コラム
» 2019年11月03日 06時00分 公開

ITはみ出しコラム:TwitterとFacebook、政治的広告の扱いで対立する

Twitterは政治的な広告を世界で全て禁止すると発表しました。一方、Facebookは政治広告の掲載はやめないと表明しています。

[佐藤由紀子,ITmedia]

 米Twitterのジャック・ドーシーCEO(42)が、米Facebookのマーク・ザッカーバーグCEO(35)に絶妙なタイミングでジャブを入れました。

 ザッカーバーグ氏が、業績発表のために用意した原稿で「いろいろ批判はあるけど、これからも政治広告を掲載する」とあらためて語る1時間前に、ドーシー氏がツイートで「Twitterでは政治広告を全て、世界中で掲載しないことにした」と発表したのです(全文の翻訳を最後に掲載しました)。

 その理由を「政治的メッセージをお金を使って表示するのは邪道。実力でフォローしてもらったり、リツイートしてもらったりすることでメッセージを拡散させるべきだ」からとツイートしました。

Mark Elliot Zuckerberg Jack Patrick Dorsey 左が米Facebookのマーク・ザッカーバーグCEO、右が米Twitterのジャック・ドーシーCEO

 しかも、Faceookへの当てつけとして「例えば、『われわれは、誰かがうちのシステムを使って誤解を与える情報を拡散するのを防ぐために懸命に働いている。でも、もし誰かがわれわれにお金を払って政治的なターゲティング広告を人々に見せようとするなら、どんな内容でも見せていい』なんて言うのは信用できないよね」とまでツイートしました。

Tweet ドーシー氏のツイート

 普段からちょっと夢見がちな印象のドーシー氏ですが、この周到なツイートは各方面(トランプ大統領と共和党を除く)から好意的に迎えられました。

 Facebookが政治広告を第三者のファクトチェックなしで掲載することについては、メディアや政治家だけでなく、従業員からも批判されています。

Alexandria Ocasio-Cortez 公聴会でザッカーバーグ氏を詰問するアレクサンドリア・オカシオ・コルテス議員

 それでもザッカーバーグ氏は、「うちの広告の透明性はばっちりだから大丈夫。有権者は、自分で広告について調べ、政治家がうそをついていることも含めて投票の判断の参考にすればいい」と、かつて有権者がどれだけフィルターバブルに影響を受けたかを忘れたようなことを言っています。

 Mozillaによると、大学教授などのグループが調査したところ、Facebookの政治広告はシステムの透明性がまだまだだそうです。仮に透明性が十分だとしても、わざわざ広告の真偽を確認するために調べるような意識の高い有権者は残念ながらマスではないでしょう。

 同じSNSサービスでも、TwitterはFacebookに比べたら小規模です。第3四半期の売上高を見ると、Twitterは8億2370万ドル、Facebookはその22倍以上の176億5200万ドルです。

 とはいえ、小さい割にはTwitterが社会に与える影響はかなりのもの。トランプ大統領のツイートで株価が上下することもあります。そんなTwitterが2020年の米大統領選の前に政治広告を載せないと言うのですから、「Facebookはどうするんだ!」というプレッシャーになります。

 ドーシー氏も、政治広告を禁止するだけで問題が解決するとはもちろん思っていません。どの広告を禁止するかなどの線引きが難しそうです。既に「そんなことより暴言を吐く政治家をなんとかしろよ」という声も聞こえています。

 ただ、SNSでの広告の威力は大きいので、「その危険を回避できるようなレギュレーションがちゃんとできるまでは、立ち止まろうよ」と言っているのです。

 それにしても、これだけのプレッシャーをかわし続けられるザッカーバーグ氏の強さはすごいと思います。Facebookが今後も方針を変えないのかどうか、注目しています。

family 決算発表の翌日、ハロウィーンを楽しむザッカーバーグ氏

(以下、ドーシー氏のツイート全訳)

 Twitter上での政治的な広告をグローバルに禁止することにしました。政治的なメッセージのリーチは、お金で買うものではなく、(実力で)獲得するべきものだと信じています。なぜ全面禁止するか、幾つか理由があります。

 政治的メッセージは、人々がそのメッセージを投稿したアカウントをフォローすることにするか、メッセージをRT(リツイート)しようと決めたときにリーチを獲得します。リーチのためにお金を払えば、こうした意思決定なしに、高度に最適化され、ターゲティングされた政治的メッセージが人々に届いてしまう。私たちはメッセージに対する人々の意思決定はお金によって損なわれてはならないと考えます。

 インターネット広告は、商業広告主にとっては非常に強力で効果的ですが、この力は政治にとっては大きなリスクになります。なぜなら、何百万人もの生活に影響する選挙での投票を左右するために利用される可能性があるからです。

 インターネット広告は、これまでにない課題を提示します。例えば、機械学習によるメッセージの最適化とマイクロターゲティング、誤解を与える情報の野放し、ディープフェイクなどです。こうした問題の規模も速度も洗練度も日々高度になっています。

 こうした問題は、政治広告だけでなく、全てのインターネット上のコミュニケーションに影響するでしょう。お金を使うことで生じる負担や複雑さなしに、根本的な問題にフォーカスするのが最善の方法です。

 例えば、次のような発言は信用できません。「われわれは、人々がうちのシステムを使って誤解を与える情報を拡散するのを防ぐために懸命に働いている。でも、もし誰かがわれわれにお金を払って政治的なターゲティング広告を人々に見せようとするなら、どんな内容でも見せていい」

 私たちは、候補者の広告だけを禁止しようと考えましたが、社会問題広告は禁止を回避する方法になります。かといって、候補者だけが提起したい社会問題広告を出せないのは不公平です。そこで、社会問題広告も禁止することにしました。

 Twitterは、政治的広告エコシステム全体から見れば小さな存在であることは分かっています。この決定は、現職議員に有利だという批判もあるでしょう。でも、政治的広告を使わずに、メッセージを多くの人々に届けた社会的ムーブメントを多数見てきました。この動きは成長すると信じています。

 また、(実現は非常に困難ですが)われわれはもっと将来を考慮した広告規制を必要としています。広告の透明性の要件は向上していますが、まだ十分ではありません。インターネットは全く新しい機能を提供しており、規制当局は平等な競争の場を確保するために将来を見越して検討する必要があります。

 新しいポリシーは11月15日に公開します。ポリシーには(例えば、有権者登録を推進する広告のような)例外を含みます。この変更を現行の広告主に知らせるための猶予期間を設け、新ポリシーは11月22日から実効します。

 最後に、これは表現の自由についてではありません。これは、リーチのためにお金を払うことについてです。政治的なメッセージを届けるためにお金を払うことは、現在の民主主義的なインフラがまだ対応する準備を整えていないような、予期しない結果をもたらします。問題に適切に対処するために、いったん立ち止まって考える価値はあります。

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