評価機を使って、VAIO F16の“実力”をベンチマークテストを通してチェックしてみよう。特に言及がない限り、VAIOの設定においてCPUとファン動作モードは「パフォーマンス優先」とした上で、Windows 11の電源設定は「最適なパフォーマンス」を選択している。
参考として、2018年に発売された旧世代のビジネスPC(ThinkPad T480s)と、先日レビューした「VAIO Pro BK」のスコアも掲載している。
なお、今回レビューしたVAIO F16と、前回レビューしたVAIO Pro BKは試作機である。量産機とほぼ同じ仕様ではあるものの、量産機と比べた場合にスコアで若干の差が出る可能性があることをご了承いただきたい。
先述の通り、VAIO F16/Pro BMとVAIO F14/Pro BKは基本コンポーネントを共有している。今回レビューしているF16と前回レビューしたPro BKは、ディスプレイ(とボディーサイズ)以外のスペックは“全く”同じなので、理論上はほぼ同じ結果になるはずである。
しかし、各種テストの結果を見ると16型のVAIO F16のスコアは、14型のVAIO Pro BKよりも若干上回っていた。恐らく、大柄な分だけ熱設計に余裕があるのだろう。もちろん、旧世代のPCに対しては、全てのテストで圧倒している。
ビジネスからカジュアルなクリエイティブやゲームまで、日常的なPC操作を快適に行えるパフォーマンスは備えている。
前段のベンチマークテストにおいて、「大柄な分だけ熱設計に余裕があるのだろう」としたが、実際はどうなのか。
サーモカメラを使って確かめてみると、VAIO Pro BKと比べると全体的に高負荷時の温度は低めなようである。
VAIOの設定のCPU/ファンの動作モードは、「パフォーマンス優先」にするとむやみにファンを回す印象がある。これはVAIO Pro BKも同様だが、試作機ゆえかもしれないので、製品版では改善している可能性もある。
「標準」モードにすると、アイドル時は静音で、高負荷時もマイルドな動作音となる。「静かさ優先」であれば、より静音に運用できる。この辺は、一般的なノートPCと変わりない。
総合ベンチマークテスト「PCMark 10」と、ゲームベースの「FINAL FANTASY XIV:暁月のフィナーレベンチマーク(FF14ベンチマーク)」については、動作モード別のスコアも計測した。
結果を見てみれば分かる通り、「静かさ優先」にしてもスコアはあまり落ちていない。それだけ放熱設計に余裕があるのだろう。加えて、CPUがUシリーズでも十分なパフォーマンスを発揮できるという証左でもある。
VAIO F16は、VAIO F14の厚みを保ちつつ、二回り大きくしたようなノートPCである。同じ技術をバックボーンとしており、16型の大画面ながらも不安なく持ち運ぶこともできて、バッテリー駆動時間も実用的なので、電源が確保できない場所でも安心して利用できる。
このように、15型以上(16型)のスタンダードなノートPCを従来のプレミアムモデルと同じ技術と熱量で作るという発想は、従来のVAIOにはなかったものである。
VAIOに限らず、「15型以上は据え置きかつオールインワン」という旧来の常識や先入観は、かなりの濃度で業界内やユーザーの間に根強く残っているように思う。それだけに、このシュッと洗練されたスタイルのVAIO F16は新鮮で魅力的に映る。
新しい定番を目指すに当たり、「ノートPCの“当たり前”」を見直した結果、VAIO F14/16とVAIO Pro BK/BMが生まれた。VAIO F16は、恐らく多くの人にビビッと来るモデルとなっている。「VAIO F14と比べてどちらがいいか?」と聞かれたら、筆者は断然“F16派”である。
それだけに、ディスプレイの品質については惜しいと感じるが、パフォーマンスと機能はもちろん、放熱、動作音なども含めて使い勝手も優れている。この先10〜20年の新しいスタンダードPCのあり方を示す良作だ。
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