HHKB Studioには、大きく分けて5つの特徴があるという。全ては「オールインワンの入力デバイス」たるために欠かせないものだ。
1つ目は、HHKBシリーズの大きな特徴である合理的なキー配列だ。HHKBシリーズのキー配列は、東京大学の和田英一名誉教授が発案した基本コンセプトを継承し続けている。例えばControl(Ctrl)キーは「A」キーの横に、Escape(Esc)キーは「1」キーボードの左に配置するなど、主にプログラマーにとって合理的に使えるように工夫されている。
2つ目は、ポインティングスティックとマウスボタンの搭載だ。ポインティングスティックは、キーボードの「G」「H」「B」キーに挟まれる形で配置されている。マウスボタンは、スペースキーの下に搭載された。これらは本製品最大のアピールポイントでもあり、PFUが「オールインワン」と銘打つ理由でもある。
ポインティングスティックは、いわゆるホームポジションから手を移動させずにマウスカーソルの操作を行える位置にある。マウスの“持ち替え”が不要となるため、よりタイピングに集中しやすくなることがメリットだ。
最近のノートPCで主流のタッチパッドをあえて導入しなかったのは、従来のHHKBシリーズのサイズ感を極力変えたくなかったからだという。カフェなどの狭いテーブルでも快適に操作できることもアピールされている。
特徴の3つ目はジェスチャーパッドだ。HHKB Studioは、前面と左右の合わせて4カ所にジェスチャーパッドを搭載している。
出荷時状態では、ジェスチャーパッドには「上下の矢印キー」「左右の矢印キー」「ウィンドウの切り替え」「スクロール」が割り当てられているが、キーマップ変更ツール(後述)で割り当てる機能を変更可能だ。
4つ目の特徴は、キースイッチとしてリニアタイプ(押下圧45g)の静音メカニカルスイッチを採用していることだ。HHKBシリーズにおいて、メカニカルスイッチが採用されたのは史上初である。笠原氏は「打鍵感をほとんど感じさせないスムーズなタイピングと、静音性の両面を担保した」と、従来モデル(HHKB Professionalシリーズ)と同じ「静電容量無接点方式」のキースイッチを意図的に採用しなかったことを示唆した。
このことについては、X(旧Twitter)上のHHKBファンからも疑問の声が上がっている。「静電容量無接点方式ではないなら買わない」「静電容量無接点方式がよかった」などと嘆く声も見受けられる。笠原氏は、あえてメカニカルスイッチを採用した理由を次のように語った。
従来のHHKBは、「テキストを打つ人」に受け入れられていると自負している。文字入力の手応えを感じられるようなストロークだった。
その一方で、タイピング音で思考が途絶えないようにするには、打鍵感(打ち心地)だけでなく静音性にも優れた方式(キースイッチ)が必要だと考えた。そこで、モダンなキースイッチを新たに開発した。
山口氏も「メカニカルスイッチはクリッキーな感じだが、リニアで滑らかな打ち心地を実現した」とコメントした。
PFUがHHKB StudioとHHKB Professionalシリーズを併売することにしたのは、ユーザーにあらゆる選択肢を提供するための判断でもある。メカニカルキーがなじまないという人は、従来モデルを買えば済む。
HHKB Studioは、キースイッチの「ホットスワップ(活線交換)」にも対応しており、純正キースイッチ(Kalih製)の他、通常プロファイルの「Cherry MX」互換メカニカルスイッチ(3ピン/5ピン)への交換にも対応する。デフォルトのキースイッチが気に入らなければ、キー抜き工具(別売)を使って好きなキースイッチに交換可能だ。
また、キートップの交換にも対応しており、2024年3月をめどにキートップの3Dデータが公開される予定となっている。これにより、3Dプリンタなどを使って、自分好みのキートップを作ることも可能となる。詳細については、別途案内される見込みだ。
5つ目の特徴は、「キーマップ変更ツール」を使ったキーボードのカスタマイズだ。同ツールでは、次のようなことを行える。
他にもWindows向け日本語キーボードの配列に慣れていて、「半角/全角」キーを多用しているようなら、HHKBのEscキーを半角/全角キーに変更したり、スクリーンショットをファンクションキーと数字キーの組み合わせで撮れるようにしたりできるなど、ツールを工夫して使うことで作業効率を向上することも可能だという。
キーマップ変更ツールで構成したプロファイルは、付属するUSB Type-Cケーブルで本体に転送できる。ただし、付属のL字型ケーブルに不具合が見つかったため、代替品としてストレートケーブル(長さ0.9m)を付属するように準備しているという。詳細は「近日中に案内予定」としている。
米国のチームが主導する形で企画/開発された本製品だが、いろいろな機能を盛り込んだため、英語配列モデルで約840g、日本語配列モデルで約830g(共に乾電池は含まず)と、従来モデルよりも“ヘビー級”であることは間違いない。HHKBに“軽さ”を求めていた人は、少し面をくらったものと思われる。
では、HHKB Studioは“誰”のために開発されたのだろうか。
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