これまでPCで「AIを活用する」といえば、高性能なPCか、ネットワーク越しにつながっているクラウド(サーバ)上のAIプログラムを利活用することを一般的には指していた。それに対して、ゲルシンガーCEOは「AI PCなら、ネットワーク接続に頼らず、スタンドアロンなPC環境でもユーザーにAI体験を届けられる」とアピールしている。
そもそも、AI PCで“何が”できるのだろうか……?
そこでゲルシンガー氏は、Rewind.aiが開発したアプリ「Rewind」を紹介した。このアプリは現在、Apple Silicon(M1/M2チップシリーズ)を搭載するMacと、iOS 16以降をインストールしているiPhone向けにリリースされており、Windows版は開発中というステータスだ。
このアプリは、自分が使っているPCの画面表示やWebカメラ(ビデオカメラ)の映像を常時音声付きで記録しており、それをもとに自分が過去にPCで何をしていたのか(PCを使って何を考えていた)のか、自然言語(普通の文章)で質問できる。
例えば、「Zoom」でビデオ会議をしている様子が記録(録画)されていたとすると、「会議が開始された後、10分経過したあたりでA氏はXについてどんな意見を話していたっけ?」と聞くことができるのだ。
映像だけでなく音声も合わせて記録しているため、映像と音声の内容を絡めた質問もできる。例えば「今日の昼食後に会った人は、何て名乗っていたっけ?」とか、「昨日の自分は、夕食の時にどんなことしゃべってたっけ?」なんていう質問も可能というわけだ。
このように、アプリとしてはユーザー自身のパーソナルライフログに対して、ChatGPTで質問できる――そう考えればいい。機能としてはシンプルだし、AIの活用形態も想像しやすいが、これらの処理は全てオンプレミス、つまりNPUを備える自分のノートPC“単体”で行える。非常に衝撃的な光景といえる。
今回のデモでは、オンプレミス処理であることを示すために、ネット接続を“切断”する様子も盛り込まれていた。「単体で使えるんですよ!」とわざわざ強調したのだ。
スタンドアローンで使えるAIは、プライバシーやセキュリティの面からも歓迎すべきものだろう。各ユーザーは、自分の個人的なライフログを、自身のPCの“外”に明け渡す必要がなくなるからだ。
ゲルシンガーCEOは、サーバ/ワークステーション向けCPU「Xeon」のロードマップについても言及した。
まず、Emerald Rapidsという開発コード名で開発された「第5世代Xeonスケーラブルプロセッサ」は、Core Ultraプロセッサと同じ12月14日に正式発表される。既報の通り、第5世代は現行の第4世代(開発コード名:Sapphire Rapids)の改良版という位置付けで、CPUソケットは同じものを利用する。
そして、正式発表前からうわさになっていた、高効率コア(Eコア)のみで構成される「Sierra Forest」(開発コード名)は、最大288コアという構成で2024年内にリリースすると予告された。
ちなみにSierra ForestのEコアは、他のIntel製CPUのEコアと同様にマルチスレッド(ハイパースレッディング)に対応していないので、288コア構成の場合は「288コア288スレッド」のCPUということになる。性能的にはAMDの「EPYC 97X4プロセッサ」(最大128コア256スレッド)との性能勝負に注目が集まる。
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