X(Twitter)が広告収益を還元しても「悪質投稿」は増えないと思う理由本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)

» 2023年08月22日 12時00分 公開
[本田雅一ITmedia]
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当のマスク氏も「広告の還元」と言っている

 当のマスク氏、Xの収益化に関しては「広告の還元」と話しており、「広告をコミュニティー全体に分配する」というニュアンスでは発言していない。言い換えれば、(良しあしに関わらず)フォロワー数に代表されるような「人の注目が集まっているか」という指標に対してではなく、「広告価値が生まれた投稿」に対して還元する姿勢を示しているのだ。

 もちろん、還元はアルゴリズムによって行われている。そのため、「偶然の一致」によって想定以上の収益がもたらされている人もいるだろうし、逆に数字上は素晴らしい属性を持つにも関わらず、収益が少ないという人も出てくるだろう。それを解析して「最適化」した投稿をしたとしても、アルゴリズムは常に変化していくものなので、追従し続けることは難しいだろう。

 「Xの収益化施策はX Premium加入者に増やすため」だと指摘する声に対しては、収益化の条件を満たした人には料金を無料にすることで応えている。そもそもX Premiumを収益化の条件に入れているのは、その事実上の前身となる「本人確認済み(認証)マーク」と同様に、ボットなどを用いて自動で稼ぐアカウントが生まれることを防止するためである。

 今後、さらなる調整は続けられると思われるが、Xの収益化プログラムはかなり綿密に計画され、シナリオを描いた上で設計/導入されているように思える。少なくとも、炎上上等で収益化を狙うアカウントは、このプログラムからは排除されるはずだ。

収益化は投稿の健全化につながる?

 もしもX(マスク氏)の“目論見”が意図通りに達成できたならば、Xには有益かつ情報価値の高い投稿が増えるだろう。

 Xをよく見ているユーザーならば、最近のタイムラインにフォロー外のユーザーの投稿が表示されることが増えていることを感じているはずだ。既に興味を失った人やテーマに関する投稿まで、どんどん流れ込んでくるので、筆者個人はこの取り組みが気に入っていない。

 しかし、ユーザーごとの興味を反映し、質の高い投稿を優先して表示させるようにできれば、利用者の満足度は高められるはずだ。もっといえば、従来のX(Twitter)ではありがちな、罵詈雑言の集まる“炎上”を緩和する効果も期待できる。

 ただし、今回の広告収益の共有では「大きな収益を挙げられるかも」という期待は捨てた方がよい。YouTubeなどでは、毎日投稿し続けることでチャンネルのストックが増加し、ストックの増加に伴ってチャンネル登録数と総閲覧数が増加することで、過去のストックが利益を生み出す仕組みを作り上げることができる。

 一方、Xの世界はある意味“刹那的”で、現在を示す「写し鏡」となっている。投稿は「ストック」ではなく「フロー」であり、流れ、消えていくものと考えるべきだろう。

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