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Armベースの「Windows 開発キット 2023」で改めて“ネイティブ対応”の重要さを実感する(1/2 ページ)

» 2023年04月04日 12時00分 公開
[Yukito KATOITmedia]
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 ArmアーキテクチャのSoC(CPU)に対応するWindowsアプリの開発を進めるべく、Microsoftがリリースした「Windows 開発キット 2023」。税込み9万9980円と比較的手頃な価格でArmアーキテクチャベースのWindows 11(以下「Arm版Windows 11」)を試せることも魅力である。

 先日、この開発キットを利用してWeb会議アプリ「Zoom」の動作検証を行ったが、Arm CPUの64bit命令(Arm64)に最適化されていることもあって、とても快適であった。

 今回は、Adobe(アドビ)の写真管理/現像アプリ「Adobe Lightroom」を快適に使えるのか検証していく。

Windows 開発キット 2023 Windows 開発キット 2023でAdobe Lightroomを快適に使えるのか……?

Lightroomをインストールする際にちょっとしたトラブル

 Lightroomは、アドビの有料サブスクリプションサービス「Adobe Creative Cloud(Adobe CC)」を構成するアプリの1つである。しかも、Arm64でネイティブ動作する。理屈の上では、Intel CPU(x86/x64)のエミュレーションを挟まない分、パフォーマンスは良好なはずである。

サポート Adobe CCを構成するアプリのうち、Lightroomと「Adobe Photoshop」はArm版Windows 10/11に最適化されている

 Adobe CCを構成するアプリは、原則としてポータルアプリ「Adobe Creative Cloud」を介してインストールすることになる。Lightroomを含むAdobe CCを構成するアプリを導入するには、先にこのアプリをインストールしなければならない……のだが、ここでちょっとしたトラブルが発生する可能性がある。

 筆者の環境では、なぜかポータルアプリのインストール中に何度かエラーが発生した。エラーを無視すると、一応インストールは完了できるのだが、その後ポータルアプリを起動しようとすると「0xc000007b」というエラーが発生して正常に起動できなくなるのだ。

 これは困った……と思って、サポートコミュニティーを探してみると、Armベースの「Surface Pro X」で同じ事象が発生したという投稿を見つけた。

 この記事の投稿者は、Arm版Windows 10をArm版Windows 11(プレビュー版)にバージョンアップした所、Adobe CCアプリはもちろん、LightroomやPhotoshopも起動しなくなってしまったという。筆者の環境とは異なるが、Arm版Windows 11でアプリが起動しないという事実は共通している。

サポートコミュニティー サポートコミュニティーを検索した所、同じことで悩んでいる人がいた

 この投稿に対して、Adobeの「中の人」は以下の手順を試すように返信していた。

  1. 「Microsoft Visual C++ 2012〜2019」のランタイムを“全て”削除
  2. Windowsを再起動
  3. Microsoftのラーニングサイトにある「Microsoft Visual C++ 2015〜2022」のArm64版(※1)とx86版の再頒布可能パッケージをダウンロードし、インストール
  4. Windowsを再起動
  5. アプリが正常に起動できるか確認

(※1)Arm64版の代わりにx64版をダウンロード/インストールしても構わない(現行のx64版パッケージにはArm64版も含まれるため)

 筆者のWindows 開発キット 2023にも、Visual C++のランタイムがインストールされていた。そのため、「中の人」の指示に従っていったん全て削除し、再インストールした所、ポータルアプリはもちろん、Lightroomアプリも正常に起動するようになった

アンインストール 筆者のWindows 開発キット 2023にも、Visual C++のランタイムがインストールされていた

 なお、Lightroomアプリが起動しなくなるトラブルは、Arm版に限らずWindows 10/11において発生することがあるようで、サポートサイトでも独立したトピックとして紹介されている。

タスクマネージャー 正常に動作するようになった後、Windows 11の「タスクマネージャー」でプロセスの様子を見てみた。Lightroomだけでなく、ポータルアプリやヘルパーアプリもArm64ネイティブ動作するようである

動作は快適 ただしCPUやメモリの使用率は高め

 さて、Arm64でネイティブ動作するLightroomだが、タスクマネージャーをよく見てみるとメモリの容量をとてもよく消費する一方で、アイドル時のCPUへの負荷は0〜8%程度とあまり高くないことが分かる。

 「よし、RAWデータを現像してみよう!」ということで、RAWデータを1枚1枚現像してみるのだが、メモリの占有容量は増えるものの、CPUへの負荷はそれほど高まらない。

負荷大きくない Lightroomを起動した状態におけるアイドル時のCPU負荷は0〜8%程度である。RAWデータを現像する際は、メモリをそれなりに“大食い”する

 ただし、RAWデータを取り込む際はそれなりにCPUへの負荷が高まる。今回は筆者手持ちの「Nikon Z 5」で撮影したRAWデータを100枚ほど一気に取り込んでみたが、取り込み中は最大でCPU利用率が最大67%まで高まる……のだが、それでも67%である。処理能力的に余裕がある状況だ。取り込みが終われば、すぐにCPU負荷率は0〜8%に落ち着く。

 「データの取り込みだけでしょ?」と思うかもしれないが、RAWデータは情報量が多いため、単純な取り込みでもCPUへの負荷はそれなりに大きい。それでも、これだけの“余裕”を持てるということは、Arm64ネイティブで動作するということの意味の大きさを物語っているのかもしれない。

一気に読み込み Nikon Z 5で撮影したRAWデータを一気に取り込んでみた所、ピーク時のCPU負荷は67%となった。思ったよりも余裕をもって処理できている
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