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「100年後の人にあって良かったと思われるもの」を目指して 浮川社長と浮川専務のMetaMoJiが進める現場のDXIT産業のトレンドリーダーに聞く!(2/3 ページ)

» 2023年10月23日 06時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

社名は「ガソリンスタンドに行け」を考えていた?

―― 当時の取材では、一太郎を開発してワープロソフトが普及した結果、日本人が漢字を思い出せなくなり、その責任の一端は自らにあると語っていました。そして、多くの日本人が持つ、漢字が思い出せないという課題を、今度は手書き機能によって、この課題を解決すると言っていたことを思い出します。

浮川専務 開発したのは、手書きでカナや漢字を混ぜて入力し、そこから適切な漢字に変換して、テキスト化する「交ぜ書き変換入力」でした。交ぜ書きという特徴を持つことから、この入力システムには「mazec(マゼック)」という名称をつけました。

 当時、社長が言っていたのは、一太郎の日本語変換システム「ATOK」の名前を汚さないレベルのものを完成させなくてはいけないということでした。ジャストシステムからMetaMoJiに移籍したエンジニアは研究者ばかりで、ATOKの開発者は一人もいませんでした。商品化するというところまでの経験がないエンジニアばかりです。だからこそ、ATOKに負けないものを出していきたいという気持ちが強かったのもしれません。

MetaMoJiが手がける製品群 MetaMoJiが手がける製品群

―― 社名に「MoJi」とありますが、最初は動画アプリの開発から始まり文字は後からついてきたことになりますね。

浮川社長 最初は「ゴーガッサ」という社名にすることを決めていました。「恒河沙」を語源とした社名で、10の52乗という大きな数字を示しています。しかし、米国人から英語の「ガソリンスタンドに行け」という意味に聞こえると言われ、却下されてしまいました。

浮川専務 一方で、MetaMoJiという言葉は、フランス人には響きがいいと言われました。MoJiという名称をつければ、日本の会社であるということが分かりますし、Metaには超えるという意味があります。今は旧Facebookの社名がMetaとなっていますが、14年前は、それほど使われている言葉ではありませんでした。先見の明があったかもしれませんね(笑)

―― MetaMoJiでは、「現場」での利用にこだわった製品開発を進めてきました。この理由は何ですか。

浮川社長 iPadの特徴を最も生かすことができるのが、オフィスではなく「現場」だと感じました。それまでのITツールのほとんどがオフィスワーカーを対象にしたものであり、現場に適したツールは皆無といっていい状態でした。

 オフィスで使うことを前提にしたツールばかりですから、それを現場に持っていくと制限があったり、使いにくくなったりするのは当然です。しかも、現場というのはさまざまで多岐に渡りますから、現場ごとに求めるものが異なります。

 そういった課題を解決できる可能性をiPadに感じたのです。そして、現場での利用をしっかりと支えるソフトウェアを開発し、供給することがMetaMoJiの役割だと考えました。

建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)をけん引する「eYACHO」 建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)をけん引する「eYACHO」

 現場での利用を決定的にしたのが、2015年6月に大林組と共同開発したデジタル野帳「eYACHO」の誕生です。建設現場では、備忘録や測量の記録、打ち合わせのメモなどに利用する野帳(やちょう=レベルブック)があり、現場監督者などが胸ポケットに携行していました。

 この手軽さを維持しながらデジタル化し、管理性や生産性を高めることできるようにしたのがeYACHOです。MetaMoJiは最初の製品として、2011年2月に「7notes」の名称で、iPadで手書き入力を可能にしたアプリを開発しました。これが現在の「MetaMoJi Note」につながっています。

 2014年春のことですが、大林組のある社員が以前からMetaMoJi Noteを個人的に利用していて、建設現場に応用したいので「こんな機能を追加して欲しい」という要望を出してくれたのです。MetaMoJiの本社で、その話を聞き、「それならばすぐにやりましょう」と即断即決し、建設現場向け機能の開発をスタートしました。

浮川専務 実は大林組では、2012年に3500人の技術系社員にiPadを持たせたものの、うまく活用されていないという課題がありました。しかし、このうちの約400人が、MetaMoJi Noteを使用して、業務の生産性を高めることができていたのです。

 ここに建設現場で求められる機能を追加すれば、より生産性が高まることが分かり、話をいただいてから約1年でeYACHOを完成させました。追加した機能の中には、表計算ソフトを一から作るようなものも含まれていましたから、短期間の開発には、かなり苦労しました。

 開発当初は何度も建設現場に通い、どんな機能が求められているのかを把握する作業から開始したのですが、向こうには建設業界特有の言葉があり、こちらにもIT業界専門の用語がありますから、なかなか話が通じない(笑)。出面(でめん/でづら)管理とは何か、何のために行っているのかということも理解できませんでしたが、理解すると「それならば表計算機能があった方がいい」ということが分かります。

 このように言葉と状況を理解し、その課題を解決するための機能を開発するといったことが繰り返されました。エンジニアたちが、真夏の暑い建設現場の中を、ヘルメットをかぶって走り回ったこともありましたよ。

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