以上のように、MatterによるHomeアプリへの登録の流れは両製品ともにほぼ共通だ。では最大の違いは何かというと、スマートリモコンに登録された照明やエアコンなど赤外線リモコン対応の家電製品が、AppleのHomeアプリ上で表示されるかどうかだ。
Nature Remo nanoは、最大3台という制約つきながら、スマートリモコンに登録した赤外線リモコン対応家電製品をHomeアプリ上に表示でき、実際に操作も行える。これに対して、SwitchBot ハブ2ではこれらは一切表示されず、それゆえ操作も行えない。
つまり、赤外線リモコン対応家電製品をHomeアプリ上で操作できるのは、この両製品のうちNature Remo nanoだけということになる。SwitchBot ハブ2では、赤外線リモコン対応家電製品はたとえSwitchBotアプリで連携できていたとしても、このHomeアプリ上で操作することはできない。
では、このSwitchBot ハブ2がMatter対応である必要はどこにあるのか。1つは温度と湿度の計測だ。SwitchBot ハブ2には、温度センサーと湿度センサーが搭載されており、これらはAppleのHomeアプリ上できちんと認識される。
これらを使えば、Homeアプリのオートメーション機能を使って、例えば「一定の温度を超えたら音楽もしくは環境音を再生する」などの自動化設定が行える。ただし温度湿度センサーは、そもそもHomePodや「HomePod mini」に内蔵されているので、必要性は全くない。温度湿度センサーのない「Apple TV 4K」を使っている場合のみ、かろうじてメリットがある状態だ。
もう1つは、Matterに対応した同社デバイス、具体的には「SwitchBot カーテン」および「SwitchBot ブラインドポール」、「SwitchBot ロック」がHomeアプリ上で利用できるようになることだ。もっともこれは同じメーカーの製品であり、そもそも所有していなければ意味がない。メリットがないとは言わないが、ハブ2はスマートリモコンであり、汎用(はんよう)デバイスへの対応の方が、優先順位としては上だろう。
こうしたことから、SwitchBot ハブ2は同社のMatter対応デバイスを所有していなければ、現時点では温度計湿度計として使えるにすぎない。同社サイトでは「ハブ2に登録済みのエアコンリモコン」への対応について「開発中」と記載しているが、時期の明言はなく、エアコン以外への言及もないので、複数ジャンルを網羅した赤外線リモコン機能対応は、半年や1年といったスパンでは、対応する可能性は低いだろう。
そうした意味においては、2023年7月時点でMatterの機能をきちんと使えるスマートリモコンは、国内では事実上Nature Remo nanoのみということになる。SwitchBot ハブ2のような付加機能はほぼなくシンプルイズベストの製品だが、赤外線リモコン対応家電をHomeアプリ上で使いたければ、こちら一択となる。
「スマートリモコンが欲しい、できればMatter対応で」と考えている人は、製品ページの「Matter対応」の字面だけを見るのではなく、こうした違いは理解しておく必要はありそうだ。
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