Appleはパススルー映像と実風景の一致に対してこだわっている――そう推察する理由は、Light Sealの選択方法以外にも見受けられる。
Apple Vision Proでは、オプションでZeiss(ツァイス)と共同開発した「ZEISS Optical Inserts(光学インサート)」を一緒に購入できる。これはメガネと併用できないApple Vison Proにおいて、装着中の視力矯正をするためのレンズだ。処方せん不要なメガネを着用している人向けの「Readers」は99ドル(約1万4600円)、処方せんが必要なメガネを着用している人向けの「Prescription」は149ドル(約2万2000円)で追加できる。
購入時のプロセスでは、Optical Insertsの購入が必要かどうかの確認も行われる。ウィザード形式なので、自分に当てはまる条件を選んで行けば、Optical Insertsが必要なのか否か、必要な場合はどのタイプなのか判断してもらえる。
Prescriptionタイプを選択する場合、処方せんに記されている数字を記入すれば、その特性に合ったレンズを買える。遠視/近視/乱視はもちろん、累進度数の入った処方せん(いわゆる境目のない遠近あるいは中近両用)でも問題ない。
ただし、プリズム度数の補正(斜位/斜視の補正や強度の眼精疲労への対策)が行われている処方せんには対応しないので注意しよう。
メガネを着用していないと答えた場合は、コンタクトレンズを装着しているかどうかを尋ねられる。その後、コンタクトレンズがソフトタイプなのかハードタイプなのか、装飾用コンタクトレンズ(いわゆる「カラコン」など)なのかどうかなのかを選んでいくと、Optical Insertsの要否を改めて判断してくれる。
Optical Insertを購入する場合、先に選択したLight Sealのサイズが自動的に変更される。筆者の場合、当初はLight Sealのサイズとして「21W」を指定されたが、Optical Insertsを付属するように選択すると自動的に「33W」へと変更された。レンズが加わることによる視野の変化に対し、現実像との見え方と一致させるため、サイズの最適化を図っているのだと考えられる。
Apple Vision Proでは、装着したOptical Insertの特性に合わせて、表示される画像にも補正が入る。Optical Insertは磁力で本体に取り付けるのだが、取り付ける際にパッケージの二次元コードを読み取ることで補正を入れる仕組みとなっている。特に累進度数の入ったレンズでは、見ている場所によって異なるパワーの補正がかかる。両眼の視差による立体視(3DS)の表現に微調整をかけるようになっているようだ。
なお、「すぐに処方せんを用意できない」「コンタクトレンズを装着して使う前提だった」という理由で後からOptical Insertsを購入することになった場合、それに合わせてLight Sealも買い直す必要があるので注意を要する。単品での購入価格は199ドル(約2万9300円)で、購入時はFace ID対応のiPhoneまたはiPadでの計測が改めて必要となる。
2023年にApple Vision Proを体験した際には、現実の視野とパススルー映像の差異が小さいことに本当に驚かされたが、あの精巧な“デジタルツイン”の感覚は、極めて精密に設計された製品とフィッティングの仕組みがもたらしたものだったのだと、今さらながらに感心している。
その後は、内蔵ストレージの容量の選択や「Apple Care+」の有無を選択すれば、商品をカートに入れることができる。その後の流れは他製品と同じだ(もちろん、受け取りは米国内の住所か、米国にあるApple Storeのみとなる)。
次のページでは、もう少し“深掘り”してApple Vision Proの体験を考察していく。
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