そのような中で今回、新聞で報じられた「年内にも最終報告書」という案は、非公式な情報ながらもハッとさせられた。
前回の記事で筆者は、
の3つの提案をしていた。だが、報じられた内容が真実なら政府は「もう少し様子を見る」という筆者が指摘を忘れていた第4の案を示してくれたことになる。なるほど、確かにそれも重要な選択肢だ。
ただし、「2023年内」という時期設定は間違っていると思う。より理想的なのは2024年の秋だ。あるいはせめて夏頃までは延期してほしい。
理由は明快で、先に触れたヨーロッパでのEDUの適用が2024年3月に始まるからだ。少なくとも夏まで様子を見れば、サイドローディングでどんな問題が起きるのか?(あるいは起きないのか?)、果たしてそこまでの需要があるものなのかも含めて明快な結果が得られる。他国の状況をみて、他国よりも優れたサイバー立法を行って、後に後続する国に模範を示すこともできるかもしれない。
サイドローディングが大きなビジネスチャンスと考えている人たちがいるなら、こうした遅れは不利だと思うかもしれないが、国はそういった一部の企業の利益よりも国民の安全性をまず優先すべきだ。
今回の新聞報道で、性急な決断の線が消えたようなので一応の安心はしたが、現段階ではまだ新聞の憶測記事で非公式情報に過ぎない。政府にはどうか「最終報告策定時期延期」を公式に発表してもらいたい。
一方で、間違ってもやってほしくないのは、春や秋の人事異動に合わせて性急に決断を下すことだ。これはかつて昭和の時代以来、国民に政治不信を広げてきた乱暴な物事の進め方でもある。
日本では度々、こういったことが行われてきた。筆者が2月末にあわてて、前回の記事を執筆した背景には、政府が人事異動に合わせて性急な採決をするのではないかというウワサを耳にしたからだ。
もし、次に大きな人事異動が起きる秋を前の夏頃に最終報告がなされるようなことがあれば、国民はその時期判断を厳しい目で審査しなければならない。政府が国民の安全性よりも、自身の任期などの都合を優先させて議論をおろそかにした可能性がある。
できれば、未来を築く「デジタル化」に関する議論については、こうした日本の古きあしき因習は見たくないものだ。
逆に、役人がしっかりと後継者に引き継ぎ、議論の質を優先させたとしたら、それは役を離れた後でも称賛されるべきである。デジタル市場競争会議が率先して、そういう事例を作っていくことは、政治への信頼回復にもつながるし、評価されるべきことだろう。
筆者の主張をまとめると、秋前に最終報告がまとめられたら、委員会に疑いの目を向け背景を徹底的に追求すべきだ。年末に最終報告がまとめられたら、それは政府が情報収集不足など何らかの理由で事例から学ぶ機会を逃したことであり、かなり残念なことだ。
最終報告がまとめられるのが2024年の秋または夏であれば、政府はある程度、真剣に議論をしたと認めていいだろう。
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