とはいえ、実際にWindowsで行っている作業がそのまま対話型UIになるかといえば、その限りではない。操作に習熟したユーザーであれば、今まで通りに操作した方が都合がいい場合も多いだろう。
どちらかといえば、ヘルプ機能を向上させることで社内外のコンピュータ操作にまつわるヘルプデスクの代理をさせたり、同様に雇ったスタッフが新しい業務に従事してコンピュータ操作が必要となったりする場合など、Windows Copilotのような仕組みが介在することで、新規スタッフが習熟するまで教育係を張り付けたり、適時人員のヘルプが必要だった場面を代替できたりする点が大きいだろう。
そしてMicrosoftがおそらく大きなポイントとして考えているのが「検索サービスの置き換え」だ。新しいBingが登場して以降、検索エンジンと対話型UIの組み合わせがフィーチャーされることが増えたが、もともと検索エンジンという考え方自体が発展途上のシステムだ。
インターネット草創期はディレクトリ型検索からスタートし、ページに“重み”を付けることで表示優先順位を変更するGoogleの登場ときて、今日の対話型検索へとつながっている。もともとWeb検索という行為自体がテクニックの塊のようなものであり、公式ページのようなものを探すのでなければ、インターネットを横断して広く情報を集めそれを精査するのは個人差が大きかった。
対話型検索では「ページを探す」のではなく、「(LLMに裏打ちされた)検索エンジンが提案してきた情報をユーザーが精査する」という流れに変わっており、検索の過程でWebサービス事業者が介在する余地が少なくなっている。広告誘導もさることながら、検索結果をベースにした自社へのサービス誘導が難しくなる。
そこで「○○情報の検索ならこのサービス」というのを前面に出しつつ、アプリなどに誘導する形でサービスにユーザーを誘導する必要があるわけだが、このヒントとなりそうなのが「プラグイン」の存在だ。
例えばBing Chatでは学習済みデータ以外にも一般的なWebサイト上のサービスの情報を参照し、それを情報ソースとして掲示しており、この検索チャットの流れにサービスを挿入する仕組みが「チャットプラグイン」となる。
Buildでも「Bing Chat Plugin」の現状が報告されており、例えばInstacartやOpenTableの事例が紹介されている。
前者は買い物代行サービス、後者はレストラン検索&予約サービスとなるが、Bingチャットの過程でレシピ検索や商品のオンライン購入が行えたり、あるいはレストランのお勧めを聞いてそのまま予約を開始できたりするなど、検索とサービスが自然な形で結びついている。
「サービスを直に利用すればいいじゃないか」という声もあるかもしれないが、今後PCやモバイル端末でのサービス利用がアプリ中心から、対話型UIを利用するユーザーの比率が増えていくことでシフトが始まり、結果として「プラグイン」のような概念が重要になる可能性があることは認識しておいていいかもしれない。
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