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エンスージアスト向けCPU「Ryzen Threadripper 7970X/7980X」を試す 2世代前の製品から乗り換えたくなる性能(3/3 ページ)

» 2024年01月17日 17時30分 公開
[迎悟ITmedia]
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クリエイター向けアプリでの性能は?

 Ryzen Threadripperシリーズは、「ワークステーション」としてクリエイター向けに強力なGPUなどとセットにしたパッケージで販売されることも多い。そのためクリエイター向けアプリでどれだけのパフォーマンスを発揮できるのか気になる人も多いだろう。

 そこで、ここからはクリエイター向けアプリにおけるRyzen Threadripper 7970X/7980Xの性能をチェックしていく。

Blender Benchmark

 まずは3Dレンダリングソフト「Blender」をベースとする「Blender Benchmark」を使用して、CPUによる3Dレンダリングのパフォーマンスをチェックする。

 今回はベンチマークアプリ内に用意された「Monster」「Junkshop」「Classroom」の3つのシナリオにおいて、1分間あたりの生成サンプル(オブジェクト)数を計測している。結果は以下の通りだ。

  • Monster
    • Ryzen Threadripper 7980X:752.996830個
    • Ryzen Threadripper 7970X:449.036956個
    • Ryzen Threadripper 3970X:304.164333個
  • Junkshop
    • Ryzen Threadripper 7980X:524.153825個
    • Ryzen Threadripper 7970X:311.493661個
    • Ryzen Threadripper 3970X:209.314481個
  • Classroom
    • Ryzen Threadripper 7980X:381.218968個
    • Ryzen Threadripper 7970X:231.867831個
    • Ryzen Threadripper 3970X:162.602411個

 基本的に、BlenderのCPUレンダリングはコア(スレッド)がたくさんあるほどに高速になる。上記のテスト結果を見ると、64コア128スレッドを備える7980Xは、32コア64スレッドを備える7970Xに対して約1.5倍高速に動作することが分かる。「コアとスレッドが2倍なら、速度も2倍になるのでは?」と思うかもしれないが、先述の通り最大動作クロックは 7970Xの方が200MHz高いため、ある程度差が縮まったものと思われる。

 一方で、同じ32コア64スレッド同士で比較した場合、7970Xは約1.4〜1.5倍のオブジェクトを生成できている。やはり2世代の進化は大きい。

Blender Blender Benchmarkの結果

UL Procyon

 次に、ULのベンチマークスイート「UL Procyon」を使って写真編集と動画編集の性能を確認しよう。

 Procyonでは、一部のテストで“現実世界”に存在するクリエイティブ系アプリを用いる。写真編集なら「Adobe Photoshop」と「Adobe Lightroom Classic」を、動画編集は「Adobe Premiere Pro」を利用してテストを実施する。そのため、PCMark 10の「Digital Content Creation」テストよりも実際の利用環境に近い状態で性能を確認できる。

 基本的にProcyonの各テストは、バッチで複数の処理を自動進行し、各処理を完了するまでに掛かった時間を「スコア」にして結果を提示する。

 各CPUにおけるスコアは以下の通りだ。

  • 写真編集(Photoshop/Lightroom Classic)
    • Ryzen Threadripper 7980X:8775ポイント
    • Ryzen Threadripper 7970X:8829ポイント
    • Ryzen Threadripper 3970X:5570ポイント
  • 動画編集(Premiere Pro)
    • Ryzen Threadripper 7980X:1万520ポイント
    • Ryzen Threadripper 7970X:1万150ポイント
    • Ryzen Threadripper 3970X:7684ポイント

 2世代前の3970Xと比べると、7970X/7980Xは大きな差が付いている。一方で、同じ世代の7970Xと7980Xはコアとスレッドの数の差の割にスコア差が少ないようにも思える。特に写真編集では、CINEBENCH R23と同様に7970Xの方がスコアが良い。

 この結果を素直に受け止めると「少なくとも写真(静止画)や写真の編集なら、Ryzen Threadripperはオーバースペックなのでは?」と思う人もいるかもしれないが、実はそうではない。

 Windows 10/11には「プロセッサグループ」というOS上の制約があり、1つのプロセス(≒アプリ)から扱える論理CPU(スレッド)数は最大で64となる。そのため、CINEBENCH R23やBlender(Blender Benchmark)のようにプロセッサグループの制約を乗り越える(≒回避する)工夫をしない限り、64スレッドを超えるCPU(今回であれば7980X)のポテンシャルは生かせない。

 視点を変えると、このことは複数のプロセスを並行して処理する場合は、Ryzen Threadripperの多コアを生かしやすいということでもある。例えば「動画のエンコードを進めつつ、サムネイルに使う写真(静止画)の加工を進める」といった“重たい”ながら作業をする際は、メリットが大いに発揮されるだろう。

 もちろん、旧世代のRyzen Threadripperからの性能向上は、7980Xはもちろん7970Xでも大きい。重たい作業をマルチタスクでやる場合は、最新のRyzen Threadripper 7000シリーズに買い換える意味はある。

UL Procyon UL Procyonのスコア
Webサイト AMDが製品情報サイトのトップに掲げている写真こそが、Threadripperの“使いどころ”を如実に表していたのだとベンチマークテストを通して痛感した

着実に進化したThreadripper 「多コア(多スレッド)命」なら買い

 予算的な意味で実際に買えるかどうかは別として、Ryzen Threadripper 7970X/7980Xは価格に見合うだけの性能は確かに備えている

 特にマルチコア(マルチスレッド)性能は、一般的なデスクトップPC向けのCPUとは比べものにならない。また、グラフィックスカードを含むPCI Expressカードを多用する人なら、CPU直結のPCI Express 5.0バスのレーンが豊富なことも魅力だろう。

 最後に余談とはなるが、今回のテスト結果を受けて、Ryzen Threadripper 3970Xを搭載するメインマシンをどうしようか頭を抱えている。新CPUに移行すれば、約1.5〜2倍のパフォーマンス向上を期待できるからだ。

 しかし、Ryzen Threadripper 7000シリーズに乗り換えるとなると、CPUだけでなくマザーボードやメモリも買い直す必要がある。古いパーツを一部流用するにしても、100万円弱の出費は避けられない。だが、筆者は仕事で“多コア”を必要とする場面も多いので、現状ではRyzen Threadripper以外の選択肢は事実上ない。

 どうにかして買い替えたいと思えるほど、Ryzen Threadripper 7000Xシリーズの性能は魅力的だ。たくさんのコア(スレッド)を求めるエンスージアストな皆さんは、ぜひチェックしてみてほしい。

CPUアップ 多コア多スレッドを求めるエンスージアストの皆さんは要チェック!
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