「Logi Flow」は対応したマウスで使える機能で、マウスカーソルが画面端に来ると自動的に接続先のPCを切り替えるというもの。Logi Flowに対応したキーボードであればマウスと同時にキーボードも切り替えることができるため、Easy-Switchボタンすら押すことなく、シームレスな操作が可能だ。実際に使ってみると、複数のPCがまるで1台のマルチモニターPCになったかのような印象を受ける。
この機能自体は最近、Microsoftのユーティリティー「PowerToys」に追加された「Mouse Without Borders」とほぼ同様だが、Logi Flowの場合はEasy Switchで接続先を切り替える、というハードウェア的な切り替えだ。しかし、残念ながらLogi FlowもMouse Without Borders同様、同じネットワークに接続されたPC同士でないと切り替えはできない。
最近のテレワーク環境だと隣にあるPCであっても、VPNなどでネットワークが異なることはよくある。せっかくネットワークに依存しないEasy Switchで切り替えるのだから、クリップボードの共有をしない場合は異なるネットワークでも切り替えられるようになればいいのに、と思うのは要求が高すぎるだろうか。
新しく追加された「Smart Actions」は、いわゆるマクロ機能だ。実行する内容をアクションとして順番に登録しておき、トリガーが有効になったときに実行する。トリガーは原稿執筆時点ではマウスのボタンやキーボードのファンクションキーなどが選択できるが、今後アプリケーションやシステムもトリガーとして登録できるようになるようだ。アクションはアプリケーションの起動や操作、キー入力、テキストの入力、アプリケーションの切り替えやボリューム操作などのシステムなどがある。
あらかじめ構成済のアクションもテンプレートという形で提供されている。例えば「朝のセットアップ」ではChrome、Zoom、Excelを立ち上げる。「プロジェクトの変更をプル」では以下のようなアクションが登録されていた(途中の遅延は省略)。
正直、それはそんなにうれしいものだろうか、という気がしなくもない。もっと興味深いものとして「ChatGPTで返信」というものがあるのでこれを見てみよう。
つまり、ChatGPTサイトにアクセスし「Please write a draft reply to the text below. In addition, please create it assuming that you will reply with a chat tool such as Slack. Text below:」というプロンプトとともに選択したテキストをペーストする、という動きのようだ。
ところが、これは当初、筆者の環境ではうまく動かなかった。理由は日本語入力がオンになっていたためだ。工程4の実行時に日本語入力がオフになっていないとEnterキーを押下してもアドレスバーでの入力が完了しない。
日本語入力のオン/オフ状態に関わらず、強制的にオンあるいはオフにする方法がない以上、テキスト入力を伴うアクションは失敗率が高いのではないだろうか。キーボードのマクロ機能としては十分なのかもしれないが、用意されていたテンプレートからつい、RPA的な使い方ができるのではと期待しすぎてしまったのかもしれない。
全体を通したMX ANYWHERE 3S/MX KEYS Sの感想としては、どちらも前モデルのマイナーチェンジかな、といったところだ。特にMX KEYS Sの差異はごくわずかだ。製品そのものと言うよりは、Logi BoltやLogi Options+への対応という、製品以外からの要求に応えたアップデートという感じが強い。
だが、それは裏を返せばもともと前モデルの完成度が高かったということでもある。MX KEYSユーザーがMX KEYS Sに買い換える意味はあまりなさそうだが、静音性や高DPIを求めるMX ANYWHERE 3ユーザー、そしてもちろん、未体験ユーザーにとってはロジクールの最高峰シリーズの最新機種として検討に値する製品だといえるだろう。
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