1兆ドルの市場機会を創出することになります。

Intelが掲げる5つのSuperpowers

 Intelはその世界に対して、5つのSuperpowersによって貢献していくことを示しました。フォーカス領域の1つである「自動運転&モビリティ」では、センシングが重要な役割を果たすことになります。そして、自動車産業は日本においても重要な産業であり、そこにIntelが貢献していくことを明確にしたともいえます。

 また、Intelの日本法人では、DcX(データ・セントリック・トランスフォーメーション)を打ち出し、データを中心とした事業の刷新や、企業のビジネス成長を推進および支援する活動を行ってきました。そしてSuperpowersにセンシングが加わったことで、DcXのメッセージがより伝えやすくなったともいえます。

―― Intelによる大規模投資も注目を集めています。

鈴木氏 Intelでは、2022年1月に米オハイオの新工場に200億ドルを投資することを発表し、さらに、3月にはドイツの新工場やEUにおける研究開発拠点の設置に365億ドルの巨額の投資を行うことを発表しました。それに加えて、以前から発表している既存工場の拡張も進めているところです。市場の要求に対して、しっかりと応えることができるキャパシティーを持つことが重要であり、そこに投資をしていきます。半導体の製造能力を一気に高め、将来に渡って、市場に対する安定した供給体制を実現する計画です。

―― 最先端プロセス技術を活用したCPUの新たなロードマップが、最初の一歩を具現化した1年でもありました。

鈴木氏 Intelは、4年間で5つのプロセスノードを実現するロードマップを示していますが、最初の一歩であるIntel 7による新たなプロセスノードは、Alder Lake(開発コード名)によって、2022年に計画通りに実現しました。次のIntel 4についても、Meteor Lake(開発コード名)へのタイル製造プロセスが最終設計段階に入り、今後、製品化に向けた動きが加速することになりますし、2023年後半にはIntel 3の製造を開始し、FinFET世代の集大成として市場投入を図ることになります。

 実は、Intel 4とIntel 3は、別々のチームが同時に開発しており、これが短期間での進化を実現することになります。このように並行した開発を、プロセスにおけるTick Tockモデルと呼んでいます。

次世代プロセッサのMetor Lake(開発コード名)で導入され、Intelとして初めての7nmプロセスパッケージとなる「Intel 4」 次世代プロセッサのMetor Lake(開発コード名)で導入され、Intelとして初めての7nmプロセスパッケージとなる「Intel 4」。製造過程でEUVリソグラフィー用いることで、半導体の集積度を高めている

 さらに、Intel 3の先からはオングストローム世代に入ります。2024年前半にはIntel 20Aの製造を開始し、2024年後半にはIntel 18Aの製造を開始。全周ゲート型となることで、それまでとは全く違う性能を発揮することになります。このIntel 20AとIntel 18Aも、別々の開発チームが同時に取り組んでおり、Tick Tockモデルを展開しています。ロードマップによるイノベーションによって、Intelは最先端プロセス技術のリーダーシップへの復権を目指しています。

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