キーボード好きの中でも、自作派を中心とするメカニカルキー愛好家の間で行われているメンテナンスが「ルブ」だ。ルブ(Lube)は潤滑剤もしくは潤滑剤を塗ることを指す言葉で、キーボードの場合はキーキャップやスイッチの取り外し、さらにスイッチを分解した上で1つ1つ、ステム(軸)やステムの接触面などに潤滑剤を塗っていく作業を指す。
キースイッチの摩擦を軽減することで、滑らかなタイプ感、ストローク時のノイズ軽減、タイプ感の均一化、耐久性の向上などを期待できる。先述のように、本製品には出荷時点でルブ済みとなっているが、自分自身でルブを行いたい、という人のためにルブキットが付属している。
ルブの方法については、同社のレクチャー動画に詳細があるが、簡単にいえばスイッチを分解して、接触部分に潤滑剤を塗るという作業になる。
具体的には、まずキーキャッププラーを使ってキーキャップを取り外す。ROG Azothはホットスワップ対応(ただし、取り外し/交換時は電源オフ推奨)なので、そのままスイッチ本体にアクセスできる。
次に、スイッチプラーを使ってスイッチを取り外し、スイッチを分解するスイッチオープナー(ROG NX/Cherry MX対応)を使ってスイッチを上下ハウジングと、ステム(軸)に分解する。分解したハウジングはルブステーションに並べておくと作業効率がよい。
後は、ボトムハウジングとステムに潤滑剤を筆で薄く塗っていくだけだ。ROG Azothには「Krytox GPL-205-GD0」が付属しているが、好みに応じて他の潤滑剤を試してみるとよいだろう。
自作PCと比較して、自作キーボードはハードルが高い。どこから自作するかにもよるが、やる人はPCBの作成からやるし、ハンダごて必須の自作キットも一般的だ。
しかし、キーボード自体の機能はPCの歴史的にも劇的な変換点はなく、機能面や性能面の違いもほとんどない。そのため、人をキーボードの自作に走らせるのは「自分のフィーリングにマッチしたキーボードが欲しい」という理由が大きく、その製品に対する評価も個人個人で全く異なるものになるだろう。
ROG Azothは、そういった自作キーボードの「沼」に片足を突っ込んでしまったキーボードだという印象だ。トライモード対応、100%アンチゴースト&Nキーロールオーバーといったキーボードの本分としての確かさに加え、2型OLEDディスプレイやAura Sync対応RGB LEDなどの派手で目を引く機能――完成品としての至高を極めながらも、ルブキットをセットにして自作キーボードユーザーの世界に一歩足をかけた希有な製品となっているからだ。
同社直販のASUS Storeでの価格は税込み3万4580円と高めだが、妥協のないユーザーに向けた、妥協のない製品というにふさわしい逸品だろう。
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