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全ユーザーにAI PCを届ける――IntelのゲルシンガーCEOの新たな野望 今後10年で15倍に成長する「シリコノミー」とは?Intel Innovation 2023(2/2 ページ)

» 2023年09月26日 16時00分 公開
[西川善司ITmedia]
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自分の「ライフログ」を聞いたら返してくるAI PC

 これまでPCで「AIを活用する」といえば、高性能なPCか、ネットワーク越しにつながっているクラウド(サーバ)上のAIプログラムを利活用することを一般的には指していた。それに対して、ゲルシンガーCEOは「AI PCなら、ネットワーク接続に頼らず、スタンドアロンなPC環境でもユーザーにAI体験を届けられる」とアピールしている。

 そもそも、AI PCで“何が”できるのだろうか……?

 そこでゲルシンガー氏は、Rewind.aiが開発したアプリ「Rewind」を紹介した。このアプリは現在、Apple Silicon(M1/M2チップシリーズ)を搭載するMacと、iOS 16以降をインストールしているiPhone向けにリリースされており、Windows版は開発中というステータスだ。

 このアプリは、自分が使っているPCの画面表示やWebカメラ(ビデオカメラ)の映像を常時音声付きで記録しており、それをもとに自分が過去にPCで何をしていたのか(PCを使って何を考えていた)のか、自然言語(普通の文章)で質問できる

 例えば、「Zoom」でビデオ会議をしている様子が記録(録画)されていたとすると、「会議が開始された後、10分経過したあたりでA氏はXについてどんな意見を話していたっけ?」と聞くことができるのだ。

 映像だけでなく音声も合わせて記録しているため、映像と音声の内容を絡めた質問もできる。例えば「今日の昼食後に会った人は、何て名乗っていたっけ?」とか、「昨日の自分は、夕食の時にどんなことしゃべってたっけ?」なんていう質問も可能というわけだ。

Rewind 基調講演でのRewindのデモンストレーション。これは「Intel Innovation 2023のセッションスケジュールをWebブラウザ(Microsoft Edge)で確認している」というシチュエーションだが、Rewindはこれを記録していて、後からセッションの情報を同アプリに質問すると、場所や概要を教えてくれるようになる

 このように、アプリとしてはユーザー自身のパーソナルライフログに対して、ChatGPTで質問できる――そう考えればいい。機能としてはシンプルだし、AIの活用形態も想像しやすいが、これらの処理は全てオンプレミス、つまりNPUを備える自分のノートPC“単体”で行える。非常に衝撃的な光景といえる。

 今回のデモでは、オンプレミス処理であることを示すために、ネット接続を“切断”する様子も盛り込まれていた。「単体で使えるんですよ!」とわざわざ強調したのだ。

 スタンドアローンで使えるAIは、プライバシーやセキュリティの面からも歓迎すべきものだろう。各ユーザーは、自分の個人的なライフログを、自身のPCの“外”に明け渡す必要がなくなるからだ。

シロカー氏 ゲルシンガーCEOの左に立っているのは、Rewind.aiのダン・シロカー代表。自分のライフログをAIに質問できるようになるというのは、確かにAIの使い道として分かりやすく、かつ誰もが使いたくなるものだと思う

サーバ/ワークステーション向けCPU「Xeon」のロードマップも公開

 ゲルシンガーCEOは、サーバ/ワークステーション向けCPU「Xeon」のロードマップについても言及した。

 まず、Emerald Rapidsという開発コード名で開発された「第5世代Xeonスケーラブルプロセッサ」は、Core Ultraプロセッサと同じ12月14日に正式発表される。既報の通り、第5世代は現行の第4世代(開発コード名:Sapphire Rapids)の改良版という位置付けで、CPUソケットは同じものを利用する。

Xeonプロセッサ 第5世代Xeonスケーラブルプロセッサは、Core Ultraプロセッサと同じ12月14日に正式発表される

 そして、正式発表前からうわさになっていた、高効率コア(Eコア)のみで構成される「Sierra Forest」(開発コード名)は、最大288コアという構成で2024年内にリリースすると予告された。

 ちなみにSierra ForestのEコアは、他のIntel製CPUのEコアと同様にマルチスレッド(ハイパースレッディング)に対応していないので、288コア構成の場合は「288コア288スレッド」のCPUということになる。性能的にはAMDの「EPYC 97X4プロセッサ」(最大128コア256スレッド)との性能勝負に注目が集まる。

288コア 開発コード名「Sierra Forest」は、Xeonシリーズでは初めてEコアを搭載し、かつEコアのみで構成されるCPUとなる。省電力性重視で、最大288コア288スレッド構成となる
ダイ Sierra Forestのパッケージを手にするパット・ゲルシンガーCEO。Sierra ForestのCPUダイは1基当たり最大144コアであり、それを2基連結して288コアのCPUとしてパッケージングされる
ロードマップ 今後のXeonのロードマップ
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